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25話 腐王女無双

今日でこの話が始まってから一周年ということで。

仕事ミスって鬱々としながらも、ギりで更新です!


 

「ユリア様、いいですね? 私達より前には、絶対に出ないようにしてくださいね?」


そして、やって来た実習当日。

ユリアは朝からロゼアンナに、何度も言い聞かされていた。

安全な場所から、飛び出さないようにと。

端から見ると、出来の良い姉がちゃらんぽらんな妹の面倒を見ているようだ。

ロゼアンナもユリアを愛称で呼んでいるし、すっかり仲が良い。


子供じゃあるまいし……まぁ、言いたくなる気も分かるけど。


ユリアはロゼアンナの言葉に元気よく頷いているけれど、目は爛々と輝かせている。

前世を含めると、精神年齢はかなり高い筈なのだが、ユリアは何故か年相応の子供のように見える。

俺もたまに体に引っ張られるような時もあるが、ユリアはしょっちゅうだ。


ユーリアって、落ち着いた完璧美少女設定じゃなかったっけ?

少し目を離すと腐教活動に勤しんだり、今回みたいに我が儘言って聞かなかったりで、片鱗すら感じられなくなってるんだけど。

元の資質はどこに行ったのかな?


「……アレ(・・)言うこと聞くと思いますか?」


「はは……絶対聞かないだろうね」


2人のやり取りを遠い目で見ながら、隣に問いかけると、兄様は苦笑いを浮かべた。

パーティーのメンバーは、同学年からは予想通り俺とユリアとアシュレイ、リオナとスール。

上級生枠で兄様とオズ様、そして2人の従者達で大所帯となった。

この辺りは王族やら、魔眼持ちやらがいるので当然の流れであろう。


「ですよね……」


俺はため息をつくと、渡されたダンジョンマップに目を落とした。


何はともあれ、中身が腐女子になって残念になってしまったのは間違いない。

もう深く考えるのは止めて、どう被害を抑えるのかに力を注ごう、うん。

それが、建設的だろう。


「……ぐふふ、無双、無双!」


何か横からぼそぼそ聞こえるけど、もう何も言うまい。

言って駄目なら、実力行使だ。


「……このパーティーで、大丈夫なのか?」


背後から聞こえたアシュレイの言葉が、妙に頭に残った。


……大丈夫であることを、俺は心の底から祈っているよ。









◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆













「“レーザー・キャノン”」


ドカーンっと、輝く光線と共に派手な音をたててダンジョンの壁が崩れ落ちる。


「ユリア様っ! そんなに先行しないで下さい!!」


魔物が出る度に過剰攻撃ともいえる魔法を繰り放ち、ずいずい先へ進んでいくユリア。

その度にロゼアンナや周囲に止められて後ろに下がるが、魔物が現れるとまた前へ出てくる。


「実習だと言うのに……リュート達にはすまないな」


生き生きと、次々に魔物をほふってくユリアを見て、オズ様が本気で申し訳なさそうな顔をした。


気まずくなる気持ちも分かる。

これはあくまで、ダンジョンに潜って実際の戦闘を経験しようという目的なのだ。

それをユリアばかりが戦闘に参加していては、他のメンバーの経験にはならない。

普通は多少譲り合ったり協力をするものだが、ユリアには空気を読む力が足りていなかったようだ。


「……気にしないで下さい、オズ様。分かってましたから……こうなるの」


「……俺も薄々は。それに軍の訓練に参加しているから、別に大丈夫です」


俺とアシュレイが、オズ様に気にしないようにと言った。


うん、分かってたから。

こうなるだろうなって、ことは。


俺達の視線の先で、ユリアは楽しそうに魔物達に魔法をぶつけていた。

その笑顔はここ最近で、1番輝いていた。


「ふふふ、チート無双!」


……本当に、この先大丈夫だろうか?


正直、不安しかなかった。

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