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03話 じじばば登場

 

家族会議が行われた数日後の事だった。

俺は父様と母様の3人で朝食を食べている最中であった。


「失礼します」


セルバさんがノックと共に、部屋に入る。

何時もは食事が終わった頃を見計らってなのに珍しい。


「どうした? 何かあったのか?」


父様が食事していた手を止めて尋ねた。

緊急の案件かと父様は思ったようだ。


「えぇ、今本邸の方に大旦那様と大奥様がいらしたとの連絡がございました」


「父上と母上が? 先触れも何も連絡は来てなかったぞ」


父様が驚いた後、訝しげな顔をした。


「えぇ、此方にも連絡はございませんでした」


セルバさんも父様に同意する意味で頷いた。


「全く、あの方達は突然すぎる。先に文の1つや2つ出せばいいものを……」


父様は溜め息をつくと、仕方がないとばかりに立ち上がった。


「父様?」


「出迎えに行ってくる。お前達は食べていなさい」


「ヴィンセント様、私も……」


母様も席を立とうとするが、父様に首を振られる。


「いい、お前達は本邸の方には入るな。私も父と母を連れて、すぐに戻る。どうせリュートの顔を見に来たんだろう」


「はい……分かりました……」


母様は少し浮かない顔で俯いた。


「そんな顔をするなカミラ……、父と母も以前とは違う。今はお前の事を認めている」


父様はぽんっと頭を撫でると、そう言って母様を慰めた。


「では、行ってくる」


「……はい、ヴィンセント様」


母様は笑みを少し浮かべると、父様を見送った。


「お祖父様やお祖母様ってどんな方なんですか?」


俺はまだ会ったことがない。

父様と母様の結婚を反対していたみたいな感じのようだが。

仲が悪いのだろうか?


「うーん……厳格な感じの人、かな? 私は平民の出だから、ヴィンセント様との結婚は凄い反対されたんだ」


「そうなんですか……」


母様が暗い顔をしたのでそれ以上は追求せず、黙々と朝食の続きを始めた。

俺は母様にそんな顔をさせる祖父母に対して、良いイメージを持てなかった。







◆◆◆◆◆◆◆◆◆







父様が離れへと戻って来たのは、俺達が朝食を食べ終えた頃であった。


「初めましてお祖父様、お祖母様、僕はリュート・ウェルザックと申します」


俺は愛想笑いを浮かべ、丁寧に頭を下げた。

初めの印象は大切だ、これだから平民はと言われかねない。

俺達の味方とは限らない以上、付け入る隙を与えたくない。


「まぁまぁっ! ちゃんと挨拶が出来て偉いわね? (わたくし)はシルヴィア・ウェルザック、貴方のお父様の母親にあたるわ。よろしくね!」


そんな俺の態度に反して親しげにそう言うと、父様の背後にいた女性は俺をいきなり抱き上げた。


「な!?」


俺は急に持ち上げられる体に、驚きの声を上げる。

俺が戸惑っている間に、顔や体をぺたぺた触られる。

柔らかい頬は特に念入りに触られた。


「え? え? ちょっ……と!?」


「母上、リュートが困っています。下ろしてください」


おろおろしている俺を見かねて、父様が助け船を出す。

いきなり撫でくりまわされるとは予想外であった。


「あら? 仕方ありませんわ。だって初孫なんですもの!……それなのに、ヴィンセントはちっとも連れてきてくれなかったですしね?」


お祖母様に当たるであろう女性は、父様に不満の目を向ける。

勿論、その手に俺を抱いたまま。


「……リュートが家に来た頃、近隣の諸外国を回っていたのは母上達でしょう? 誕生会後は警備の問題で、あまり遠くには出せませんでしたし……」


「言い訳は結構よ! (わたくし)は孫を可愛がりたいのです。ヴィンセント、貴方は暫く旦那様と殿方同士で話し合っていればよろしいわ!」


そう言ってプリプリ怒っているお祖母様は俺を抱いたまま、全く離す気配を見せない。

俺はいつまでこの状態なのか。


「おい、私はまだ挨拶していない。シルヴィア、貸しなさい。私も孫を抱き上げたい!」


ずっと黙っていたお祖父様らしき男性が口を開いて異を唱える。

お祖母様を窘めるのかと思いきや、同じような事を主張し始めた。


2人共、とてもお若い。

とてもじゃないが、孫がいるようには見えないな……


「駄目です。そもそも貴方は結婚に反対していた筈です。この子を抱く権利はありませんわ!」


お祖母様は俺を渡すものかと、お祖父様と距離を取った。


「くっ……!? 昔の話だろう!? 今は反対していないぞっ!」


「父上、落ち着いてください。リュート、この人はヴィルヘルム・ウェルザック。お前の祖父にあたる」


喧嘩になりそうな雰囲気だったので、父様が止めに入った。

そしてついでのように、俺へと紹介してくれた。


「よろしくお願いします?」


俺は戸惑いながらも、抱き上げられた状態で挨拶をした。

まだ上手くこの状況を把握出来ていない。


「ほぉ、父親と母親……どちらにもよく似ているな」


お祖父様が目を細めて、俺の頭を撫でる。

撫で続ける。

全く、やめる気配がしない。


あれ?

何か歓迎ムード?

何か2人から初孫可愛いオーラが、わき出ているんですけど!?

というか、そろそろ離して欲しい。

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