魔法少女と特訓
元の世界に戻り、2人は付近の小さなアパートの一室に卵を置いた。この部屋は一条の名義で借りている部屋だ。
「で、これは一体何なのかしら?」
「すごい、大きい。何人前かなぁ?」
伶は大きな卵をペシペシと叩く。ひかりに至ってはなぜかよだれを垂らしている始末だ。
「簡単に言えばこれはワイらの世界からの支援物資やな」
「中にはゴーレムが入っていますわ」
キンとコンが説明する。
「ゴーレム?」
「この世界では馴染みがあまりない言葉やね。わかりやすくいえば魔法で動く人形やな。今回は2人の戦闘面での補助をしてくれる予定や」
と、話していると卵が大きく震えた。
「わっ」
「!……」
2人が注目してる中、卵はパキパキとヒビを広げ。
バキン。
殻を突き破り、手のようなものが飛び出してきた。
バキン。
今度は足が。バキン。バキン。バキン。
何度かの殻の破壊の後、ゴーレムは顔を出した。
「え……!」
動揺と声と共に顔を覆ったのはひかり。
「っ!」
驚愕を隠せなかったのは伶。
「……初めまして、僕はゴーレム。今回の任務のために製造されました。どうぞよろしく」
現われたのは礼儀の正しい青年だった。短い茶髪、スラッとした身体。世間一般からみて全員が全員認める顔立ちをしている。
「あわ、あわわ」
言葉が詰まっていたひかりにゴーレムは気づいた。柔らかい笑顔を浮かべ殻から離れひかりに向かう。
「貴女は、ひかりさんですね?これから指導していくのでよろしくお願いします」
「ぴぃ!」
「?」
差し伸べた手から逃げるようにひかりは下がった。ゴーレムは不思議そうに自分の手を見る。問題は別のところにあったがゴーレムは気づかなかった。
「貴方……」
「貴女は伶さんですね?よろしくお願いしぶっ」
言い切る前に伶はゴーレムに何かを投げつけた。それは布だった。正しく言えば服だった。顔を背けながら伶は叫ぶ。
「まずは服をきなさい!」
「……おぉ!これは申し訳ない」
このゴーレム、素っ裸だった。