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番外編 在りし日の憧憬④

此方ではお久し振りです……

更新が空いてしまい申し訳ない(-ω-;)

 

マベリアンタとの戦いは、激しいものだった。

過去にあったような小競り合いで済ます事の出来ない程の激しさ。

敵味方問わずに、大勢の死傷者が出た。


「……一度、お前だけでも戻ったらどうだスレイヤ。アーシャも心配しているだろう」


国境線、この戦いの最前線であるこの森に入って、早一ヶ月。

戦いは激しくなるばかりで、心休まる暇もない。

スレイヤは身重のアーシャを残して此処にいる。

お腹の子供の事を考えても、一目顔を見せた方がアーシャも安心する筈だ。

隊の副官であるスレイヤが抜けるのは辛いが、ほんの数日であれば持ちこたえられるだろう。

隊員達もそんなやわな鍛え方はされていない。


「冗談はよしてよ。ジークや敵を残しておめおめと帰ってきた事がばれたら、それこそアーシャに蹴飛ばされる」


けれど、私の提案はスレイヤによってあっさりと一蹴された。

疲労や汚れでいつもの精彩を欠いてはいるが、その瞳には強い闘志が宿っている。


「……結婚式もまた延びてしまったな……」


私にもっと力があったのなら、もうとっくにマベリアンタとの小競り合いに蹴りがついていたかもしれない。

もう何度、2人の結婚式を延期させてしまったのか、自分で自分が不甲斐ない。


「結婚式なんて、子供が生まれてからでも構わないよ。まぁ、籍の方は先に入れた方がいいだろうけど……証人は勿論ジークが引き受けてくれるだろう?」


「……あぁ、勿論だ」


この国では、貴族の結婚には国の許可がいるし、後暗いものがなければ結婚式を大々的に行うのが一般的だ。

しかし、子供が生まれる以上は、慣例を破っても先に籍だけでも入れるべきだろう。


「そんでもって、御祝儀も弾んでくれるとありがたいんだけど?」


私が罪悪を感じていると、にぱっと笑みを浮かべて冗談混じりにスレイヤは付け足した。


「……抜かりないな」


「家もアーシャの家も、貧乏貴族だからね! 子供も生まれるし、金はあればあるだけいい!」


「正直な奴だな……まぁ、これだけ働かされてるんだ、全てが終わったら国に褒賞金の1つや2つ請求しても許されるだろう」


家は比較的裕福だが、軍備にかかる費用が馬鹿にならない。

これだけの激戦を強いられているのに、国からは未だ増援が送られてこないのだ。

スレイヤに倣って、それくらいの要求をしても構わないだろう。


「お、ジークも分かってきたね。でも、褒賞金だけじゃなく軍事費も倍増して貰うくらいの意気がないとね!」


「それは流石にがめつ過ぎるだろう……」


激しい戦闘の最中の心休まるほんの一時──

苦戦を強いられてはいたが、まだ心に余裕は僅かながらだが残っていた。










◆◆◆◆◆◆◆◆◆









「“終焉を刻め、アイギス”」


私の詠唱と共に、眼前の敵が石化した。

けれど、あくまで対人兵器たる私の固有魔法では全てを倒しきれる筈はなく、辺りでは魔法による爆発音や剣撃の音が鳴り続けている。


「ジークっ! あまり固有魔法を使い過ぎるな、魔力が持たなくなるっ!!」


スレイヤの叱責が背後から聞こえると、そこには数多の敵兵が血を流し倒れている。


私達の周囲には他に味方の兵は殆ど居ない。

戦闘では眼帯を外し、魔法を行使する。

周囲が感じる恐怖は、想像を絶するものだろう。

例外はスレイヤとアーシャ位だ。

戦場ではスレイヤに背後を任せて、私が前に出るというのがいつもの戦法だ。


「分かっている……だが、敵兵が多い、此方が押されている私の存在を示した方が、向こうも手が出しづらいだろう」


魔眼持ちが相手に与えるプレッシャーは計り知れない。

魔眼持ちが居ると分かれば、相手は警戒して動きが鈍くなる。


「そういうとこ、頑固だよね。大将なんだから、後でドンと構えててもいいのに……まぁ、魔力が切れても俺がサポートするから好きなようにやりなよ、大将!」


「……すまない、お前には苦労をかける」


いつも仕事をサボって遊びに出掛けたりと適当そうにしているが、こういう所で私はきっとスレイヤには敵わない。

スレイヤが居なかったら、私はとっくに戦場で命を落としていただろう。


「俺も普段は仕事サボって面倒かけてるから、お互い様だよ……っと、“アイス・ランス”」


スレイヤの魔法が隠れていた敵を貫いた。

落ち着いて話をする暇もない。

私は現れた兵士を1人2人と剣で切り捨てると、敵陣地へとどんどん切り込んでいった。


「スレイヤ、このまま戦線を押し出す────っ!!?」


その可能性を考えない訳ではなかった。

だが、この戦場にソレ(・・)を投入する事はユグラシアとの全面戦争を意味する。

ユグラシアの魔眼持ちは他国と比べて多い。

その事が他国にとっての抑止力となり、全面戦争にまで持ち込む国は過去殆どいなかった。

万が一投入されるとしても、それはもっと戦況が悪化してからだと思っていた。

読みが甘かった。


「ジーク、この魔力はっ!!」


マベリアンタには現在4人の魔眼持ちがいる。

そして、マベリアンタを象徴するのは水の固有魔法だ。


「っ、スレイヤっ!!」


強大な魔力反応に気付いた時には、もう遅い。

向こうは詠唱を終えている。

上空には青色光を帯びた魔法陣が、煌々と輝いている。

瞬きの後、大量の水の壁が敵味方問わずに私達のいる森を飲み込んだ。




主人公の出番がないからと、なるべく削って進めてるので、落ち着いたら加筆するかも……

仕事が落ち着くまで更新が停滞気味になりますが、これからもお付きあい頂けたら幸いです。

ブクマ&評価もありがとうございます、大変励みになりますm(_ _)m

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