魔法少女と最初の決着
「「はああぁ!」」
(驚いたぜ、こいつら2人だと、格段に強い……!)
ウォルフは嬉しさのあまり戻らない笑みを隠そうともしなかった。
「ひかり!」
「はい!」
伶の掛け声と共にひかりがウォルフの眼前に飛び出す。右手には輝くガントレット。
「うおりゃぁ!」
「ぐっ!」
ウォルフは打ち付けられた拳を両手で受け止める。重たく、鈍い衝撃が体に響く。それを耐え切って反撃に移ろうとすると──。
「伶さん!」
「えぇ!」
すぐさま拳を引きひかりは後ろに下がる。その瞬間今度は伶が躍り出る。
「はぁ!」
「うおぉ!?」
刀身は細く、しかし素早い。息を吐く暇もない連続的な攻撃はウォルフの動きを鈍らせる。
互いに入れ違いで攻撃を仕掛け、休む暇を与えない。
(いける、このまま)
(押し切る!)
明らかに以前より何倍も強くなっている2人は勝利を確信していた。
が、ただやられるだけのウォルフではなかった。
「あまり俺を舐めるなぁ!」
「うわっ!」
「くぅ!」
2人の行動が入れ替わる瞬間。前後に交代するどうしてもできる、しかし1刹那にも満たない小さな隙。しかしそれでもそれは隙だ。ウォルフはそれに気づいていた。2人の腕を掴むと一息で投げ飛ばす。
2人同時の壁への衝突音が響いた。
「ぐうぅ……」
「ひかり……くっ……」
2人は互いに真反対に投げられた。距離を無理矢理開けられ、更に2人の直線上には笑いながらウォルフが立っていた。
「強かった、2人揃われると手がつけられない。俺も他の世界でブイブイ言わせていたつもりだが、正直勝てるか怪しかったぜ?2人揃ってる時はな」
ゆっくりとひかりに歩いていく。
「楽しい時間もこれでおしまいだ、本当ならもっとじっくり戦いたかっ──」
背後からの鋭い気配にウォルフは振り向く。眼前に飛んでくる剣。伶が投げた物だ。ただ、満身創痍の体から投げられた物に力はない。クルクルと情けなく回転するそれを受けるのもバカらしいとばかりに半身ずらして避ける。
「はぁ……はぁ……」
「てめぇ、こんな諦めの悪いような事するとは、よっぽど早死にしてぇよぉだナ゛ァ!?」
ウォルフの背面に鈍い衝撃が広がる。
そこにはウォルフの背中にドロップキックをぶち込む少女がいた。ひかりだ。
「ぐうううう!」
ウォルフは苦しんでいた。衝撃は背中全てに渡っておりその理由もすぐに理解した。ウォルフとひかりの間には、先程避けた剣が挟まれている。剣の腹にまるでスケボーのように足を置いて放たれたドロップキックは結果として剣の腹の面積分の衝撃を余す事なくウォルフに与えていた。
(まさかこの為にあの女あんなヘボい投擲を……!?)
「りゃあああぁ!」
更に魔法少女としての残る力を振り絞って放たれたドロップキックはウォルフにぶつかった程度ではひかりの勢いを殺すまで至らなかった。ひかりはその体勢のまま進み続ける。
「うおおおおお!?」
剣に磔となったウォルフ、ひかりの止まらないドロップキックの行き先はウォルフの視線の先、その直線上には──。
「はぁ……はぁ……!」
立ち上がり、息を整えている伶がいた。
「はぁ……すうううぅ……」
深呼吸と共に伶は右手を掲げる。右手には光が宿る。その代わりと言わんばかりに体の他の部位の装備がなくなっていく。
「うおおおりゃあああ!」
「ぐぅおおおおおお!止まれあああ!」
止まれないウォルフ。右手に豪華な手甲を装着した伶が構えた。
「はあああああぁ!」
背後はひかり、前面からは伶。2人に挟まれたウォルフは──。
ドゴオオオォン!
強大な音とともに吹き飛んだ。




