魔法少女と学園
「見える?キン?あの人が一条さんだよ」
廊下の曲がり角に身を隠し、左腕の時計に話しかける。その姿は中々に不審であった。
『見えてるで。体型、身長共にほぼ一致、ほとんど確定やな。……それにしても』
キンは彼女の周囲を見ている。彼女の周りには人だかりができていた。それは男女を問わず、学年を問わず。彼女の仕草一つで黄色い声が上がる。
『まるで漫画やアニメみたいな人気やなぁ』
「……漫画やアニメみたいな存在のキンがそれいう?」
『……それもそうやな』
ひかりは一条伶について知っている事を話した。
この学園は夢見町のシンボルにもなっている小中高一貫の学園である事。生徒会が存在し小中高の区分けのなかで成績優秀者2人づつが生徒会に選ばれる事。彼女はその生徒会の1人である事。つまりはすごい人気者である事。
『ちなみにひかりはどうなん?』
「私は成績低空飛行中かな」
『なんなんやその例えは』
ひかりが角で話しながらのぞいていると。
「ひゃっ!?」
急にひかりは身を隠した。
『どうしたんやひかり?』
一瞬だが彼女と目があった。気がした。それだけならいいのだが、どうもその時の顔が。
「なんかすごい睨まれた気がするの」
『そうか?ワイにはわからんかったなぁ。とりあえず後はどうやって一条伶と話すタイミングを作るか考えんとな』
「そうだね、行こうか」
ひかりはそそくさとその場を離れていった。
「…………」
「どうかなされましたか?伶さん?」
「いえ、別に何でもないわ。行きましょうか」
彼女は先程までひかりがいた所を幾たびか見ると、人だかりをかき分けながらその場を後にした。