30話 ボス戦スタート!
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警戒しつつ扉を開けると、そこは天井の高い広間となっていた。
壁や床一面が純白である為か、どこか神聖さを感じさせる。
「……何もいないな」
「いやいや、リュート君。こう言うのは、中央に近付くとボス戦が始まるパターンだよ」
「そうか……なら、行くしかないかな」
俺達の入って来た扉以外に他に出口は無さそうだし、そのボス戦とやらに挑むのが手っ取り早そうだ。
一歩、一歩、広間の中央へと足を進める。
ユリアも大人しく俺の後ろにピッタリと着いてきているので、暴走するような事も無さそうだ。
そして、また一歩足を進めた時⎯⎯⎯⎯
『ズドドドーンッッッ!!!』
突如轟音を鳴り響かせながら、床が盛り上がり中から巨大な物体が姿を現した。
「……ゴーレム?」
「で、でかいねっ」
現れたのは、全長20メートルはゆうにありそうな巨大ゴーレムであった。
これまた床や壁と同様に、全身が純白で人のように手足がある。
「……”フレイム・ランス“」
先ずは小手調べだ。
俺の詠唱と共に、炎の槍が巨大ゴーレムへと放たれる。
「傷1つない……」
「……だな。見た目通り硬そうだ」
俺の放った魔法は当たりはしたが、別段効果は無さそうだ。
ゴーレムには、傷1つ残っていない。
コレは……兄様達は大丈夫かな?
まだ1発当てただけだがこの頑強さだと、向こうの戦力では相性は良くないかもしれない。
まぁ……兄様が何とかするだろうけど。
向こうは何と言っても、チートスペック天元突破な攻略対象者様達だし。
「ちょ、りゅ、リュート君! 何か、光が集まってっ、ビーム的なのが出そう何だけどっ!?」
「そう、だなっ」
ゴーレムの顔にあてる部分に、光が収束し此方へと放たれようとするのをユリアを抱えて右に避ける。
「な、なっ、何でお姫様抱っこ!!?」
ユリアが俺の腕の中で、ジタバタ暴れて降りようとするのを無理矢理抑え込み回避の為に走り続けた。
「何でって、お前足遅いし! この後何があるのか分かんないのに、大規模な防御魔法なんて一々使ってたら魔力が無くなるだろう!」
そもそも、攻撃は直線的で避けやすいのに、態々魔力を無駄にする必要はない。
避けやすいと言っても、威力はその体に見合い強力だ。
防ぐとなると、それなりの魔力を使う事になる。
俺は魔力が平均よりかなり高いが、今は後の事を考えて温存するべきだろう。
その点、俺はアシュレイと普段から頻繁に鍛えているので、体力的にはユリアを抱えて走り続けても問題ない。
「だ、だからって」
「後、お前ちょっと重い。引き込もってばかりいないで、少しは運動しろよ」
先程から感じていたが、ユリアは初めて会った時のような病的な細さは無くなり、少し肉が付いてきたように思う。
俺が思ったよりも、少し重かった。
まぁ、あんだけ俺の作った菓子をボリボリ食べてれば当然か。
……あんだけ食べて、全然太らない母様がおかしいんだよな。
母様はそれ以上の量を食べているのに、見た目は全く変わらない。
「ヒドっ!? それ今言わなくてもっ!」
「口閉じてろ、舌噛むぞ」
「そんなの、っぅ!?」
「言ったそばからかよ。ほら、もう黙っとけ」
本人も気にしていたのか、ユリアは更に文句を言おうとして舌を噛んだ。
俺はそんなユリアに呆れながら、攻撃を避け続けた。
「“フレイム・インパクト”」
攻撃が止むと、すく様先程より威力の強い魔法を詠唱する。
派手な轟音と共に、ゴーレムの体が崩れた。
「やった!?」
「いや……まだだ」
今度はダメージを与える事は出来たが、自己修復能力があるのか直ぐに元の姿へと戻っていった。
また光の収束が始まる。
面倒な機能を付けやがって。
これはアレを使うしかないかもな……。




