魔法少女の出会い
夢見町。そこは大都市というには小さく、しかし田舎とまではいかない、発展最中ののどかな街だ。穏やかに流れる時の中に彼女もいた。
「うわぁ!遅刻しちゃう!お母さんなんで起こしてくれなかったの!?」
「私は何度も起こしました」
「そうだな、お父さんも何度も聞いたぞ。ひかりがあと10分、あと10分、って唸っているところをな」
「ううぅぅ!」
情けない声を上げながら制服に着替える。彼女、夢星ひかりは学校に遅刻する寸前だった。
「走ればまだ間に合う!行ってきます!」
「ご飯はー!?」
「いらない!」
バタンと家の扉を閉め学校まで走る。
「あらあら、朝から元気なこと」
「ああ、母さんそっくりだな」
「よーし!ギリギリセーフ!」
ひかりは校門を閉められる前にギリギリ滑り込むことができた。
「おはよ、ひかり。また寝坊するとこだったね」
「おはよう!わたし、体力だけは取り柄だからね!なんとかなったよー」
友人と話しながらいつもの生活が過ぎていく。
しかしそれは今日までだった。彼女の生活はこの日から一変したのだ。
放課後。
「あー今日も疲れたねー」
「ねーほんとにー」
「じゃあまた明日ね」
「うん!バイバーイ!」
今日もまた1日が終わり、帰るひかり。友達と道を分かれ、後は家まで帰るだけ、と。
「あれ?なんか落ちてる」
道の真ん中に何か落ちているのを見つけた。近づいてみるとそれは
「ぬいぐるみだ……」
薄汚れたクマのぬいぐるみだった。
「近所の子の落とし物かな?道の真ん中じゃ車に轢かれちゃうかもだし端に寄せておこうかな」
そしてそのぬいぐるみを持とうとした時。
ガシ!
「ミツケタァ!」
「うわぁぁ!?」
拾おうとした手を逆にぬいぐるみに強く握られてしまった。急にぬいぐるみが動いて叫んだことにより思わず悲鳴を上げる。
「え、うご、動いて。え?」
「フムフム、あー……これは。でもしかしなぁ、見えるし、入れただけでも及第点やなぁ……」
1人でひかりの手を凝視しつつぶつぶつ呟いていたぬいぐるみは、やがて勢いよく顔を上げる。
「ワイの名前はキン!突然で悪いんやけどもひかりにお願いがあるんや!魔法戦士になってこの世界を守ってくれへんか!?」
「……最近のぬいぐるみはすごいなぁ」
「冗談ちゃうでひかり!現に今も脅威はすぐ近くにやな!」
「え?そういえばなんで名前──」
ドゴーン!
話を遮る様に地面が揺れた。
「うわぁ、何!?」
「もう来おったか。ひかり!時間はないで!さっさと変身や!」
「何、変身ってどういうこと?ねぇ、」
「グッウウゥゥァア……」
「え……?」
呻き声の様なものが聞こえ、振り向いたひかりはそのまま絶句していた。
ヌルリ、と、曲がり角から顔を出した。ソレは全身が黒い、人型のナニカだった。