魔法少女の素顔
狭間の世界、少し開けた道路で戦闘が行われていた。数体の化け物が横なぎに切り払われ同時に霧散する。それを行なったのは騎士の格好をした少女だった。
「今回はちょっとまずいかもしれないわね」
喋りながら更に何体かを切り伏せていく。戦う姿は有利そうだが状況はあまり良くなかった。
「グァウ……」「グガァ」「アゥグゥ」
どこからともなくゾロゾロと化け物達は湧いてきている。
今までと違い、1体1体が弱いものの、とにかく数が多いのだ。
「グルゥ!」
「っ、はっ!」
襲いかかってきた敵をまた倒す。バク転の要領で避けると同時に切りつける。また1体化け物は霧散する。
「減ってる気がしないわ、むしろ増えてないかしら?」
『推測ですが、あの奥に今までで1番強力な気配を感じますわ。おそらくここの雑魚達は分身。本体はあそこにいるのでしょう』
彼女の青い腕時計から声が聞こえる。彼女のパートナーだろう。
「そう、ならさっさと行きましょうか。じゃないと──」
「到着!あ!やっと間に合った!よかったぁ!」
『ワイの誘導が上手いおかげやな』
遠くからひかりが現れた。
『来ましたわね……』
「…………」
騎士の少女は答えなかった。
「ってうわー!かこまれてる!もう既にピンチだよ!そこのあなた!私も手伝うよ!」
駆け寄ろうとすると目の前に1体の化け物が襲いかかってくる。
『怯むなひかり!さっきの武器を使うんや!』
「うん!おりゃあ!」
掛け声と共に化け物にメリケンサックを装備した右手を打ち付ける。
ドゴン。鈍い音が響く。
「グガァっ!」
化け物は盛大に吹き飛ばされ壁に激突。動かなくなった後に消滅した。
「……すごい」
予想以上の威力に本人が1番驚いていた。
『まだ敵はぎょうさんおる!止まってる場合やないで!』
「あ、うん。ってうわ!」
『ひかり!』
ひかりの驚きなど化け物達にとっては気にすることではない。新しい獲物が増えたと判断され複数体が襲いかか──。
「……あれ?」
襲いかかる寸前で化け物は消えた。その場に立っていたのは騎士の少女だ。
「……」
「あっと、その、えーと……ありがとう」
「……」
何も言わずにジッとこちらを見ている。兜の隙間からでも睨んでいるのがわかった。
「……フゥ」
深いため息をつかれた。
「貴女、私を助けようとしてくれたのね?」
「一応、そういうつもりでした……はい」
ひかりは結局助けて貰った気まずさを感じながら返事をしていた。
暫くの沈黙の後。
「……それじゃあお願いするわ。私はこの先にいる親玉らしき奴を倒すから、貴女はここの奴らを倒して私のところに来ない様足止めをしてくれないかしら」
「……!わかったよ!任せて!」
てっきり説教されるかと構えていたひかりは嬉しそうに返事をした。
「すぐ終わらせるわ、それじゃあ」
騎士の少女は一息で見えない所まで飛んでいった。
「かかってこい!私が相手だぞ!」
何体かは少女の方を向いていたがひかりの声に反応してひかりを見る。
『ひかり、無茶はしちゃあかんで』
「大丈夫。さっきの奴くらいなら私でも大丈夫そうだし、いくらでも、どこからでもかかってこい──」
そこで言葉は止まった。化け物達が物陰が現れだした。
「……やっぱり1人づつ順番に正面からこない?」
「「グルァァアァア!」」
「わー!?」
ひかりの初戦闘は始まってしまった。