魔法少女と秘匿性
「グガガァア!」
本能で感じた危険を振り払うようにシャドウは腕を振るう。
「…………っ!」
ひかりは腕を避け、そのままシャドウの足元を抜け、ユウとフミの前に躍り出る。その動きは先ほどよりも機敏だ。
「2人とも!なるべく下がって!」
「は、はい……!」
2人をなるべく遠くへと離すとひかりは自身の装備を改めて見直す。
(すごい、全部が配分を多めに変えた時と同じ、これが──!)
『──そう、これがリミット2やで!』
「うわあびっくりした!」
いきなり響く声に思わず驚愕する。先ほどまで黙っていたキンだった。
『すまんな、思ったより同期に手こずっとったわ。まずはリミット2到達おめでとうと言いたいんやが……油断はしちゃいかんで、相手はもう準大型と言っても過言やない。しかも混ざり合った体もほぼ順応したようやな。リミ2になったからといって気を抜けばやられる可能性は充分や』
「……了解だよ」
『まあ安心せぇ、ワイの見る限りひかりが負ける要素はほぼない』
シャドウは2足歩行の大きなオオカミ男のような形を作る。先程までよりハッキリとした輪郭はシャドウ2体が完全に合体したことを示しているのだろう。
吠えるシャドウを前にひかりはまた構える。先ほどよりも恐れはない。
『よし、そう言うことでひかり。──ぶちかましたれ!』
「はぁぁぁ!」
「グォァァア!」
シャドウの拳に対し、ひかりもまた正面から拳で迎え撃つ。ドガガガガガ!まるで削岩機が駆動しているかのような轟音が周囲を包む。絡め手の存在しない拳のぶつけ合いだ。
「うおおぉぉお!」
拳同士の大きさには何倍もの差がある。シャドウが振り下ろす拳に迎撃する形でひかりが放つ拳は、その差をものともせず弾き飛ばしている。
いや、むしろ迎撃に回っているのはシャドウの方だ、体格による有利でひかりにギリギリ上回っているに過ぎない状況へと変わっていく。
「グガァ!?」
とうとう有利不利が入れ替わった。シャドウは自身の拳が弾かれた衝撃で体ごと仰向けに倒れる。
『今やひかり!』
「うん!」
倒れたシャドウにひかりは乗る。そして顔面に向かって右拳を振りかざす。
(力を拳に、今度は確実に倒せるように……!)
今までのように力の配分を拳に移すと、
「──っ!?」
ガントレットに力が貯まるのがわかった。が、伶のように大きくなったり、わかりやすい変化がない。不思議に思いながらさらに力を割り振る。
キィン。高い音が鳴ると同時にガントレットの周囲に小さな輪が展開される。
(これは……?)
『よし、いけぇ!』
「っ!おりゃぁぁぁぁぁあ!」
細かな疑問を後回しにしてひかりは思いっきり拳を叩き込んだ。
「これが、リミット2……」
ひかりは塵となり消えるシャドウを見ながら呟いた。
『正しくはリミット2状況下での力の配分による変化やな』
シャドウの顔付近は、まるでそこだけ数メートル上から大きな石が降って来た後のように陥没していた。ひかりの攻撃はそれ程までの破壊力を得ていたのだ。
「これでわたしも怜さんと同じリミットに、もっともっと誰かを守れる……!」
『めでたいことやでひかり!』
「うん!」
喜んでいるのも束の間、ひかりは2人のことを思い出す。
「そうだ!早く2人をここから連れ出さないと」
「ねぇ」
背後から声をかけられる。ひかりが振り返る前に言葉が続けられた。
「その声ってもしかして、ひかり……?」




