29話 不安
ちょいラブコメチック??
オズワルド達が今後の方針を決め移動を始めた頃、俺達は5メートルはありそうな白く巨大な扉の前までたどり着いていた─────
「何だか、まさしくって感じの扉だな」
「……うん、ボス戦っぽい感じたよね」
此処に辿り着くまでに、多くの魔物に出会いはしたが、難なく倒す事が出来た。
だが、この中に在るものは、今までの雑魚とは違う。
先程までとは、比べ物にならない位の強い魔力を感じる。
ユリアもそれを感じているからか、少し緊張しているようだ。
「ユリア、お前は俺の後ろで「よしっ、任せてっ! リュート君の事は私が絶対守るからっ!!」……おい、お前はさっきの俺の話を聞いてなかったのか?」
後ろで大人しくしていろと、続けようとした俺の言葉を遮り、拳を固く握り宣言したユリア。
その瞳は、覚悟を決めた戦士のようだ。
いや……守るって……逆だろう。
不本意だけど、俺の立場ってお前の騎士だよね?
というか、さっき大人しくしてろって言ったばかりだろうに。
「ボスは、結構苦戦するような感じだったと思うんだよね。リュート君には傷1つ、死んでも付けさせないから!」
死んでもって……何で命かけてんだよ。
ユリアの思考は時々ぶっ飛び過ぎて、とんでもない結論が導き出される。
俺には予測不能だ。
「あー、即ち俺の話は全然聞いてなかったと……もう1度言うけど、お前は俺の後ろで待機、OK?」
まぁ、その心意気は……多少認めてやらない事もないけどね。
俺はポンと、ユリアの頭に手を乗せると髪をぐしゃぐしゃにした。
「え、でも、私がリュート君を巻き込んだんだし。もし、もしもリュート君が怪我したら……」
不安そうな目で俺を見るユリア。
一応、巻き込んだと言う自覚はあるらしい。
先程のように、無双やらチートやらとおふざけで言ってる訳じゃないようだ。
……そう言えば、コイツ最初は1人で行こうとしてたんだっけ。
「お前、それ誰に言ってんの?」
俺はこの国の魔眼持ちだぞ?
怪我だって、お前と違って魔法で治療出来るから。
「でも、でも、」
それでも、ユリアが不安そうにするから。
「たかがダンジョンのボスごときに俺が負けるなんてあり得ない⎯⎯」
俺は全然その程度大した事がないのだと、不敵に笑った。
「⎯⎯だから、黙って俺に守られていろ」
まぁ、実際俺がこの程度の相手に負けるなんてあり得ない。
ユリアが、俺を守るとか百万年早いから。
「なっ、なっ!? リュート君のたらしっ!」
ユリアは俺の一言にボンと音をたてるように一気に顔を赤く染め、首や耳まで赤くなった。
「いや、別にただの事実だろ」
別にそんな変な事言ってないのだか?
俺は一応お前の騎士だから、引き受けたからには職務は果たさなければならない。
「うぅ、罪作りっ! にぶちんっ!!」
ユリアは赤く染まった顔で、違う違うと首を横に振り地団駄を踏んだ。
いや、俺は鋭い方だし。
お前にだけはそれ言われたくないんだけれど。
「はいはい。ちゃんと、後ろにいろよ」
俺はわめきたてるユリアを置いて、巨大な白い扉に手をかけた。
しかし安心させようとしたのに、今度は違う方向に動揺しだすとは……。
やはり、腐王女は意味不明だ。
リュート君が、攻略キャラ的な台詞を言うなんてっ!……(笑)
※この話は恋愛は未満です。