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乙女ゲームに転生したようだが、俺には関係ないはずだよね?  作者: 皐月乃 彩月
第2章 俺と攻略対象者と、時々悪役令嬢
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14話 俺様王子様、来る!?

 

俺達が案内されたのは、王宮の中庭だった。

王宮ということで専属の庭師が何人も居るのだろう。

庭木は丁寧に整えられ、白い薔薇が美しく咲き誇っている。

そのまま奥に進んでいくとテーブルが用意されており、そこには兄様ともう1人同い年くらいの少年が腰掛けていた。


「兄様!」


「なんだ? お前も来たのか、オズワルド?」


王様が金髪の少年に話かけた。

少年の名前はオズワルド、ということはこの国の王太子様だ。

金色の髪が太陽に反射して実に眩しい。


「えぇ、レイが天使、天使、五月蝿いものですから。ついこの目で直に見たくなったもので」


「で? 感想は?」


王様はニヤニヤと笑いながら聞いた。


「確かに言うだけはありますね。これ程の美貌は国中を探してもそうそういないでしょう」


オズワルド殿下はフッと笑った。


「だから言ったじゃないか、天使だってっ!」


信じてなかったのかと、ムッとする兄様。


兄様……それ外でも言ってるんですか。

は、恥ずかしい!!


そろそろ、周囲の親バカ・ブラコンが与える精神的ダメージが限界を迎えそうだ。


「いや、お前みたいに何にも興味持たなかったやつが急に天使だのなんだのって言い始めたら、普通頭疑うだろ? 俺だって、正直薬か、魅了魔法の類いかと思ってたしな」


オズワルド殿下はそんな兄様に憮然と返した。

兄様のせいで、俺にそんな嫌疑がかけられていたとは驚きだ。


……まぁ確かにね。

兄様のキャラと、かけ離れ過ぎてるし。

俺も逆の立場だったら、そう疑うだろう。

ここは嫌疑が無事に晴れてよかったとしよう。


俺はそう結論付けて、兄様と話しているオズワルド殿下の横顔を俺はまじまじと観察してみた。

父様譲りの髪や眼の色で、顔立ちもそっくりだ。

ゲームでも兄様と人気を1、2を争うキャラだったらしいオズワルド。

確かにオーラが違う。

自信溢れるその姿から、ゲームの設定どおり俺様な性格なのかも知れない。


「初めまして、リュート・ウェルザックです。よろしくお願いします」


俺はオズワルドにも挨拶をした。


「ほう、こいつと違って可愛いげがありそうだな。俺はこの国の王太子、オズワルド・ライト・ユグドラシアだ。お前、リュートの兄とは一応親友にあたるな」


そう言って俺の頭を撫でたが──


《バシッ》


頭の上にあった手は、兄様によって払い落とされた。


「ちょっと、気安く天使に触らないでくれない? 汚れるから」


そして、王太子に対してのこのバイ菌発言。

仲がいいからこそだろうが、友人相手にかなり酷い。


「おい、幾らなんでも不敬だぞ? 俺を誰だと思ってる?」


「俺様王子。僕の中では、俺様より天使の方が上なんだ。当たり前だろう?」


オズワルド殿下が不機嫌そうに言ったのを、兄様は後ろに吹雪を携えた微笑みで応える。

二人の間に火花が散った。


にっ兄様、本当に不敬だよ!?

バイ菌扱いは流石に酷いよ!?

そして、その痛い発言を封印してくださいっ!!


本当にいたたまれなくなるから。

俺の切なる心の叫びであった。


「レイアスが食って掛かるとは珍しいな。というか、初めて見る。子供らしくない奴だと思っていたが……」


「はい、私もこないだ見たときは驚きました」


俺が内心動揺しまくっている中、感慨深げに話す王様と父様。


ちょっ、2人共止めてよ。

息子だろ!?


「レイ君、ダメだよ。殿下にそんなこと言っちゃっ」


俺の心の声が聞こえたのか、母様が兄様を嗜めた。


「これはこれは、見苦しい所を見せて申し訳ない、ウェルザック公爵夫人」


「申し訳ありません、カミラさん」


母様の介入に、二人は即座に冷気と火花を消して言った。

先程の険悪な雰囲気が嘘のようだ。


「母様は殿下とお会いしたことがあるんですか?」


先程のオズワルド殿下の反応を見るに、初対面ではなさそうだ。


「あぁ、俺が幼い頃に一度な。それより、殿下じゃない。名前で呼べ。お前なら愛称で呼ぶことを許す」


母様の代わりにオズワルド殿下が答えた。


「えっと…………オズ様?」


「あぁ」


俺が躊躇いがちに愛称で呼ぶと、満面の笑みで頭を撫でてくれた。


《バシッ》


「様は要らないよ? というかもう2度と会わないしね」


だから、愛称で呼ぶ必要もないよと、兄様が再度手を叩き落とした。


「……リュート、城に住まないか? こんな変態がいる家ではおちおち寝てもいられないだろう?」


そんな兄様に対抗するかのように、俺の肩に手をおいて王宮へと勧誘するオズ様。

また2人の間で火花が散り始めた。


「あの、えっとその、」


勿論、王宮に住むつもりはないが、yesしか認めないとばかりの視線に即答出来ない。


どっ、どうしよう!?

また始まったちゃったよ!


「お前みたいな横暴なヤツが居るところに、置いていけるわけないだろ?!」


べりっと、勢いよく俺からオズ様を引き剥がす兄様。


「変態が居るところよりマシだろ?」


捕まれた腕を振り払い、兄様を鼻で笑うオズ様。


「ちょっと前まで自分の事俺様って呼んでた痛い奴に、言われたくないな?!」


……俺様って言ってたんだ。

確かに痛いな。


俺は心の中で同意した。

そして一歩、二歩とそのまま後ろに下がる。


「何だと? 貴様ブラコンの分際でっ!」


「俺様王子に言われたくないかな?」


「黙れ、腹黒!」


「愛想笑いもろくに出来ない馬鹿に、言われたくないね!」


そして、俺達をどんどんヒートアップしていく2人。

どんどん言い争いの内容が幼稚になっていく。


この2人って……本当に仲良いのかな?


俺がそう感じてしまうのも仕方がないと思う。


「「リュー(ト)もそう思うよね(よな)!?」」


このまま逃げてしまおうと考えていた俺に、2人は急に話を振ってきた。


おう、息ピッタリ。

仲良いね。


「えぇーとぉ、その」


何て返すのが正解なのか分からないので、非常に困る。

ただ1つ言える事は、どっちもどっちだと言うことだ。

だが、それを言ってしまうと十中八九俺に飛び火する。


「お前らいい加減にしろ。坊主が困ってんだろ?」


「その通りだ。レイアス、お前らしくもない」


ここでやっと父親組が止めに入った。

遅すぎる登場だ。


遅いよ、父様達。

もっと早く止めてほしかった。


お陰で俺の精神的疲労が凄まじい。


「「むっ…………分かりました」」


2人は渋々といった感じに、言い合いを終えた。

きっと俺達の居ないところでまたぶつかるだろう。


「フフフッ、2人共仲良しなのねぇ」


けれど、母様の場違いとも言えるのほほんとした声に


「「あり得ない(ません)!!」」


と、2人仲良く声を揃えていたので心配は無用であろう。

根本的なところで、似ている2人なのだ。


やっぱり仲良いね。


少し羨ましいかもしれない、と俺は思った。


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