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水の月 三景
「水粉」
水の粉
静けさに舞い
白く煙る
昼下がりの町
「遠雷」
低く唸る空の音に
身を伏せ耳を伏せ
震える猫
しっとり湿り気を帯びた
冷たい毛並み
そっと撫でても
怯えた眼差しで見上げるばかり
ただひたすらに
雷獣の唸り声が
過ぎ去ることを待つばかり
「去りし日の歌」
懐かしい歌響くとき
心は雨に濡れながら
在りし日へと駆けていく
楽しい記憶がなぜか痛く
嬉しい記憶がなぜか苦い
音は雨空へと上っていき
心は雨垂れに打たれてる
雨は音を飲み込んで
心ばかりが濡れそぼる
歌に取り残されて
ひやりと冷えたそのままに