魔法少女と特訓
黄昏時、ひかりと伶は狭間の世界にいた。敵が現れたわけではない。2人はあるものを待っていた。
「ここって何もなければ静かでいいところだよね」
「そうね」
「…………」
「…………」
(は、話が続かないよ……)
待っている間の微妙な雰囲気はひかりにとって耐えがたいものだった。
(キンとコンちゃんは座標の指定?とかで話しかけれないし……)
今回狭間の世界に来たのはキンとコンの要望によるものだった。狭間の世界の所定の場所、つまりはこの場所に立っていて欲しいと頼まれてひかりと伶は横並びにその場に立ち尽くしていた。
「……ひかりさん」
「はっはい!なんでしょうか!」
突然呼ばれてひかりは思わず敬語になってしまう。伶は眉を潜めながらこちらを向く。
「……体はもう大丈夫なの?」
「体、というと──?」
「この前ウォルフとかいう男にやられたじゃない」
「ああ、あの時の怪我はもう治りました!魔法少女になるとしぜんちゆりょく?が上がるらしくて、1番酷かったお腹の痣も、ほら、もう元通りに──」
「いや、お腹を見せなくても別にいいわ」
「あ、ごめんなさい一条さん」
素直に謝って。服をめくろうとした手を下げる。なのに伶はさらに目を潜めていた。
「後、敬語もなくていいわ。それに私のことは名前で呼んでくれて構わないわ。私はあなたのことひかりってよんでいるし、学級も同じなんだし」
急に話を進めてくる伶にひかりは圧倒されながらも返事をした。
「わかりま……わかったよ、一条さん」
「伶」
「う……伶さん」
「うん、よろしい」
伶の顔が少し笑顔になっていたが、ひかりは気づかなかった。
『話してるとこ悪いけど、そろそろ来るで!』
『お2人共、衝撃に備えてくださいませ』
「了解!」「わかったわ」
すると、2人の前に細い赤い光の柱が現れた。
やがて上空に黒い点が見え始める。それは赤い柱を辿るようにこちらに向かっていた。段々とその点は大きくなり、そして。
ドオオオオン!
「くっ」「わっ」
激しい衝撃と共に落ちてきたのは卵のような形をした物だった。ただし大きさは180センチくらいあり、普段見る卵と比べて桁違いに巨大だったが。
『よし2人とも、こいつを掴んでてくれ。これを元の世界に持って帰るで』
「うん」「これでいいかしら?」
2人は左右からしっかりと卵を掴む。
『宜しいですわ。では戻りますよ』
暫くすると2人を中心に普段よりも大きな穴が地面に空き、卵と共にその場から2人は姿を消した。




