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02話 ヤンデレ?いいえ、萌です。

やっと、ルートに入りました。

 

ユーリ・クレイシス


ヤンデレ攻略キャラにして、あの昼休みの悪夢。

あの日、あの腐女子のせいでクラスメイトは皆食欲をなくし、あれからどんな時でも即逃避が絶対になった。


本当、食事中にカニバの話とか普通しないよな。

……まぁ、転生した今少しは感謝してるけどな。


あれだけ盛大にネタバレしてくれれば、シナリオを大体は把握出来る。


「魔眼持ちは数少ないから、同年代の友人としてユーリとは仲良くして欲しい」


屈みこんで俺に目線を合わせて、優しく微笑んだ。

大人の利害ではなく、父親としての願いだ。

その姿はまるで良き父親のようだった。

なんか凄くいい人そうだ。

少なくとも悪い人に見えない。


……どう見ても豚じゃなくて、只のイケメンなんですけど?

しかも教皇でもないみたいなんだけど!?

腐女子~ぃ、どう言うことだよコレ。


強制的に聞かされていたネタバレが、現実と食い違っている事に俺は内心混乱した。


聞いてないよ。

それともいい人そうなのは演技で、裏は真っ黒なのか?

……うぅー、分からん、兄様の例もあるしな……。


すぐに判断を下せる訳もなく、俺は取り敢えず判断材料を集める事にした。


「勿論です! 僕も同年代の友人は少ないので、仲良くしてくれると嬉しいです」


愛想よく笑顔を浮かべて俺は後ろのユーリに握手を求めたら、おずおずと手を握られた。


「……ん…」


こんな子が、ヤンデレね……。


容姿は父親譲りの髪と目の色で、髪の長さは肩より少し長いおかっぱ。

少年というよりは少女に見えるし、仕種はまるで小動物のようだ。


「人見知りのこの子が握手を……珍しいな。これは是非とも仲良くして貰わなければ」


トーリはそんな息子の様子を微笑ましく見ていた。

握手くらいで驚くとは、ユーリは相当人見知りを拗らせているようだ。


「お前達は同年代だし、魔眼持ち同士だ。国家の有事の時は、協力して貰うこともあるだろう。仲良くしといて損はない」


王様は俺達の頭をわしゃわしゃと撫でた。

折角、整えて貰った髪型が少し崩れてしまった。


「さてと、大人達は退散するか。子供同士仲を深めとけ」


「では、ユーリ。私は挨拶回りをしてくるよ。リュート君と遊んで貰いなさい」


ユーリがトーリの言葉にこくこく頷いて、バイバイと手を横に振った。

そして王様達は俺達から離れ、別々の貴族の輪に入っていった。


「「………………」」


ユーリは大人しい性格のようで、2人の間に静寂が流れる。

俺としては初対面であるし、大人達にはもう少し間を取り持って貰いたかったものだ。


「……軽食でも食べますか?」


「……(コクッ)」


俺の提案に、ユーリは言葉ではなく頷いて答える。


んー、あんまり好かれてないのかな?

それともただ人見知りなだけか?


ゲーム設定(ヤンデレ)知っているせいか、どうもやりにくい。

何が地雷になるか分からないから、手探りの状況だ。


「じゃあ、行きましょうか」


俺は取り敢えず先導して前を歩こうといた。


“くいっ”


背を向けた瞬間、後ろに引かれた。

振り向くとユーリが俺の服の裾を掴んでいる。


「……どうかしましたか?」


「…………」


尋ねるが、ユーリは喋らない。


何なんだこれは?


よく分からないが害はないので、裾を掴んだままなのは放置して、俺は軽食の置いてある場所に進んで行くことにした。

ユーリも裾を掴んだままだが、黙ってついてきた。


軽食は甘いものから、食事系まで様々だった。

王族の誕生会だけあって、どれも一流の料理人が調理した豪勢な食事だ。


「何が食べたいですか?」


「……」


ユーリは答えなかったが、視線はケーキやお菓子に向けられている。


甘い物がすきなのかな?


「ケーキ、美味しそうですね。いくつか食べますか?」


「ん、……たべる!」


食べたいものが当たってたのか、目を輝かせた。

俺は微笑ましくなって、ケーキを取り分けてあげた。

すると、モグモグと食べ始める。

まるで、雛鳥に餌をあげる親鳥になった気分だ。


ちょっと可愛いかも、弟みたいで。

……年齢的には年上だけれど。


だが、見た目は小動物系の幼い容姿であるし、俺の1歳上に見えにくい。

何より、精神的に幼く感じる。


「美味しいですか?」


「ん。もっと……?」


まだ食べ足りないのか、首を横にコテンと倒した。


かっ可愛い!!


初めて母様達の気持ちが分かった。

俺は新たにケーキを取り分けた後、思わず頭を撫でてしまっていた。

母様もいつもこんな気持ちなのだろうか。


「あり……が…と」


ユーリは少しだけ口角をあげ笑みを作る。

先程まで表情が薄かった分、それにはインパクトがある。



……そうか、これが萌ってやつか。


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