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26話 隠し部屋

 

「”レーザー・キャノン““レーザー・キャノン”もう1発!”レーザー・キャノン“っ!!」


次々と魔物を壁ごと消し炭にして、ダンジョンの奥底へと潜っていくユリア。

ロゼアンナも流石に諦めたのか、心配そうにしながらもすぐ後ろをついていくだけになっていた。


「……本来、光属性は攻撃特化じゃないんだけどね」


そんな狂戦士(パーサーカー)と化したユリアを見ながら、兄様は遠い目をして呟いた。


「……殿下は、攻撃魔法は得意ですけど、治癒魔法はからっきしですからね」


光属性と言えば、治癒魔法が最も例に上がるのにユリアは相性が悪いのかてんで使えない。

ユリア自身の固有魔法が原因なのか、本人の資質の問題なのか分からないが得意なのは威力が強過ぎる攻撃系の魔法が主だ。


「俺も話にはある程度聞いていたが、この目で見るまではここまで極端だとは思わなかった」


オズ様はユリアのはしゃぎっぷりに若干引き気味であったが、今はユリアの戦闘を真剣な目で観察している。


「なまじ攻撃力が高いからどうにかなっているが、あの闘い方は……危ういな」


アシュレイもオズ様の意見に、同意するように頷いた。


ユリアの暴走のおかげか、俺達は既に予定よりも深くダンジョンに潜っている。

その影響で、出没してくる魔物達も徐々にレベルが上がっていた。

要は、手強くなってきていた。

洒落にならない攻撃が、向こうから発せられる事も勿論ある。

その場合、通常なら防御系の魔法や回避、優秀だと防御魔法を同時展開する事を選ぶのだが、ユリアは違った。

相手の攻撃に、それを上回る攻撃を放って消し去る。

その闘い方に、防御や回避という文字は存在しない。

まさしく、狂戦士(パーサーカー)の闘いだ。


「……ユーリアって、完璧人間系じゃなかったっけ?」


明らかに偏ったパラメーターに、俺は何度目になるか分からない疑問を1人呟いた。










◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆











「あれ? ここって地図になくないですか?」


「隠し部屋?」


ユリアが次々に壁に穴を開けて、風通しのよくなったダンジョン。

地図は事前に、頭の中に入ってる。

けれど、先程のユリアの攻撃で出現した部屋は地図に存在しなかった。


「そのようだな。だがもう時間だし、上がりにするぞ。寧ろ、深く潜り過ぎだ」


「ですね」 


「恐らく……いえ、確実に私達が1番攻略していますね」


オズ様の意見に、アシュレイやロゼアンナが同意して頷く。

勿論、俺や兄様も同意見だ。

これ以上潜る必要はないし、隠し部屋なんて態々リスクのある選択を選ぶ必要はない。

けれど、そんな俺達に対し、納得がいかないとばかりに不満気な顔をする者が1人いた。


「……ほら、殿下。帰りますよ」


そうして、ユリアに手を伸ばした瞬間だった⎯⎯


「少しだけ! 少しだけですからっ!!」


俺の差し出した手は空を切り、ユリアは隠し部屋へと飛び込んだ。


「ユリアっ!?」


「ユリア様っ!!?」


「ユーリアっ!!」


俺やロゼアンナ、オズ様がユリアの名前を叫び、全員で後を追って部屋へと足を踏み入れる。

その瞬間⎯⎯⎯


「なっ!? これは転移魔法陣っ!!?」


全員が部屋へ足を踏み入れた瞬間、床が光輝き始めた。

浮かび上がった陣は2つ。

魔導具をとおして見えるそれらは、別の場所へと転移させるものであった。

恐らく、入ってきたパーティーを分断する為のものだろう。

陣は発動してしまった、もう回避する事は出来ない。

そして、1番先に部屋へと入っていたユリアだけ、俺達とは別の陣に乗っているのが目に見えた。


「ユリアっ!!」


「リュート君!!」


ユリアが俺に向けて、手を伸ばす。

俺は咄嗟に、その陣へと体を滑り込ませてユリアの手を掴んだ。


「リュートっ!!!」


転移させられる瞬間、兄様の俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。





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