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28話 別√① sideオズワルド

暫くあーるの更新が増えるかも…

此方も後少しでこの章で書きたかったとこまで、いけそうなんですよね。

そこまでいったら、更新ペースが増し増しになるかと。

 

「リュートっ!!!」


レイアスのリュートを呼ぶ声が響く。

けれど、転移陣が発動し、無情にも2人とは分断されてしまった。


「ここは……」


眩い光が収まり、目を見開くと先程とは別の空間へと飛ばされていた。

黒い壁に黒い床、悪趣味で気分が悪い。


「どうやら、ユーリア達は俺達とは別の空間へと飛ばされたようだな」


もしかしてと期待をしてみたが、やはり2人とは完全に分断されたようだ。


「……そうみたいだね。此方も早いところ出口を探して、2人と合流しよう」


レイアスはリュートへとのばしていた手を下ろすと、此方を振り返って今後の方針を話した。

その表情に特に心配や不安はなく、いつもの薄ら寒い笑みを浮かべている。


「そうだな、それが最善だ」


2人の事は心配だが、リュートがついていれば安心だろう。


「…………なんで⎯」


「アシュレイ?」


アシュレイがレイアスを睨みながら、ぼそりと何かを呟いた。


「何でリュートの方に行かなかったんだ?」


「何でと言われても……別々の魔法陣で飛ばされてしまったからね」


レイアスは困ったなと、苦笑いを浮かべた。


「……あんたなら、向こうの魔法陣に入れただろう。途中であんたの足は止まってた」


けれど、アシュレイはそんなレイアスの答えに不満だったらしい。

更なる追及をした。


ほう……アシュレイも気付いていたか。


レイアスはリュート達の乗る魔法陣に足を踏み入れようとした瞬間、足を踏み入れる事を躊躇した。

結果、リュートとユーリアは2人だけで飛ばされた。


理由は……まぁ、分からない事もないがな。

俺も自分の立場であったなら、そうしたであろうし。


「まぁ、此方には王太子殿下がいらっしゃるしね……戦力的に考えて、明らかに向こうの方が戦力過多だし」


涼しい顔で、建前を言ってのけるレイアス。

アシュレイも渋々ながらこの理由には納得出来るのか、引き下がった。


ここはアイツの顔を立てて、俺もそういう事にしておいてやろう。

全く、面倒な性格をしている。


「……これは貸しだからな」


俺はレイアスだけに聞こえるよう、小さい声で呟いた。


「何が? だって、リュー達は大丈夫だろうけど、僕が此方につかないとオズは死ぬ可能性が高いだろう? ほら……弱いし?」


しかし、レイアスから返ってきたのは嘲笑で、あからさまに俺を煽っていた。

建前で隠した本当の理由を、レイアスは認める気はないらしい。

苛立ちを押さえられないでいる。


「……お前、それは俺に喧嘩を売ってるのか?」


安い挑発だというのは分かっている。

だが、ムカつくものはムカつくのだ。


「喧嘩も何も……事実だろう?」


「そう言う事は、俺に試験で勝ったら言うんだなっ!」  


「へぇ……じゃあ、今証明してあげようか?」


もう売り言葉に買い言葉だ。

本当はレイアスが手を抜いて、自分を俺の下に置いているのは気付いている。

レイアスの言うことは、あながち間違っている訳ではない。


「殿下方、落ち着いてください。今は緊急事態ですよ」


一触即発の空気の中、凛とした声が俺達を止めさせた。


「……すまない、ロゼアンナ嬢。確かにそんな場合ではなかったな……レイアス、話はここから出たらゆっくりするぞ」


「はいはい……悪いね、ディール嬢」


ロゼアンナ嬢の言う事は最もだと、一先ず俺達は矛を収めた。


実際問題、この隠し部屋の難易度によってはリュート達よりも俺達の方が危ない。

気を引き締めて行かねばならないのに、言い争っている場合ではない。


「じゃあ、僕が先頭に立つから。オズ達は後ろをお願い」


「……あぁ」


そう言って前を歩き始めたレイアスに続いて、俺達も後ろを歩き出す。


全く素直じゃない奴だ。

人に喧嘩までふって誤魔化そうとして。

……もっと、自由に生きればいいものを。

アイツは認めようとしなかったが、親しい者から見ればすぐに分かる。

レイアスは、俺の為に此方に残ったのではない。

まぁ、ほんの少しは考えていたのかも知れないが。


「……アシュレイも戦闘に備えておけ」


「はい、殿下」


俺の一歩後ろを歩くアシュレイに声をかけると、アシュレイは剣を構えて警戒態勢をとった。


目の色も髪の色も母親譲りなのであろう、アイツと似たところはあまりない。

だが、こうして剣を握った時は、やはり兄弟なのだと思った。

どことなく、雰囲気が似ている。

そして隠しているようだが、アシュレイはレイアスの事を兄として認めているようだ。

2人とも素直じゃない所も、よく似ていた。



レイアスは、俺の為に此方に残ったのではない。

⎯⎯この半分だけ血の繋がった弟を守る為に、此方を選んだのだ。


「本当に……素直じゃない」


こんな面倒臭い兄弟に囲まれて、リュートも大変だと俺は思ったのであった。




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