運動少女と騎馬戦
「いやーしかし騎馬戦があんな事になるとはな」
「あれ、キンも見てたの」
「当然や!ワイはひかりを応援したったんやで!」
『──厳正なビデオ判定の結果、両者同時に帽子を取られているため!引き分けになります!』
その言葉を聞いて2人は互いの帽子を相手に返すと固い握手をした。周囲は歓声に包まれていた。
「まさか引き分けになる事があるなんてねぇ」
「私としては何で騎馬戦にビデオ判定が存在してるのかの方が疑問だったわね……」
「卒業式の思い出とかで流すためとか?」
「確かにそれはありそうね」
「でしょー」
「それにしても、驚いたわ」
「何が?」
「貴女の事よ」
「え?」
何のことだろうか?そう考えていると伶さんは話を続けてくれた。
「最後、両手をはじいた後にあそこまで食らいついてくるとは思わなかったわ」
「えへへ、わたしは諦めが悪いのが特徴なんで!」
少し気恥ずかしいからおどけて言葉を返す。
「その諦めない心が貴女の魔法少女としての適性を表してるのかしら?」
「そんな立派なものじゃないよ?」
そう、そんなものじゃない。この心は、わたしの本心は。いや、そんなこと考えてても仕方ない。
「それじゃあもう1回手合わせを、キン──あれ?」
「コン?」
2人の反応がない。周りを見渡すと、部屋の隅の方で言い合ってる2人がいた。
「せやからガチガチに固めたアホ強チームを倒したんやからそれは実質ワイの勝ちやろ!」
「引き分けは引き分けなんですわ!」
何やら2人で揉めているようだ。よく見るとキンの手には何かの紙が握られている。
「何これ?」
「アッ!」
紙には誓約書と書かれている。その内容は──、
「……ふーん、2人でわたしと伶さんどっちが勝つか賭けしてたんだ」
しまった。そんな顔をするキンとその横でやれやれといった動きをするコン。
「私はやめようって言ったのですけれどキンがどうしてもっていうから仕方なく……」
「コン?数日前から今日のおやつを指定していたのってもしかして……」
しまった。コンもそんな顔になった。
「わたしはキンが応援してくれて嬉しいと思ってたけどなぁ、自分のためだったんだ?」
「ンンッ!」
「楽しそうじゃない、何で私たちにも教えてくれなかったのかしら?」
「ヒィィ」
追い詰められたぬいぐるみ2人。反論がないのを見て伶さんは笑顔でこっちを向いた。
「ひかり、今日の訓練はもうやめてカフェでも行きましょうか?」
「そうだね、たまには息抜きも必要だもんね」
「そんな、ワイらのおやつはどうなるんや!?」
「今日は抜きで」
ご無体な!悲鳴と共にキンとコンはぬいぐるみから腕時計に変わる。
「私達が食べてるのを見てるといいわ」
……口ではそういうけど多分カフェに着いたら2人のおやつも買ってしまうのだろう。わたしは耳打ちする。
「伶さん」
「わかってるわ、まあ少しだけ反省してもらいましょう」
少しいたずらっぽい笑みを浮かべた伶さんはいつもより子供っぽく見えた。
「うん!」
謝罪するキンとコンの声を聞きながらわたし達は部屋を後にするのだった。




