魔法少女と強敵
「俺が手塩にかけて育てたシャドウをよくもやってくれたなぁ、お前達よぉ!」
「……シャドウとは、あの化け物達のことかしら?」
「そうよ!このウォルフが大将から貰った大事なお子さん達なんだよぉ!」
「どうやらあいつの名前はウォルフって言うらしいわ。コン、何か知ってる?」
「なっちょっお前!それは誘導尋問ってやつだろ!」
喧しく声を上げるウォルフ。サングラスに黒いスーツを纏ったまるで裏稼業をしてるようにしか見えない姿の男だった。そこだけ見ればただの愉快な男にしか見えなかった。
『ウォルフ……ですわね』
『……あかんで、ひかり、伶。すぐに逃げるで』
「コン?」
「キン?知ってるの?」
ひかりの質問に答える前にウォルフが口を挟んできた。
「安心しろよ犬ころ共。今日は大将から殺すなって言われてんだよ。俺としてはさっさとやればいいと思うが、こんな遊び相手を用意してくれた大将の言うことは裏切れねぇからよぉ?ただ、せっかくあったんだし──」
そこまで言ってウォルフは瞬きの隙を与えることもなく。
「──ちょっと闘ってみようぜ?」
眼前に姿を現した。
「!」
「!はやっ」
「オラァ!」
2人の間に現れると即座に2人を吹き飛ばす。
「くっ!」
「うわぁ!」
即座に体勢を戻したのは伶だ。そのまま突っ込み袈裟斬りに剣を振るう。
「中々いい速度だな、当たったら痛そうだ。──当たったらな?」
「なっ……!きゃっ!」
剣はウォルフによって掴まれていた。しかも指2本でだ。剣を引こうとも押そうともビクともせず、伶は剣ごと投げ捨てられる。
「一条さん!」
「他人の心配してる場合か?」
「っ!はあ!」
ひかりは伶に駆け寄ろうとするがそれよりも速くウォルフはひかりの前に立ち塞がった。
「やっ!はっ!」
殴打、蹴り。ひかりはとにかく攻勢にでる。しかしその尽くは躱され、パシと受け止められる。
「いいねぇ。俺も拳で語り合う方が好きだぜ?まあ嬢ちゃんはちょっと……おぉ?」
「このぉ!」
拳のメリケンサックが変化する。服装は身軽になり、右腕にはガントレットが現れる。
「くらえぇ!」
思いっきり振りかぶり拳を突き出す。ドゴンと大きな音が鳴り──。
「ちょっと驚いたが、あっちの嬢ちゃんより弱いな」
「──え?……カハッ」
渾身の1撃は受け止められていた。呆気にとられている間にガラ空きの腹部に1発入れられる。肺の空気が強制的に吐き出されその場に崩れ落ちる。
「ひかり!」
「……ハッ、ハッァ」
「しっかりして!ひかり!」
伶はうずくまるひかりに走り寄る。
「んー。なんというか、そこまで強くないな?」
ウォルフは興味なさげに欠伸をする。目の前の2人に攻撃することもない。
「お前……!」
伶は怒気を込めてウォルフを睨んだ。とはいえ伶ももう余裕は無かった。先ほどの化け物との連戦なのだ。確実に勝ち目がないことは理解していた。
「おお怖い怖い。アンタの方は結構やばかったからな、そろそろお暇させてもらおうかね」
「ふざけないで!待ちなさい!」
怒鳴る伶を無視し、ウォルフは背を向ける、そして、
「次会う時を楽しみにしてるぜ?」
ウォルフは何処かへ消え去った。
「──うああぁ!」
伶は叫んだ。
残されたのは苦しそうに喘ぐひかりとただやり場のなくなってしまった怒りを抱えた伶だけだった。




