魔法少女の知らない話5
「核の破壊なんて、もう遅いんだよ」
向けられた刃を前にアタイは呟いた。小さな独り言のつもりだったが、
「何を」
生意気にも聞こえていたらしい。しょうがないから答えてやろうかと思った矢先、何処からか轟音が響いた。
「え、何!?」
「これは──」
困惑する声を纏めるかのように巨大な手が2人を捕まえる。
そんな2人を見てアタイもまた困惑していた。
これは自身の作戦に入れた記憶がない。ただ、見覚えのある、この巨大な腕は、
「──MAGE?」
すこしの間を置いて、どこからか声が聞こえる。
『おい!聞こえるか小娘!』
声のする方を見るとそこには小さなボールのようなものが浮いている。
『不意打ちには成功したけど多分そんなには持たないと思うよ』
「教授、ドクターも」
どうやら彼らが助けてくれたらしい。
『聞こえてるな!早くゲートを開け!さっさと逃げるぞ!』
焦っているような声、見なくても慌てているのがわかる。
教授、悪いけどもう。
──あぁまあ、でも折角だから
「ごめんね、教授、ドクター。もう手伝えないや」
ほら、とゲートを開く。手の先にできたゲートは手のひらほどの大きさしか無い。これ以上ゲートは開かなかった。いや、開けなかった。
「もうこれが限界」
少し覗けば、向こう側で2人の顔が見えた。
──折角だから、最後に顔は見ておこうかな。
「作戦は大成功だよ、一条伶のリミットを上げてやった」
「だが貴様が戻ってきてない!」
「元々戻る予定もなかったんだ、アタイ。2人だって薄々気づいてたでしょ」
「それは……!」
「まあ、そう言われるとそうだね」
「MAD様!」
「──でも、戻って来れるならその方がいいと考えていたよ」
「あはは。そう言って貰えると嬉しいよ」
その時、警告音が響いた。
『MAGEのライトアーム、レフトアーム共に圧力に異常有り』
「これは多分夢星ひかりの仕業だね。もう待ちそうにない……!」
珍しく焦りの混じった声をドクターが発した。そろそろお別れの時間だ。後は──。
「ねぇ教授」
「……なんだ」
「これあげる」
小さなゲートだが、コレは通せる。ぽいと投げたソレを見た教授は一瞬目を見開き、そして俯く。
「多分だけど今回のでドクターの研究は大体完了でしょ?だったら教授も終わらせないと。それ、使っていいからね」
「──貴様」
「そんじゃあね!バイバイ!」
MAGEの腕が崩れる音がした。ソレに合わせてゲートを閉じる。
そういえば、お礼は言ってなかったな。そんな事が頭に浮かび、消えた。
ゲートが閉じて暫くした後。Dr.MADは一言つぶやく。
「……マリスの反応が消えたよ。残念だけど」
気を落としたような声、反応が消えた画面を見て残念そうに告げる。
「……そうですか。それでは、私は自分の研究を終わらせてきます」
教授は一言言うと自身の研究室へ戻ろうとする。
「教授、さっきマリスも言っていたけど、僕の方の研究はほぼ終わりだ。後は細かな調整だけ。 元々この共同研究はどちらかが完成したらそこで終了、後は好きにすると言う約束だったが……」
MADは教授の肩に手を置く。
「マリス、あの子の想いを無駄にできない。君の研究が終わるまで僕も付き合おう」
「MAD様……ありがとうございます……!急ぎ作業に入らせてもらいます!」
「うんうん、僕は破損したMAGEの修理でもしておくから存分にやってきなよ」
言い終わるや否や部屋を出ていった教授の背中にヒラヒラと手を振る。
──扉が閉まり、ふと、手が止まる。張り付いたような笑みも。
「予想通りだったけど、やっぱりマリスの損失は痛いかもね」
改めて失われた信号を見て呟く。
「ああでも、素晴らしい成果だったよ。後は、教授の番だね」
そうして別のモニターに目を向ける。
「もうすぐ御披露目できるなぁ。嬉しいよ」
そこに映る魔法少女達を見ながら少し溢れそうになる本心からの笑みを抑えて彼は震えた。




