07話 本気には本気で
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「お前も、お前も俺を愚弄するのか!? リュート・ウェルザック!!」
アシュレイは、本気で怒っていた。
初めて会った時とは違い、それは俺自身に対して向けられた怒りだった。
「いえ……そのようなつもりは……」
俺は歯切れ悪く言った。
愚弄したつもりは、勿論ない。
寧ろ、自分の中ではアシュレイに最大限配慮したつもりだった。
「……もういい。お前にとっても、アイツにとっても、所詮俺程度相手にする価値もないという事なんだろ」
「待て! アシュレイ・スタッガルド!!」
アシュレイはそう吐き捨てると、教官が止めるのも聞かずに、演習場を去った。
「………………」
俺はアシュレイが去っていくのを、ただ呆然と見詰めることしか出来なかった。
「…………リュート君」
名前を呼ばれて振り向くと、心配そうな顔をしたユリアやスール達がいた。
周囲もアシュレイの突然の行動に驚いて、ザワザワと騒いでいる。
「リュート様、授業も終わりましたし、移動しましょう」
「えぇ…………」
スールに促され、俺達は好奇の視線の中演習場を後にした。
◆◆◆◆◆◆◆◆
「……さっきのは、リュート君が悪いと思うよ?」
空き部屋に入り、スール達が茶の用意をしに部屋を出てくと、ユリアが唐突にそう言った。
「……俺の中では、配慮したつもりなんだけど」
初日にアシュレイと握手をした時、その手は所々硬く日常的に剣を振っていることが分かった。
先程の構えや剣技といい、並々ならぬ努力を積んでいるのは目に見えていた。
対して俺は、剣の指南を事前に受けた事はあったが、そこまで剣に時間や労力を費やしていた訳ではない。
そんな俺がアシュレイに勝利することは、アシュレイにとって屈辱的なのではないだろうか?
俺はこれ以上アシュレイとの関係が拗れる事を避けた。
「まぁ、リュート君の言ってることも間違ってはいないと思うけどね。私も止めなかったし……実際、それで折れちゃう人が大半だろうしね」
「なら――」
「――でもね? アシュレイ様は強かったんだよ。そんなもので折れないくらいに、強かったし真剣だったの。そういう人には、向き合わないと駄目だよ。本気には本気で返さないと」
ユリアが俺を諭すように言った。
「……腐王女に、諭される日が来るなんて……はぁー」
散々、常識がないと言ってきたユリアに、常識的に諭される日が来るなんて。
本気には本気で、ね……。
そんなに強いもんなのかな……、アシュレイ・スタッガルドは。
前世で俺は初めは無自覚に、けれど後には無関心に。
俺は容赦することなく、周囲のプライドや人生を手折ってきた。
誰一人、耐えられる者はいなかった。
「え、腐ってるのは関係無くない!? 腐女子バカにしないでよ! わりと、心は清らか何だからね!?」
ユリアは心外だとばかりに意味不明な事を言った。
「清らかって……腐ってるんだから、正反対じゃない?」
「男同士の恋愛のみだからそれ!」
「何がのみだ。それが最大の問題だろ。しかも、周囲の人間をそれに当てはめるとか、セクハラだろ、セクハラ」
しかも、お前がセクハラしてる相手は中身別にして8歳児だから。
ヴィジュアル的に色々アウトだから。
「大丈夫! 私の見た目は、10歳児だから! ロリショタは無罪だから、大抵のことは許されるから!!」
「いや俺が許さねぇよ!!?」
ユリアのあまりの暴論に、俺はユリアの頭を叩いて突っ込んだ。
「えぇー」
えぇー、じゃないよ本当……。
「アシュレイ・スタッガルドとは……もう厳しいかな?」
ただでさえ印象は悪かったのに、俺は今回で決定的に間違えた。
それに……、アシュレイはお前もって言ったんだよな……
つまり、俺以外にも同じことをした奴がいると言うことだ。
そして多分それは……。
「え、何で? 次の授業の時、容赦なくこてんぱんにすればいいじゃん!」
俺が暗く落ち込む中、ユリアは何でもないようにのほほんと言った。
「……もう、無理じゃないか? 今更だろ……」
「……そこがリュート君のダメなことろかもね。合理的に考えすぎるところ。私達はまだ8歳、10歳の子供だよ? もっと、シンプルに考えればいいよ。間違ったらやり直せばいいし、謝ればいい。子供の好き嫌いなんて、わりと簡単に変わったりしちゃうんだから、そこはもっと気楽にいけばいいよ!」
「……そんなもんか? 軽くないか?」
俺にとって好き嫌いは、簡単に変わるもんじゃない。
嫌いには嫌いの、好きには好きの確固たる理由がある。
1度とことん嫌ったら、それが覆ることはない。
「寧ろ、リュート君が重いよ。早熟なんだろうけど。まぁ、そこがいいところでもあるんだけどね?」
多分俺よりユリアの方が、人の感情の機微には聡い。
……癪だけど、此処はユリアの案に乗るか。
「……そう。……来週、またアシュレイと組んでみるよ」
「うん! 頑張っ!!」
本当に軽いな。
でも……まぁ、ぼちぼちやってみますか。