13話 再戦
今回はちょっと熱血系です。
前回の模擬戦から、1週間後。
遂にこの時がやって来た。
「今日は来てるな……」
あれから1週間程休んでいたアシュレイも、今日は授業に顔を出していた。
よし、まずは謝罪とそれからもう1度戦って貰うように──
「おい」
「は、はい!?」
目的の人物であるアシュレイに先に声をかけられるとは思わず、俺は驚きでどもってしまった。
な、何だ!?
お前とは2度と組まないとか、そんな感じなのか!?
「もう1度、俺と勝負しろ」
俺の心配を余所に、アシュレイの口からは予想外の言葉が紡がれた。
「……え?」
驚きで特に返事も返せずに、俺はアシュレイを凝視した。
「……今回は、前のように舐めた真似はさせねぇ。お前がやる気がないなら、こっちが本気にさせるまでだ」
アシュレイはそう言って、呆けている俺に木剣を投げ渡した。
……あぁ、確かにユリア、お前の言った通りだったな。
“アシュレイ様は強かったんだよ。そんなもので折れないくらいに、強かったの”
俺はユリアが以前言っていた言葉を思い出した。
「えぇ、今度は僕が勝たせてもらいます」
俺は剣を受け取って、アシュレイにそう告げた。
アシュレイは俺の言葉を聞くと、何も言わず所定の位置についた。
あまり表情は読めなかったが、その口角が少し上がったように見えた。
「強いね……俺にはきっと無い強さだ」
敗北を知り、それでも折れないアシュレイ・スタッガルドは強い。
俺には無い強さだ。
俺が決して持ち得ない強さだ。
でも、だからこそ──
俺も負けられない、そう強く思った。
◆◆◆◆◆◆◆◆
「始め!」
教官の声とともに、俺達の再戦の火蓋は切って落とされた。
周囲の生徒達も先週の事があるから気になっているのか、皆手を止めて戦いに注目している。
「行かせて貰います!」
前回とはうってかわって、俺から先に攻撃を仕掛けた。
バシンッッと、木剣同士がぶつかり合う音が修練場に響いた。
「軽いなっ!」
体格や体重に比例して、俺の攻撃は軽い。
鍛え上げられた肉体を持つアシュレイが、難なく押し返した。
「っ!?」
俺は前回同様に威力を逃がそうとしたが、予想以上のパワーに逃がしきれずに数歩後ろに下がった。
……力が増してる?
この1週間で、また強くなったのか!?
俺はアシュレイの追撃を受けながら、その太刀筋を観察した。
恐らくこの1週間、義父である将軍によってみっちり鍛えられたのだろうが、それを差し引いてもこの成長具合は異常だ。
おいおい……剣術チートは伊達じゃないな。
この伸び方は、おかしいだろ!
俺はアシュレイの成長に心底驚いた。
パワーもスピードも、以前とは比べられない程に良くなっている。
以前荒いと感じた太刀筋も、今は前よりも洗練されて鋭くなった。
これは……余裕ぶっこいてたら、俺も危ないな。
「まだまだ!」
俺とアシュレイは激しい打ち合いを繰り返す。
俺は守りに徹しながらも、アシュレイの隙を窺う。
強くなったとはいえ、まだまだ甘さは残っている。
──そこを、狙わせて貰う!!
「グっ!?」
「防いだ!?」
完全に入ったと思った攻撃が、アシュレイに防がれた。
……クソッ! いけると思ったのに。
「前と同じだと思うなよっ!?」
「くっ!」
アシュレイに、力の限り込められた太刀を打ち込まれる。
攻撃を受けた腕が、ピリピリと痛む。
まだ10歳の子供とは、思えない力だ。
これは本当に手強いな……。
俺は額から流れる汗を腕で拭い、剣を構え直した。
木剣による激しい打ち合いが再び開始された。