魔法少女と魔道の友と
「ルナちゃん!だいじょうぶぅえぇぇ!」
ロデオマシンもかくやという勢いで暴れるシャドウからわたしは振り下ろされる。
「ぐぇ、いたた……」
「大丈夫ですか?」
「あ!」
目の前にルナちゃんがいる。──その瞬間頭に血が昇った。
「ルナちゃん!」
「は、はい」
肩を強く掴む。
「わたしは怒ってるよ!勝手に1人で戦って!勝手にわたしのこと決めつけて!」
動揺してるルナちゃんを更に捲し立てる。
「確かに隠し事のことは気になってる!調べようともしてた!」
「じゃあ合ってるんじゃ──」
「でも、わたしはそれ以上にルナちゃんと仲良くなりたかっただけなんだから!」
「────」
『ひかり!シャドウがきとるで!』
「!」
唖然とするルナちゃんを小脇に抱え、その場から飛び退く。風を切り裂く様な轟音と共に黒い塊が私達のいた場所を通過した。
『見た目通りあのシャドウは突進するのが得意みたいやな……とんでもない速度と威力や』
「まだ人が話してるっていうのに邪魔しないでほしいな!」
「あの、ひかりさん、降ろしてもらってもいいでしょうか?」
「あ、ごめんね」
ルナちゃんを優しく降ろす。彼女は裾をポンポンとはたきながらこちらをみている。
「ひかりさん」
「はい」
名前を呼ばれて思わず畏まる。明らかに自分勝手な事を言った自覚がある。ルナちゃんは1度深いため息をついた。
「とりあえず、あのシャドウを倒しましょう。──その後で、またしっかり話したいです」
「うん」
「作戦はあります、1度ここから離れたいのでもう1度運んでもらえますか?」
「任せて!」
今度はルナちゃんをお姫様抱っこで抱える。
『向こうの建物はまだ無事や、シャドウを撒くためのルートはこっちで指示するで』
「よろしく、キン」
もう1度迫ってくるシャドウを躱し、わたし達はその場を離れた。
「フゴゴゴ」
魔法少女を見失ったシャドウは追跡を諦め、自身の役割を果たそうとする。
「フゴー!」
轟音と共に狭間の世界の建物を破壊して回るシャドウ。ただ暴れ回っている様に見えるがそれには意味がある。
『ひかり、狭間の世界も傷つけられ続ければいずれ保たなくなる。とくに最近はシャドウが定期的に暴れ回る事で世界の疲弊は高まり続けとる。狭間の世界がダメになれば地球の防衛機構は壊れ、次の標的は』
「現実世界……」
『そういうことや。……嬢ちゃんの方も準備できたみたいやな。ひかり、今回は伶の援護もない。頼むで』
「了解!ただ、1つ言わせてね、キン?」
『?』
「わたしはルナちゃんを信じてる。だからキンも信用してほしいな、ルナちゃんの事」
『……』
返事がないのは分かっていた。
見境ない破壊を繰り返すシャドウの前にわたしは立ち塞がる。
「さあ、かかってこい!」