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小説家になろうとの出会い

 男の名前は小山田二郎。

 もうすぐ40を迎えようとするしがないサラリーマンだ。

 都心郊外に住む小山田は、今日も通勤に二時間以上かけて勤務先へ向かっている。

 職場のポジションは中間管理職。

 上からも下からも責められ会社になんて彼の居場所などは無い。

 心休まらないまま家に帰り、ぼんやりとテレビを見ながらカップラーメンを食べる毎日。

 休日の楽しみと言えば寝ることぐらい。


 こんな毎日が、定年を迎えるまで続くのだろうか……。


 そんなことを思いながら、小山田が電車の中でぼんやりとスマホでニュースを見ていた時だった。


――なろう小説、またもや書籍化! 今一番勢いがあるのはなろう小説!


 そんなタイトルの記事が目に飛び込んできた。


 なろう小説? なんだそりゃ。


 聞いたことのない話に、小山田はグーグルで検索してみる。

 以下はウィキペディアの情報である。


【 概要 】

  

 正式名称「小説家になろう」。多くの作品が登録がされている小説投稿サイトである。ウェブ上で執筆が可能である点、携帯電話でも利用(執筆や閲覧)が容易い点で他サイトと異なる。また投稿された作品は、閲覧サイトである小説を読もう(一般向け作品、PC向け)・小説を読む(一般向け作品、携帯向け)・ラブノベ(恋愛小説、携帯向け)・ノクターンノベルズ(男性向け18禁小説、携帯&PC両対応)・ムーンライトノベルズ(女性向け18禁小説、携帯&PC両対応)で見ることができる。これらは執筆者が投稿時に設定したジャンル・年齢制限により自動的に振り分けられる。

 2004年のサイト開設当初は個人サイトとしての運営だったが、その後のアクセス数の増加により2008年よりグループによる運営に移行し、2010年に正式に法人化した。2014年12月現在、アクセス数は月間約9億5000万PV、ユニークユーザー数は約400万人。


 ユーザー数は400万人!

 その桁違いの数字に小山田は驚く。

 昨今、活字離れと言われている現代で、小説を読む人間がこれだけいると言うのは驚きだ。それは確かにメディアも注目するだろう。しかも、注目を集めれば投稿した小説が書籍化すると言うのだ。


 書籍化かぁ。なんともスケールのでかい話だな。


 実は小山田は若い頃に小説家を目指したことがあった。

 だが、書き上げて投稿してみたはいいものの、結果は箸にも棒にもかからず、結局小説家になるなんて儚い夢だったと諦めた経験があった。

 あの頃は小説家になりたければ出版社に応募するしかなかった。編集者の目に叶わなければ、世に出ることも無いまま終わってしまっていた。だが、今はネット社会である。編集者と言うふるいにかけられることなく、直接読者に自分の小説が読んでもらえる世の中だ。そして、評判が良ければ書籍化されるのだ。なんと夢のある話なのだろうか。未来の小説家を目指す者たちが殺到するのも良く分かる。


 俺も、投稿してみようかな……。


 小山田の中で、かつて置いてきた物がふつふつと音をたて蘇ろうとしていた。

 会社と家を往復4時間かけて行ったり来たりする毎日。

 代わり映えのしない、夢も希望も無い日々に小山田は絶望していた。

 それが、小説家になろうと言う投稿サイトに出会い、彼の運命が変わろうとしている。

 だが、彼はこの時まだ知る由も無かったのだ。

 魑魅魍魎、未曾有の小説が蠢くこのサイトで、注目を集めることがどれだけ大変なことかを。


 小説家になろうで生き残りを賭けた、地獄のサバイバルが、今始まろうとしていた……。

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