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16話 ユーリの心配事

ブクマ200件突破!!

お読み頂きありがとうございます!

と、言うわけで今日中にもう一話UPします。

 

ユーリにプレゼントを渡した後、結局2時間近く人工の星空を眺める事になった。

ユーリの機嫌もすっかり直り、プレゼントをとても気に入ってくれたようだ。


「あり…がと…うれし…!」


「僕もこんなに喜んでくれたら、作った甲斐があるよ。……そうだユーリも今度一緒に作ってみる? きっとお父上に贈ったら喜ぶよ」


そう提案したのはただの思い付きだった。

最も息子を大事にしているようだったトーリ・クレイシスなら、ユーリが何をあげてもきっと喜ぶに違いない。


「ほんと! …ぼく…つくりたいっ!」


ユーリは俺の提案に眼を輝かせて、こくこくと首を縦に振った。


「じゃあ、約束だね……あぁ、紅茶、すっかり冷めちゃったね。新しいものを煎れて貰おうか?」


「ん!」


俺はすっかり冷めてしまった紅茶を、セルバさんを呼んで新しいものに代えて貰った。


「教会へは何時なら行っても大丈夫かな? ……まだ、忙しそう?」


俺は新たに煎れて貰った紅茶を飲んだ後聞いてみた。

出来るだけ早く話したいと思ったからで、特に深い意味はない質問の筈だった。


「…ん、…だい…ぶ…おちつい…た…と…おもぅ。…け…ど、」


けれど、ユーリは俺の何気ない質問に表情を曇らせた。


「……何かあったの?」


ゲームのシナリオがシナリオだけに、教会へは目を配っていた方がいい。

何となく嫌な予感がして、俺はユーリに何があったのか尋ねた。


「ん、…おとうさま…さいきん…いらい…ら…してる…。…こなぃ…だ…しん…か…んに…、おこっ…てた……」


ユーリは不安そうに、誰にも聞かれないようにこっそりと俺に教えてくれた。


「そうなんだ……心当たりはないの?」


「わなん…な…ぃ」


ユーリは首を振って答えた。

その目にはうるうると涙が溜まってきている。

心当たりは全くないようだ。


「きふ…も…いっぱい…あつまっ…て…うま…く…いって……る、…はず…なの…に」


ユーリの話を聞いて、あの女が言っていたゲームの設定が俺の頭を過った。


まさか、もうシナリオが始まってしまったのか?

もしそうだとして、何故トーリは悪魔の力になんか手を出したんだ?

自分の目で見たトーリ・クレイシスは、そのような悪行に手を染めるようには見えなかった。


……これは予定を早めて、すぐに会いに行ってみた方がいいな。


俺は自分の中でそう結論を出した。


「僕が会って話してみようか? 一応これでも公爵家子息で魔眼持ちだし、何か困ったことがあるなら力になれるかも」


「! …ほん…と?」


「うん、まかせて!」


俺が力強く頷くと、ユーリも表情を少し和らげた。


「明後日の午前中、教会へ伺ってもいいかな?」


明日は幾らなんでも急すぎるだろうが、あまり日を置くのもよくないだろう。

明後日はジョディーとの約束があるが、来るのは夕方過ぎの予定なのでそれまでには戻れるだろう。


「だい…じょ、ぶ。…りゅーと…のこと…むし…できな…ぃ…から」


ユーリの父親(トーリ)は忙しいようだが、回復魔法の魔導具の件もあるし顔合わせくらいは出来るだろう。

それに俺は高位貴族で魔眼持ちだ。

いざとなったら多少のごり押しは利くだろう。

念のため、一応1日は空けておいたし波風も余りたたないだろう。

もし本当に忙しいようだったら、すぐに帰ればいいだけだ。


「じゃあ、決まりだね。明後日伺うよ。魔導具の件と一緒に伝えておいて」


俺は小指をユーリに差し出した。


「ん、これも……やくそく!」


ユーリは小指を絡めると、力強く頷いた。









◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆








約束をした後、ユーリに教会での暮らしや父親(トーリ)について聞いていたら、時刻は夕方になっておりユーリがいつの間にか帰る時間となった。

名残惜しい気持ちはあったが、俺はユーリを玄関先まで見送った。


「じゃあ、また明後日に。」


「また…あさっ…て、…お…じゃま…しまし…た…」


ユーリは手を降ると、馬車に乗っていった。

そして、馬車が見えなくなる程離れてから踵を返し、俺は屋敷の中へと戻った。


「あら?ユーリ君もう帰っちゃったの?夕御飯、誘おうと思ったのに……」


残念と、部屋に戻る途中に出会った母様は言った。

本心から残念だと思っているのだろう。

母様の眉が何時もより下がっている。

母様は子供好きなので、ユーリのことも可愛がっているのだ。


「はい、今見送ってきました。残念ですが、元々夕方には帰るように言われてたみたいなので夜までは無理ですよ。心配させてしまいます」


「そっか……今度ユーリ君のお父様も交えて、夕御飯に招待しようかしら?」


「いいんじゃないですか? とても楽しそうです」


俺もユーリの事を弟の様に思っているので、一緒にいるのは嫌いじゃない。


「じゃあ、今度お誘いしましょうっ!」


「ふふ、僕も楽しみにしてますね。では、僕は部屋に戻りますね」


「えぇ。でももう少ししたらヴィンセント様も帰ってくるから、間食しちゃダメよ?」


「しませんよ……では失礼します」


むしろ間食は母様の方がしそうだと、内心苦笑いを浮かべた。


……まぁ、母様の場合食べても夕御飯に響いたりしないが。


母様の胃袋はブラックホール並みに入るので、どんなに食べても朝昼夕の3食はきちんと平らげる。

あの細い体になんであんなに入るのか未だに謎だ。



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