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神道捕縄  作者: 猫大好き
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二:学校への到着

 校門から学校内の敷地に入って、右手に行くと体育館と運動場が接してある。二人はそこで別れた。

「じゃーねー」

「おう、また後でな」

 美幸は別れ際に大きな笑顔で振り向きざま手を大きく上げて言うと、そのまま真っ直ぐ運動場横の女子陸上部のある部室棟に向かって軽やかな脚で走り去って行った。榊の所属するバスケットボール部の部室は体育館のすぐ横に接する形である部室棟内にある。


 より遠くにある部室を目指して二人の別れ際にもまだペースを落とさず走り続けていた美幸に合わせたせいだろう。榊のペースダウンは失敗で、部室前の扉に着くまでに急激に走るペースを落としたせいで、心拍と呼吸が乱れて頭と胸のあたりに疼痛を引き起こした。一人なら校門に入る前辺りで速度を落とし始めているところだ。もっとも美幸のあのペースなら、陸上部室に着くあたりでも自分なら同じ心肺機能の乱れを起こすとは思うが、彼女は平気なのだろうか。おそらく走ることを専門とする陸上部と、基礎体力作りにランニングを行うバスケットボール部ではおよそこういったことに関する結果も違ってくるのだろう。美幸にペース配分を乱された形の榊だったが、それでも彼女に会えることは嬉しかった。彼女はいつも明るく、時々、先ほど去り際に見せたような底抜けの笑顔で彼を照らしてくれる。恋愛感情とは違うが、物怖じせず、やや男勝りの彼女とは気兼ねなく話せ、一緒にいて楽しく、時に愛おしくもなるような貴重な女友達だ。


 榊は部室の扉前に足を止め、胸に片手をついてふぅふぅ数度深く呼吸をすると、脈拍と呼吸がだいぶ落ち着いてきた。胸と頭にくる疼痛がほとんど消え去ると、まだ少し呼吸のたびに持ちあがる肩の動きと、首周りのやや高くなったままの熱を持ったまま、部室の扉を開けた。


 部室を開けると、ふわっと向かいから涼しい風が、部室内にこもった澱んだ埃っぽい空気を途中で拾って榊に吹き付けてきた。扉の向かいの窓が広く開け放されている。男子運動部の部室らしく、ごちゃごちゃと様々なトレーニング器具の他、雑誌や漫画やダンベルなどが雑然と散らかされており、あるものは直接その上に、あるものは散らかった合間に垣間見える床の上にいくつかのスポーツバッグが置かれている。特に色あせて表面が擦り切れているのは先輩たちのものだろう。多くはチャックが開け放されたまま、上に今榊も来ている紺の学校指定のジャージが折り畳まれることもなく投げ散らかされている。


 榊は少し覚悟していた部室内の汗と埃から来るむっとした空気を受けずに済んだことに安心して、空いた場所にスポーツバッグを投げ出すと上下のジャージを脱ぎ始めた。脱ぎ捨てると、下に現れたのは半袖に短パンツのバスケットボールウェア。一気にさらけ出された腕と足の素肌に、窓から入り込んでくる早朝の冷たい風が当たり、走り続けて火照った体に心地よい。しかし全身に汗をかいており、このままだと汗冷えしてしまう。彼はバッグから厚手の白いスポーツタオルを取り出すと、まず顔を拭い、首周り、次いで、腕や脚など満遍なく拭いて、スポーツバッグからバスケットシューズを取り出すと、部室を出て体育館に向かった。

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