人物紹介(第一章)
とりあえずこれで一章終了です。
♂ ロラン・ヴァレリー・オリオール(十七歳)
主役にして語り部。
オルヴィエール統一王国に五つある公爵家(五公爵家)のひとつ。オリオールの嫡男。
『オリオールの祝福』と呼ばれる水色の髪に菫色の瞳を持った非常な美男子……というか、実はもの凄い女顔の美少年。義妹であるルネ(後述)曰く、「お義兄様が女装したら私など月の前の蛍も同然ですわ」とのこと。
およそ二百五十年ぶりに地上へ顕われた〈神剣〉の使い手であり、すなわち〈神剣の勇者〉でもある。
ちなみに身体能力は素で攻城兵器を抱えて走り回って、並みの鋼の剣でコモン・ドラゴン(知能の低い一般的なドラゴン)程度なら屠る超人的なもの。
〈神剣ベルグランデ〉を用いた場合は洒落抜きで最終兵器と化すため、複数国並びに聖教大神殿の許可がなければ〈神剣〉を使用することができないことになっている。ただしあくまで法的な(また実際的な)拘束力はなく、彼に対して「私利私欲に使わないで欲しい」という願いを託した署名のようなものとなっている。
ちなみに〈勇者〉としての能力は並外れた身体能力、精霊王の祝福によりあらゆる自然環境への対応力と毒物の無効、また直接的な魔術・呪術の遮断(ある程度周囲にも影響を及ぼすため、エドワード第一王子のお守り役として子供の頃から遊び相手となっている)などがある。
♀ ルネ・フランセット・オリオール(十四歳)
ロランの義妹。もともとは一族の末端に近い家の娘であったが、ロラン同様に『オリオールの祝福』を持って生まれた事から、六年前に本家の養女となった。実際のところはロランが〈神剣の勇者〉と判明したことから、その伴侶となって次代の〈神剣の勇者〉の血統を残すべく選ばれた娘である。
ある意味競争馬の繁殖相手のような気の毒な身の上であるが、もともとロランには好意を持っていたこともあり、「どうせ貴族の娘など政略結婚の道具にされるのが常。ですがお義兄ほどの顔よし・身分よし・性格よしの好物件に巡り合える等そうそうないですわ!」と八歳当時から達観をして、さらには『完璧お義兄育成計画』を立てて、自分好みのお義兄にしようと日々努力をしている。見た目に寄らずかなりの策士である。
会話に諺を引用するのが好き。
♀ エレナ・クヮリヤート(十七歳)
オリオール家の陪臣であるクヮリヤート騎士爵家の娘。黒髪黒目。
クヮリヤート騎士爵家は代々オリオール家の〈影〉を勤める家柄であり、統一王国の暗部でも最強最古と呼び名が高い一族である。
クヮリヤート一族はオリオール家の懐刀として絶対の忠誠を誓っており、万が一裏切り者が出た場合、地の果て、地獄の底まで追いかけて粛清することを誓いとしている。
その一族はあらゆる局面に対応できるよう人間の限界、もしくはそれを突破するよう徹底的に鍛えられており、この時代では既に旧時代の遺物に近くなっており、自分たちもそれを自覚している。
〈影〉の行動原理は主人以外に対する徹底的な人間性(情)の排除であり、エレナも基本的にそれに従っているが、主人であるロランに対する恋心を捨てるべきかどうか悩んでいたところ、あっさりロランが受け入れてくれたことから心から彼を慕うようになった。ただ他の感情が壊れているので、行動がちょっと変になってしまうが。
♂ エドワード・ハーヴェイ・クェンティン(王族のため姓は持たないが、もともとの一族の姓は「アルフォード」である)(十八歳)
オルヴィエール統一王国の正嫡にして第一王子。
金髪碧眼、甘いマスクの絵本に出てくる王子様そのもの。
基本的に文武両道に優れて性格も快活と、見ている分にはいいのだが、付き合うと俺様で鬱陶しくて疲れるタイプ。
決断力もあり人を惹きつける魅力もあるのだが、パラメーターが見た目と行動力と魅力だけに全振りされた残念王子。
そのせいか将来を危惧する声もちらほら(特に同じ王族や彼を直接知る有力貴族から)あり、本来であればとっくに王位継承権第一位の王太子となるべきところ、第二位のまま様子見をさせられている(第一位は大叔父に当たるフランシスクス大公)。
♀ アドリエンヌ・セリア・ジェラルディエール(十七歳)
悪役令嬢の汚名を着せられる予定の気の毒な公爵令嬢。
ジェラルディエール公爵家は五公爵家の筆頭であり、その血統は王族と遜色ないため「第二の王家」とも呼ばれている。エドワード王子の婚約者でもある。
長身でスタイルも良く、煌びやかな長い真紅の髪にルビーのような真紅の瞳をした美女。
