運動少女と騎馬戦
「ようやく諦めたみたいね」
エリア内をグルグルと逃げ続けていたひかり達はとうとう足を止めた。
「覚悟なさい、このまま蹴散らして──」
「アー!確かにこのままではめちゃくちゃカッコ良く帽子をトラレテシマウー!」
「ほんとうだぜー。まったくだぜー」
「?何言ってるの貴方達、そんな事しなくてもさっさと騎馬を崩して──」
「みんなもそう思うよねー?」
「そうですわ!やっちゃってください一条様!」
「我らのハートを奪ったように帽子も奪っていってくださーい!」
「ちょちょいと倒して、私に笑顔を向けてくださいませ!」
「は?笑顔を見せるのはわたしにだけなんですがぁ?」
「お?喧嘩か?」
「やるか?」
「!?」
伶は驚き声の方を見る。
「気付いたな一条さん。大変だなファンが多いと。それじゃあ、帽子を取り合おうか?」
「貴方達、これを狙って……!」
ひかり達が止まった場所、そこは負けた騎馬達の集合場所の前だった。1箇所に集まった生徒達は思い思いに声援を送っている。
「ああ、一条さんは同じ学年からは特に人気がある。学年毎に集まる騎馬戦のシステム上他の応援場所や待機場所よりもファンの密度が多くなるのはここだ。ラグシスに体を当てられたらまともに競うこともできないからな。まずは同じ土俵に立ってもらわないといけなかったんだ」
「──ラグシス?」
「そこは別にいいだろう!?ともかく、これで帽子の取り合いが出来るってものだ」
「私が声援を無視して終わらせるって可能性は?」
「皆の期待を裏切るような人間じゃない」
「…………しょうがないわね」
伶は騎馬の2人に指示を出す。
「申し訳ないけど、最後は帽子を奪う事にするわ。付かず離れずの距離を保って欲しいのだけれど、大丈夫かしら?」
「ウッス」「任せてほしいっス」
「流石ねフミ!それで次の作戦は?」
「いや、無いが?」
「はぁ!?」
「後はひかりに任せるしか無い。私達は騎馬のバランスを崩さない事に専念するのみだ」
「結局最後は根性なのね、パワータイプの頭脳派め」
ため息をつきながらフミとユウは力を込めなおす。
「ひかり!がんばってね!勝ったらたくさん撫でてあげる!」
「うん!わかった!」
ひかりもバランスをとりなおし、伶と対峙する。
(とはいえ、普段の訓練から負け続けてるんだけど、いけるかなわたし?)
対峙はするが、ほのかな不安は残ったままだった。




