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19話 眼鏡


「ついに、リュー君にもお友達が出来たのねっ!」


昼食会を終え帰宅後、母様にその日の事を報告した。

すると案の定母様は眼を輝かせて、我が身の様に喜んだ。


「まぁ……」


俺は頬を若干引きつらせながらも、目も合わせずに頷いた。


友達……って、言ってもいい、よね?

毎日会話してるし……魔法もかけてるし。

……これで、もしアシュレイが友達とか微塵も思っていなかったら死ねる……王女でさえ友達出来たのに……アレ以下とか……。


「ふふっ! 嬉しいなぁー、リュー君の学校での初めての友達だもんね! 今日はお祝いだね、お祝い! ねっ、レイ君っ!!」


「そうですね、コレ(・・)も今日届いたところですし、丁度いいんじゃないですか? 記念のプレゼントって、事で」


「ナイスタイミングねっ! 結構注文をつけてしまったけれど、こんなに早く出来上がるなんてっ!」


そんなネガティブ思考に陥っている俺とは反対に、母様と兄様は2人で何やら盛り上がっている。


「…………コレ(・・)?」


俺は2人の会話に引っ掛かりを覚えて、首を横に傾げた。


何だろう……そこはかとなく嫌な予感がするのは俺の気のせいだろうか?


「前に言ったよね、リュー? ほら、僕の眼鏡と同じ魔導具を作らせるって」


兄様が人差し指で、自身の眼鏡を指差した。


「眼鏡……あぁ、賊の討伐の時にそんな話をしましたね」


確か、魔力の色が見えるんだっけ……?


便利だと言ったら、今度作らせると兄様は言っていた。


「そうそう。それでね、どうせならデザインにもこだわろうって事になって、レイ君と私で考えて作って貰ったんだよ!」


母様が生き生きとした顔で俺に言った。

その顔は凄く、楽しそうだ。


「……はぁ……」


母様の趣味……。


俺の脳裏には、過去に着せられたフリフリキラキラのドレス達が写し出される。

そういった黒歴史から、母様達の考えたデザインと聞くと嫌な予感しか浮かばない。


「……それがコレだね。僕達からリューへのプレゼントだよ」


兄様は懐に手を入れると、銀製の丸い形のケースを取り出した。

ケースにはウェルザックの家紋が精緻に刻まれており、これだけでも相当な金額になりそうな代物だ。


「ありがとう、ございます……?」


俺は恐る恐る受け取ると、ケースを開いた。

2人からの贈り物だ、断る理由はない。


「……これは、……………モノクル?」


丸いガラスに此方も銀で出来た細いチェーンが付いている。

チェーンも只の鎖ではなく、所々小さな琥珀や深紅の魔石が埋め込まれて凝っていた。


「……右眼用、ですか」


「あぁ、シュトロベルンの事もあるからね。それには右眼の魔法陣を、分かりにくくする効果が付与してあるんだよ」


「……実用的ですね」


母様の血筋を、シュトロベルンに悟られるわけにはいかない。

今までは気付かれない位の微量の魔力で固有魔法を誤魔化してきたが、そう言う意味では一石二鳥で良いかもしれない。

だがしかし⎯⎯


「……別に両眼でもよかったのでは?」


モノクル……確かにデザインは綺麗だが、前世で培った感覚からすれば厨二感が半端ない。


もし腐王女に見せたら……


“厨二病乙! コレを機に腐男子道も私と一緒に歩もうよ!”


とか、言われそう…………それは絶対嫌だな。


「えー、リュー君にはこっちの方が絶対似合うよ! 絶対可愛いよ!」


「……母様、僕は別に可愛さは求めてはないです」


普通が良いんです、普通が。

兄様達に弄られる事はないんだろうが、腐王女に弄られるなんて俺のプライドが許さない。


「ほらっ、着けて、着けて!」


「はぁ……」


母様は早く早くと、俺に迫った。


本気か……


「まさか、着けないなんて言わないよね、リュー?」


「……はい」


なおももたつく俺に、兄様が笑顔で圧力をかけた。


うん、兄様には逆らわないのが正解だ。

…………後が本当に怖い。


俺は渋々手の中のモノクルを掛けた。


「似合う、似合う! 流石、私とレイ君の見立てだね!!」


「そうですね、カミラさん」


モノクルを掛けた俺の姿を見て、兄様と母様は満足そうに頷いた。


「……蒼、……赤……?」


「見えた? 不思議なものだよね? 僕も初めて見た時は驚いたよ」


モノクルの薄い硝子を通して見た瞬間、世界が蒼と赤に色付いた。


「……これが、魔力の視覚化……綺麗ですね」


デザインはアレだったが、効果は素晴らしい。

兄様は蒼の眩いオーラみたいなのを纏っており、母様は淡い赤色のオーラを身に纏っている。

輝きの強さは、魔力量が恐らく関係しているのだろう。

他の人達も見て、是非とも検証してみたいものだ。


「気に入ってくれた?」


「えぇ……」


学校には着けていかないが、今度街中で着けて歩いてみよう。

母様達に悪意は無いんだ。

折角作ってくれたのに、着けないのは悪いだろう。


「今度街に行く時に「勿論、明日から毎日学校にも着けて行くよね、リュー?」…………はい」


しかしそんな俺の考えは読まれていたようで、言い切る前に逃げ道を潰されてしまった。

これで学校に着けていかなかったら、後で2人からお仕置きが待っていそうだ。

あの黒歴史を2度と繰り返す訳にはいかない。


……よし、装飾に使われている魔石で透化の魔法を付与しよう。

それで、腐王女の前では見えないようにする。

他人に見えなくても、着けてれば良いんだ、着けてれば。


その晩、俺は徹夜で作業したのであった。





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