婚約者であるエドワード王子が阿呆過ぎて気苦労が絶えない苦労人。
性格はさっぱりとした姉御肌だが、エドワード王子に対しては婚約者としてよりも保護者的に、口うるさく接するために毛嫌いされている。
実はロランが初恋の相手であり、そのため必要以上に彼を意識して(本人に自覚はない)きつく当たっているが、彼女が自分の地を出す相手などロラン以外にはいなかったりする。
♀ クリステル・リータ・チェスティ(十七歳)
ヒロイン……というか、エドワード王子以下学園の『イケメン七傑衆』に信奉される実は被害者である男爵令嬢。
月の光のような長い銀髪と赤褐色の瞳。小柄な体躯(子供の頃栄養を十分に摂れなかったせいだが)に妖精のように流麗な姿態(つまるところ胸も尻もない)の美少女。
もともと流れ者だった母にチェスティ男爵が遊びのつもりで手を出して生まれた娘であり、母親はすでに亡くなっている。
本人は王子以下イケメンにチヤホヤされる現状がいたたまれないのだが、誰にも相談もできずに悶々として過ごしている。それとなにやら彼女には秘密があるらしいが……。
♂ ジェレミー・バーナード・ザカライア(十五歳※兄とは二歳二カ月違いのため間もなく十六歳になる)
オルヴィエール統一王国の第二王子。実兄であるエドワードとは対照的に病弱で、内向的な性格である。
灰色の髪と錆色の瞳をした少年。
基本的に王宮の外れに作られた塔に隔離されていてここから外に出ることはない。
兄であるエドワードに偏執的な憎しみをこじらせている。
趣味は魔術と呪術に関すること。
ちなみに初恋の相手は五歳当時(エドワード七歳)、エドワードと王宮の中庭で遊んでいたロラン(どう見ても美少女)であり、その後、五年以上女の子だと疑いもしなかった。
現在、窓を閉め切っているのは、「初恋の相手がどんどんむさ苦しくなっていく姿を見たくない」という個人的なこだわりがあるからだったりする。
♂ ドミニク・エアハルト・イルマシェ(十七歳)
外務大臣であるイルマシェ伯爵家の嫡男で取巻きB。
栗色の髪にやや酷薄そうな目つきをした青年。
♂ フィルマン・グレゴワール・レーネック(十八歳)
軍務長官(国内の治安を司る警察と憲兵みたいな立場の長)の長男(側室の子だが正室は病弱で子供はいない)。
取巻きCで黒髪黒瞳で鍛えられた体躯をした偉丈夫。
王都剣術大会で三位に輝いた剣の名手。
♂ エストル・ルイ・バルバストル(十七歳)
取巻きDである、赤茶けた髪をオールバックにして銀縁の眼鏡を掛けた怜悧な容貌の青年。
統一王国でも屈指の大領主バルバストル侯爵家の長男(嫡男ではない)。
いわゆる典型的な貴族趣味の一族のこれまた典型。
♂ アドルフ・ライナー・カルバンティエ(十八歳)
取巻きE。刈り込まれた灰色の髪をしたカルバンティエ子爵家の嫡男。身長二メトロンを越える巨漢だが、手足が長いのでそれほど愚鈍には見えない。
王都剣術大会で二位という剣の達人。チャンピオンがロランなので、実質彼が一位といえる。
♂ マクシミリアン・フェルミン・シャミナード(十七歳)
取巻きF。やや小柄で俊敏そうな深緑色の髪の少年。
統一王国最大の港湾都市シャンボンの領主であるシャミナード子爵家の嫡孫(祖父に当たる現当主はまだまだ現役のため)。
♀ エディット・ローズモンド・ラスベード(十五歳)
大富豪であるラスベード伯爵家の御令嬢である。
好奇心旺盛で森羅万象、博物学に興味があって将来はその研究をしたいと考えていた。
五ヶ国語を嗜む才媛(話したり読んだりするだけならもっといける)である。
ドミニクの婚約者であり、アドリエンヌやルネのよき友人。
♀ ヤミ・オニャンコポン(十九歳)
第百六十九代魔王にして〈もっとも弱き魔王〉と呼ばれる存在。
ピンク色の髪をして、額に赤真珠のような第六器官(副眼と呼んでいる)があるのが特徴。
隣国の自治領であるドーランス魔王領の支配者。
ドーランス地方はもともと面積は広いが人がすめない過酷な大地であり、百年ほど前に魔族の最後の避難場所としてこの地の自治権を得た。
比較的気候の穏やかな南方に人口が集中しているため、オルヴィエール統一王国とほとんど接する地点に魔族の都(まあ町に毛が生えた程度)がある。
※参考までに、『オニャンコポン』というのは西アフリカ・ガーナのアシャンティ人に伝わる神と同じ名前で、意味は『偉大な者』ということ。変な名前ではない。
第二章第一話は11/15(水)頃に更新予定です。




