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君の心に添えるまで  作者: 聖
3/3

1章/友達

入学式から数か月後

なんとか高校生活に慣れてきた私たちは、変わらず四人で登下校していた。

「瑠璃ちゃん、湊おはよう!」

「おはよ。あれ今日一人?」

千春ちゃんと祐輔君が合流する駅で電車に乗ってきたのは祐輔君一人だった。

千春ちゃんとは連絡先を交換しているが、彼女からは何も連絡は入っていない。

「あー、風邪ひいて昨日の夜から寝込んでるって千春の母さん言ってたぞ」

「風邪…千春ちゃん大丈夫かな」

私が少し不安になって俯くと、祐輔君が頭に手を乗せてきた。

「ただの風邪だから大丈夫だよ。あとでLINEでも送ってやったら?喜ぶぞ」

「そうする」

早速送ろうと、千春ちゃんとのトーク画面を開く。

文章を考えて送るという簡単な作業なのだけれど、なんて送ればいいのかわからずスマホの画面とにらめっこする。

「っふは。瑠璃考えすぎ」

そんな私を見て湊は笑った。

「瑠璃の思ったこと送ればいいんだよ。自分が風邪をひいたときなんて言われたら元気が出る?」

「私が、風邪をひいたとき……」

大丈夫か、なんて聞かれても大丈夫じゃないに決まっていると私なら思ってしまう。

なら、なんて送ろう。


目的の駅に着き、私たちは電車を降りる。

「ちゃんと送れた?」

「うん」

大切な友達に送ったメッセージ。

《千春ちゃん、早く元気になって学校一緒に行こうね》

今思うとなんて子供じみた文章なのだろうと思う。

でも、これが自分が風邪をひいたときに言われたい言葉だった。


学校について授業を受ける。

何も変わらない日常なのに千春ちゃんがいないだけでものすごくつまらなかった。

午後からは体育がある。

お昼は湊たちと食べたけれど、さすがに女子更衣室までは着いてこれないから一人で向かった。

「葉月さん」

着替えていると声をかけられた。

振り向けば三人の女の子が立っている。

「小林さんと鈴木さんと、大山さん…」

三人とはあまり話したことはない。

そんな彼女たちが今目の前にいることに少しだけ不安を感じた。

「私たち、葉月さんと仲良くなりたかったんだ。だめ、かな」

どこのクラスにもリーダー的存在はいる。

彼女たちはそんな存在に当てはまるから、私みたいな人物とはあまり関わりがないと思っていた。

実際、この数か月間関わることは片手で数えられるくらいしかなかったし…。

「私でいいなら……」

そう言えば三人は嬉しそうにした。


体育が終わってふと携帯を見ればLINEの通知が来ていた。

授業が始まるまでまだ少し時間があるからと、見てみれば千春ちゃんからだった。

《朝連絡できなくてごめんね。もう熱下がったから明日は行けると思う!早く瑠璃ちゃんに会いたいな》

可愛らしいスタンプとともにそんな文章が送られてきていて口元が自然と緩む。

「葉月さん!」

返信しようと思っていたら小林さんに声をかけられた。

「昨日ノート忘れて黒板に書かれていたこと何も書けてないの。古典のノート貸してもらってもいいかな」

「…でも、次の授業は古典だし」

「ダメ?」

悲しそうな表情をされて私は悩んだ末にノートを貸すことにした。

まあ、今は別のノートに書いて家に帰ってから写せばいいし。


「瑠璃ちゃん帰る時間だよ?」

「あ…うん、帰ろう」

結局、ノートは返ってこなかった。

返してもらおうと思ったのだけれど、小林さんたちはHRが終わるとさっさと帰ってしまって声をかける暇がなかったのだ。

復習はどうしようかと、ぼーっと考えていたらいつの間にか湊と祐輔君が近くに来ていた。

「瑠璃、小林と授業の前話してたけど何かあった?」

帰り道、湊にそう聞かれる。

「えっ、瑠璃ちゃん話したん?」

「うん。体育の前に仲良くなりたいって言われて…。さっきも古典のノート貸してって言われたの」

「ちゃんと返してもらった?」

湊はこういうところは鋭い。

というか、一部始終を恐らく見ていたのだろう。

「たぶん忘れてるんじゃないかな。明日返してもらうよ」

そう言えば、彼はむっとした表情になった。

「ちゃんと返してもらえよ?人から借りといて返さないとかありえないし」

「でも、小林が瑠璃ちゃんと仲良くなりたいってなぁ。なんか嫌なこととかされてない?」

祐輔君は何か知っているのだろうか。

でも、私は彼女たちとも友達になりたい。


「瑠璃ちゃん!おはよう!!」

次の日、元気になった千春ちゃんは祐輔君とともに電車に乗ってきた。

「おはよう」

「神崎さん相変わらず元気だな」

「風邪で寝込んでた方が大人しくていいんじゃない?」

冗談を言う祐輔君に千春ちゃんは頬を膨らました。

「そう言う祐輔も黙ってたほうがモテるんじゃない?」

「おまっ、そんなことないわ!」

そう言い返した祐輔君が少しだけ悲しそうな表情をしたのは私の見間違いだろうか。

そのとき、電車が揺れて私はバランスを崩して近くにいた人にぶつかりそうになった。

「おっと…。大丈夫?」


【俺は千春に好かれればそれでいいんだけどな】


「っ……!」

祐輔君が私の体を支えてくれたのだが、その拍子に心を読んでしまった。

「あ…ご、ごめん」

何に対しての謝罪になるのだろう。

よりによって、彼が秘めていると思われる感情を知ってしまった。

「瑠璃?」

「…な、に?」

湊が顔を覗き込んでくる。


【大丈夫?】


湊の心配している声が聞こえ、私は首を横に振った。


【あぁ、学校面倒だな】

【仕事終わったら家に帰って本でも読むか】

【あいつマジで会いたくないわ】


いつもそうだ。

不安に駆られると力がコントロールできなくなって周りにいる人の声が聞こえてしまう。

頭に響く声を振り払おうとしてもどうにもできなくて、自分が自分じゃなくなってしまいそうで…。

「瑠璃、おいで」

湊に腕を引っ張られ空いていた座席に座らせられた。

隣には彼が座り、頭を撫でてくれる。


【大丈夫。瑠璃は瑠璃だから】


「着くまで寝てな」

湊の心の声に、彼の声に我に返った私はゆっくりと目を閉じた。

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