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ここは、ダンジョン最深部。『ビタ苔』という薬草の鼻をつくような独特のにおいと、摂取すると幻覚を引き起こす『ドラゴニア草』の放つ甘い香りとが、適度に溶けあって肺に取り込むことで心を落ち着かせる効果があると言うかのような空気が空間を支配していた。


オレの目の前では、これから始まる«イベント»までのカウントダウンを行っている。


「開始まで残り10分となりました。参加者は所定の位置についてください。」


無機質な音声を聞きながら、これから始まる«イベント»に思いを馳せる。


ーーーーまず、この世界には二種類の種族がいる。

別次元から自分のアバターを操作する【プレイヤー】と、この世界で生まれ育った【NPC】だ。


彼ら【プレイヤー】の会話を盗み聞きして覚えた言葉なので意味はよくわからない。


しかし、【プレイヤー】と【NPC】には決定的な違いがある。

それは名前だ。

名前の最初に@がつく奴は【プレイヤー】である。


さっきから落ち着かない様子でうろちょろしている重武装男の名前は[@名鉄]。

つまり、あいつは【プレイヤー】だ。

と、いった具合に判断できる。


さて、もう気付いているかもしれないが、オレの名前は[バン=ロータス]。

れっきとした【NPC】である。



この世界に、2種類の人間がいるというとんでもない事実を知る者は少ない。


少ない、というかオレとオレの相棒の二人しかいない。


して、なぜオレがこんな無利益な考え事をしているのか、と聞くものがあるかもしれぬ。別段深い理由もない。


相棒に待ちぼうけをくらっている最中なのだ。


「明日のクエスト一緒にいこうぜ~」


って自分から誘ってきたくせに、だ。

時間まで綿密に計画して

「一分でも遅れたら、氷漬けにするからね。」

とかいってたのに。

オレなんか寝坊して、朝飯も食わずに飛び出てきたのにっ!

……オレもう帰っていい?








なんてね。

オレがアイツとの約束を破るわけがない。これは、あいつにも同じことが言える。

アイツがオレとの約束を破るわけがない。


別に固い絆で結ばれている、とかじゃない。

むしろ、これは呪いのようなものだ。





ーーーーーーどちらかが死ねば、もう片方も死ぬ。





マンガやゲームでよくある設定だが、これが実際に起こると毎日生きていることに感謝したくなるほど、精神状態が不安定になる。

それはもう、パルスが反転して、凡用で人型な決戦兵器が暴走しそうなくらいである。


故に、オレ一人をこんな危ない場所でほおっておくというのは、自らの生命をも危険に晒しているということなのだ。






それにしても、おそいなぁ………

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