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21話 悪魔の書

寝落ちしてしまったので、遅くなりましたOrz

待ってくれている人がいたらすみませんm(__)m

 

俺達はトーリの行った方向へ足を進めたが、その姿は見当たらなかった。

もっと先へ進んだのかと、そのまま突き進むと壁に行き当たり、左右へと廊下が続いている。


どちらに行ったんだ?

トーリ・クレイシスは何処に向かっている?

あの人は……何をするつもりなんだ?


俺の中で先程から嫌な考えばかりが頭を過る。

俺はゲームのシナリオとは、何らかの理由で違った道筋を辿っているのだと思っていた。

けれど、本当はゲームの設定(シナリオ)通りに進んでいるのではないか? と。


ルーベンスへの支援は行われていなかった。

只でさえ食料の自給が厳しい上に、水も汚染されていて壊滅的だろう。

その2つから導き出されるのは、病の更なる蔓延と飢饉だ。

しかも今から再び支援を用意し送っても、どうやったって間に合わない。

此処からでは距離が離れすぎているのだ。

よしんば間に合ったとしても、被害は甚大だ。

救えた筈だった多くの人が死ぬことになるだろう。

そして、トーリ・クレイシスは清廉潔白な人間だ。

だからこそ、彼なら考えるのではないか……病や飢えに苦しむ人々を救いたいと。


それがたとえ……禁忌に触れることになったとしても。


俺が前に読んだ本には、悪魔の力には願いを何でも叶える事が出来ると記されていた。

トーリ・クレイシスは禁忌の力(悪魔の力)でこの悲劇を覆そうとするのではないか。

そんな力にすがってでも、多くの人々を救おうとする。

そして、ゲームの設定通り悪魔に取り憑かれ、周囲の人々を殺していく。

多くの民を救おうとしたのに、その民を自らが苦しめ喰らうことになる。

彼はゲームの設定と解離している訳ではなく、()からゲーム同様の外道に堕ちるのだ。


何て報われなくて


何て哀れで


何て滑稽で


何て救われない結末(シナリオ)


ここまできたら、いっそ滑稽だ。

しかし今確実にその結末(シナリオ)に向け、物語は進んでいるのかもしれない。

いや、これは杞憂ではないだろう。

そう考えれば全てに辻褄が合う。


「何処だ? 何処に行ったんだ!?」


苛立ちをぶつけるかのように、俺は荒い口調で叫んだ。

時間がない、焦燥の面持ちで手掛かりを見つけるべく辺りを見回した。


「…おく…の…せ…い…どぅ…かも!」


「聖堂? それって何処にあるんだ!?」


「あっち!」


ユーリは右側を指差した。

俺はユーリの手を引き、すぐさまその方向へ走り出す。

走りっぱなしで、息が苦しいがかまってなどいられない。


まだ、間に合えよっ!!

その道には救いはない!


「どっちだ!?」


暫く行くと、また分かれ道に突き当たった。


「こっち!」


そうやって暫く走っていくと、白い大きな扉の前まで辿り着いた。


「ここ!」


「開けるよ!」


俺は扉に手をかけ、扉を押し開いた。


「「っ!!!?」」


中は異常だった。

真っ白な壁は赤い血のようなもので描かれた魔法陣で埋め尽くされ、中央には黒い聖杯。

そして人の中央には、手に魔導書を持ったトーリ・クレイシスがいた。

恐らくその魔導書は悪魔の書(グリモワール)と呼ばれる代物で間違いないだろう。

その本は悪魔を召喚出来るという。


「おとうさまッ!!?」


ただならぬ雰囲気に、ユーリが叫ぶ。


「ユーリ!?」


俺達に気が付いたトーリも、驚きに目を見開く。


「トーリ・クレイシス、今すぐその魔導書を放棄しなさい。それは人が触れるべきではありません」


俺はトーリに今すぐ止めるよう呼び掛ける。

まだ間に合う筈だ。


「止めるわけにはいかないっ! ルーベンスの地にはまだ救える命がある!! あの様な醜い下劣の為に死んでいい命などないっ!! その為に私は!」


トーリは叫ぶと悪魔の書(グリモワール)に魔力を流し込んだ。

部屋中に張り巡らされた魔法陣が、赤黒い光を帯びる。

その様はなんと禍々しい。


『汝の望みは……?』


唐突に部屋に低く寒気を呼び起こす様な声が響いた。

本能が警鐘を鳴らした。


「ルーベンスの民を救う事だ!」


トーリは迷いなく叫ぶ。


『対価は……?』


悪魔は願いの対価を求めた。


駄目だ、コレはヤバい。

俺は本能的な恐怖に、冷や汗を流した。


「よせっトーリ!! こんな力であんたの望みは叶えられない!!」


俺は叫んだ。

そんな力では誰も救われない。

唯、トーリ自身が一番苦しむ方法で、より多くの人々が死に向かうだけだ。


「対価は私の命を持って支払おう! だからルーベンスの民を、善良なる民をどうか救ってくれ!!」


俺の制止を聞くことなく、トーリは民の為に自分の命を差し出した。


「とうさま!」


「ダメだ!!」


俺達は叫んだ。

でも、間に合わない。


『その願い(欲望)……了承した』


しかし俺達の制止は届かず、その声と共に魔法陣から黒い靄が溢れだしトーリに襲いかかった。

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