魔法少女と固まる決意
「それじゃあこの辺りを頼めるかい?」
「はい!任せてください!」
「ひかり、ほうき忘れてるわよ」
ひかりと伶はある町内の清掃活動に参加していた。ここはゴーレムが住んでいた町内だ。彼の部屋にあったカレンダーにしっかりと町内の清掃への参加予定が書いてあった。
「それにしても、お兄さんが急遽この町を出ることになったからって手伝いに来てくれるなんて優しい子達だねぇ」
「いえ、彼もこれが心残りだったみたいですから」
「ありがたいねぇ。それじゃあお願いね」
「ねぇ、伶さん。わたし、1つ聞きたいことがあるんだ」
「……手を止めずになら聞いてあげるわよ」
「えへへ、ありがと」
箒を掃きながら、少し間を開けて、ひかりは口を開く。
「伶さんはどうして、あんなに迷いなく戦えるの?」
「どうして、というと?」
伶は清掃の手を止める。モジモジと、同じ場所を履きながらひかりは言葉を続ける。
「わたしは怖かったんだ、ゴー君と戦うのが」
まあ、見たら分かったと思うけど。力ない笑みを浮かべる。
「ちょっと前まで一緒に訓練して、一緒におやつ食べて、一緒にお話して……そんな人が急に敵意を向けてきて。わたしはもう怖くてしょうがなくて」
それなのに。ひかりは真っ直ぐ伶をみる。
「どうして、伶さんはあんなすぐ戦えたの?」
彼女だって一緒の時間を過ごしたはずで、それは悪くない時間であったはずだ。だからこそひかりは伶が何故すぐに闘えたのか分からなかった。
「……ひかり、1つ勘違いしているわ。私も怖かったのよ」
「え?」
予想外の返答にひかりから気の抜けた声がでる。
「私も、私なりに彼を信頼していたわ。そんな相手に剣を向けるのは簡単じゃない。でもね──」
伶はひかりを見つめ返す。
「私は魔法少女になる時に誓ったのよ。この街を守るって。だから、怖くても戦えた。それだけよ」
「……そうなんだ、わかった、ありがとう伶さん!」
伶の目線から逃げるようにひかりは掃除を再開した。
「…………やっぱり、伶さんは立派だなぁ。わたしなんかとは大違いだ」
小さな悔しさを胸に感じながら、ひかりは掃除を続けるのだった。
「今日はありがとうねぇ」
「いえ、私達こそ心残りが無くなって気が楽になったので」
「また何かあったら呼んでください!」
その後、2人は無言で掃除を終えた。今日は特に予定もなく、後は帰路に着くだけだった。
「それじゃあ、わたしこっちだから!」
「そうね、また休日明けに会いましょう」
ひかりは手を振り、足早にその場を去ろうとする。
「あ、ひかり。いいかしら」
「え?何?」
「ひかりが私を1人にしないって約束、守ってくれて嬉しかったわ」
「──」
「ひかりだって、しっかりと怖くても立ち向かえていて、あなたも立派だと私は思っているわ」
「伶さん、もしかして、聞こえてたの?」
「?ええ。あの時は上手く言葉が思いつかないから黙ってたけどようやくきちんと整理できたから──」
「伶さんのバカー!」
「ええ!?」
急に怒り出したひかりに伶は動揺した。ひかりは伶の胸をポカポカと叩きながら怒ってみせる。
「そんな風に広い心見せられたら余計わたしが可哀想でしょう!こういう時は黙っておくの!」
「ええ……そうなの?……ごめんなさい?」
「全くもー!恥ずかしいよぉ!」
プンプンと怒っていたひかりだったが、やがて叩いていた手が止まる。
「伶さん、わたし、本当に立派かなぁ?ゴー君も褒めてくれるかなぁ?」
細かい体の震え。それに気づいた伶はひかりを優しく抱き寄せる。
「大丈夫よ。彼だって最後に感謝していたじゃない」
「伶さん、わたしもっと強くなるね。伶さんとゴー君に立派になったって自信を持って言えるようになるくらいに」
「えぇ、期待しているわ。……もちろん彼もね」
ひかりは決意を胸に抱き、伶は決意を確かめる。これから先、何があろうと折れないために、魔法少女達は固く誓うのだった。




