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乙女ゲームに転生したようだが、俺には関係ないはずだよね?  作者: 皐月乃 彩月
第2章 俺と攻略対象者と、時々悪役令嬢
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05話 報告 sideヴィンセント

父様sideです。

 

今王との謁見の為に、私は王宮の長い廊下を歩いている。

今回の事を報告するためだ。

足取りはこの7年では、考えられぬ程軽い。

それもそのはず、私はこの時をずっと待ち焦がれていた。


2週間程前視察から帰るための馬車に乗っていた私に、早馬で連絡があった。

ずっと求めていた情報が、そこには記されていた。


“藍色の髪に赤色の眼の若い女性を保護したと”


私は直ぐに引き返した。


幸い保護してから5日ほど過ぎていたが、騎士達が気を利かせて引き留めてくれていたおかげですれ違いならずにすんだ。


彼女には私に力がないばかりに辛い目に合わせてしまった。

だからこそ次は必ず守れるよう地位と権力も得た。

そして7年もの歳月がかかったが、ついに迎えに行くことが出来た。


しかし、彼女は幼い子供を連れていた。

報告で聞いた時、一瞬彼女は新しい人生を歩み始めたのかと疑ったが、その子を見た瞬間それは杞憂だと分かった。

疑いようがない。

この子は私と彼女の子だ。

とても美しく、そして可愛いらしい子どもだ。

そしてその瞳に宿る魔法陣を見つけた時、驚きと共に納得していた。

盗賊を6歳の子供が無詠唱の高位魔法で殲滅したと、事前に報告を受けていたからだ。

魔眼持ちは少しずつその数を減らし、今やどの国でも片手で数える程しか居なくなってしまった。

大国と呼ばれるこの国でさえ、9人しかいない。

昔は大勢居たというのに。

魔眼持ちは、国から手厚い保護と地位を得る事が出来る。

1人で戦場を覆す可能性を秘めているからだ。

シュトロベルン公爵家が強い権力を持つのも、そういった理由だ。

あの家は固有魔法に固執し、代々輩出し続けている名門だ。

固有魔法を持つ小国の王家から無理矢理連れてきて、嫁に迎えることもあるくらいだ。

その行動は時に常軌を逸している。


『コンコンコンッ』


「ヴィンセント・ウェルザックです、只今参りました」


そうこう考えているうちに、目的の部屋についた。

ノックをして、相手の返事を待つ。


「入れ」


「失礼します」


返事があったので中に入ると、ちょうど執務中であった王と眼があった。


「仕事中申し訳御座いません、至急お耳に入れたい話が」


「あぁ、奥方のことだろう? そこに座れ」


流石は王と言うべきか、情報が早い。

勧められた席に座ると、王も書類仕事を中断し私の前の席についた。


「お前達は下がれ」


王が茶を持ってきた侍女を下がらせると、私に快活に笑いかけた。


「奥方が見つかったって? そばにいなくて良いのかよ、7年振りの再会だろ?」


私が長年探していた事を、この方はご存じだ。

我が事のように、喜んでくれている。


「えぇ、ですがこの事は早めに耳に入れた方がよいかと判断しまして」


「……何だ?」


私の真剣な雰囲気に、王は先程までの砕けた態度を威厳あるものに変えた。


「カミラに子がいました」


「まさかっ!? 他の者と再婚していたのか!?」


「いえ、違います。私と彼女の子です」


王は驚き問いただすが、私はきっぱり否定する。

変な誤解はしないでいただきたい。


「……ではなんの話だ? わざわざ奥方を放って来るくらいだ。重要な話なんだろう?」


「えぇ、私達の子は白銀の美しい髪に右目はカミラのルビーの様な赤、左目は私の金色を纏って」


「おいっ、俺はお前の子自慢を聞くために時間を割いたんじゃないぞ!!」


私の話を王が遮る。

まだ全然説明出来ていないが、仕方がないので本題にきり込む事にした。


「分かっていますよ。……私達の色を纏った瞳にはそれぞれ別の魔法陣が浮かんでいます」


「なにっ!? 魔眼持ちかっ!?」


王が声を荒げて、私を問い質した。

事が事だけに、こうなるのも仕方がないだろう。


「はい。間違いありません」


なので、私は事実だとそう伝えた。


「………………」


私が告げた驚愕の事実に暫し沈黙が続いた。


「……別々のと言ったが、1つは公爵家のもので間違いないか?」


王は慎重になって私に尋ねた。


「左目の陣はそれで間違いないかと。……右目の陣は恐らく火属性のものの可能性が高いですね」


「そうか……。これはシュトロベルンが知れば騒ぎ出すな」


「息子に手出しさせる気はありません」


カミラとあの子は、私が必ず守り通す。


「……あの家は固有魔法に固執している。だから出戻りの娘を無理矢理お前の妻に押し付けた。公爵家の固有魔法が狙いだろう……それが、2つともなれば今回はすぐにでも婚約者などを押し付けてくるだろうよ」


「そんなこと絶対させません。あのゲスどもに私の子をやるなんてあり得ない、ぶち殺す……いやむしろそうすれば…………(ぶつぶつ)」


あの家だけは、絶対に有り得ない。

私の中で、抑えきれない怒りがわき上がる。


「おいおい止まれ。人殺しそうな顔してるぞ? まだ会ったばかりなのにもうそんな入れ込んでんのかよ?」


私が奴等の殺害を練っていると王が若干引いた目で見てきた。


「当たり前です。レイアスも出来た子で勿論可愛いですが、リュートは私の初めての子に成りますから……まぁ貴方も会えば分かりますよ」


そうカミラやレイアスがいった通り世界一と言うのは、何ら誇大表現ではない。

それほど迄に目を引く美貌であった。

……まぁレイアスの反応には驚いたが。

あいつは普段何にも興味を示さないからな。

だからと言って、絶対にやらないが。


「へー、リュートって言うのか。楽しみだな、お前がそんなこと言うなんて。今度ここにも連れてこいよ」


「では今度連れて登城しますよ。」


「あぁ、頼んだ。こっちもシュトロベルに関しては抑えるようにする」


「お願いします。……では失礼します」


私は頭を下げ、部屋を後にした。



用事はすんだ、早く屋敷に戻って妻や子供と共に過ごしたい。

暫く仕事の方はボイコットしよう、うん。


私は城を足早に去った。

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