表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
129/175

11話 腐は伝染する

ちょっと、息抜き回。

前々から書きたかった小話です。

タイトルからも分かるように、コメディ回です。


()には確かに、罪がある……罰せられるべき、罪が……”


兄様は、どういう意味で言ったのだろうか?

シュトロベルンの血をひいているから言ったのか?


そう言った兄様に俺は意味を問いただしたが、はぐらかされてしまい答えは得られなかった。


……兄様は、ゲームのシナリオからは大分外れている。


ゲームでは死ぬはずだった母様は生きているし、実の父親に対しても執着している様子もない。

けれど、俺の心に生まれた不安を拭い去ることが出来ない。


罰せられるべき罪って……一体何なんだ?


また放課後に、と兄様と別れてからもずっとこの事が俺の頭から離れなかった。


俺は……何か思い違いをしているのか?


けれど、何が違うのかが分からない。

きっと何度聞いても、兄様が俺に教えてくれる事はないだろう。

兄様はどこか人に対して一線を引いている。

自分の心の深いところには、誰にも触れさせようとしない。


──俺が思考を巡らせている、その時だった。


「リュ、リュート様!」


突然呼ばれ自分の名前に、視線を上に向けると息を切らしたスールが切羽詰まった様子で此方に駆け寄ってきた。


……一体どうしたと言うのか?


「助けてください! リオナさんが!!」


余程急いできたのか、息継ぎもしないままにスールは俺に必死で助けを求めた。


何!?

リオナに何かあったのか!!?


俺はすぐに事前に渡していた魔導具からリオナの位置を割り出し、空間魔法で一気にその場所まで跳んだ。


「リオナ! 無事かっ!?」


リオナやスールには、ユリアの面倒を頼んでいた。

もしかしたら、ユリアを狙う暗殺者に危害を加えられたのかも知れない。

無事であってくれと、そう切に願った。


「リュート様!? もう、お戻りになったんですか!!?」


「リュート君!?」


突然部屋に現れた俺に、ユリアとリオナはビクッと肩を揺らすと何かを背後に隠した。


「? ……スールに助けを求められたんですが……賊は何処ですか?」


俺は疑問に思いながらも、スールの血相の変えようを思いだし周囲を警戒した。


「賊? そんな人は来てないよ?」


しかし俺の言葉に、ユリアがキョトンと首を傾げた。


……どういうことだ?

何で、スールはあんなに慌ててたんだ??


「ですが、スールがリオナさんが大変だと……」


「え、わ、私ですか?」


俺が本当に大丈夫なのかと、リオナに目を向ければ頬を高揚させて目を逸らした。


……あれ?

何か嫌な予感が…………凄い嫌な予感がする。


目を合わせた時に、頬を高揚させて目を逸らされる事は今迄にも経験したことがある。

同年代や年下の令嬢などは、大抵その反応だ。

だが、今リオナに向けられた視線は、それらとは大きく違う気がした。


「…………」


俺は無言で、リオナ達の背後に素早く回ると、先程2人が隠した物を奪い取った。


「……まさか、……そんな!」


そんな馬鹿な、俺が目を離していたのは数時間の筈だ。

今迄、そんな前兆を感じた事はなかった。


そうならないように、気を配っていたのに……。


「……申し訳ございません、リュート様。ユーリア王女を止めることが出来なくて……」


スールが申し訳なさそうに頭を下げた。


スールには、前以て腐王女の趣味や嗜好に対して打ち明けており、万が一の時は周囲に広がらぬようにフォーローを頼んでいた。

こうなってしまった責任を感じているのだろう。

けれど、スールは悪くない。

腐王女を止めるなんて、スールには荷が重すぎたのだ。

俺でさえ、振り回され続けているのだから。


「……それで? 申し開きを聞こうか、このドグされ腐王女様?」


「ぃ゛い゛い゛だあ゛ぁーーー!!?? 頭゛わ゛れる゛ぅ!!」


俺の指が思いっきりめり込ませた腐王女は、悲鳴を上げた。

今回は手加減をほぼしてないに等しいので、相当痛いだろう。


けれどこの程度では、俺のこの心の痛みは晴れない。

俺の心はもっと傷付いている。

今回ばかりは、絶対に許さない。


「俺は自重するように言ったよね? その腐った脳味噌は、人語を理解してなかったのかな? かなぁ?」


「ご、ごめんなさ゛い゛!! どう゛して゛も゛、腐レンドがほ゛しか゛ったんです゛!!」


腐王女も今回ばかりは俺が譲る気がないと悟ったのか、すぐに半泣きで許しを乞うた。


「まぁ、友達が欲しいのは分かるよ? けど、態々リオナを腐らせる必要はあったのかな? 俺が怒らないとでも思ってた? ん?」


俺はリオナ達から没収した腐王女自作の薄い本を、魔法で塵1つ残さず燃やし尽くしながらも手を弛めずに言った。


「りゅ、リュート様、怒りをお納めください! これはあくまでも、フィクション、偽物です。現実とは別物です。それにこの本は大変素晴らしいものです!! リュート様も、お読みになれば、きっと分かってくれる筈です!……ぐふ……腐っ」


リオナは腐王女を庇うために色々言っていたが、最後の腐王女と全く同じ笑い方が全てを台無しにしている。


「…………」


清楚で、大人しかったリオナ……

無口だったけど、腐ってなかったリオナ……

妹思いの優しかったリオナが……


「……腐ってしまうなんて」


俺は今、本気で泣きたいよ。


「リュート様、僕も同じ気持ちです」


スールは目に涙を浮かべながら、ハンカチを俺に渡した。




その日リオナは腐って、俺達2人は大切な何かを失った。


新連載始めましたー!

乙女ゲーム、チートをキーワードに三作書きましたが、どれも違ったテイストに出来たと思います。

興味があったら、是非覗いてみてくださいm(__)m

リュート君が、最近不敏属性を手に入れてしまっているw

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