2 的外れな謝罪は余計に機嫌を損ねます
何が理由で怒ってるなんて、本人にしかわからないですよね。心当たりがあっても違うかもしれないし…それで秘密がバレたりしたら…もっと、ねぇ?
バチンッ!!
部屋に頬を張る音が響く。
「豹牙なんかもう知らない!!!」
続いて春都の怒った声。
そして……勢い良く閉められた扉の音だった。
「……」
赤くなった右頬を押さえて、豹牙は呆然と
春都が出て行った扉を見ているだけだった。
事の起こりは数十分前に遡る。
なにやら朝起きたらとても春都が不機嫌だったので、
もしかしたら先日、血塗れで帰った事情(※鳴らない電話を参照)を
春都が知ったのではないかと、思い。
慌てて謝ったのだ。
それが間違いだとは知らずに。
『春都、ごめん!!!』
『?どう、したの…?』
『この間の事……本当にごめん。あれは俺が悪ふざけしたからで』
『ちょ、ちょっと待って。え、この間?悪ふざけって?』
『え?この前の血塗れで帰った理由を知ったん、じゃ……』
『…………………豹牙、ちょっと座ろうか』
『…………ハイ』
墓穴を掘った豹牙は洗いざらい先日、
血塗れになった成り行きを吐いた。
簡単に説明すると。
用事と言うのは新しい武器が手に入ったらしく。
それが凄まじい威力を持っていると聞いたので、試してみたくなって。
でも危ないから絶対に春都に止められると思い、黙っていた。
予想通り、いや予想以上にその威力が凄まじく、制御できずに自分に
技が返ってきてしまった。
その結果、血塗れになり、衝撃に気を失い。
気が付いたら朝で、慌てて傷も治さずに家に帰ったのだという。
だが、それを豹牙は「ちょっと、ね」と言葉を濁して
春都に説明をしていたのだ。
春都としては何か聞かれたくないことなのだと思い、
訳は聞かず、とりあえず帰ってくるのが遅いことと、
肉じゃがを一緒に食べたかったと、怒って拗ねて……終わらせたのだが。
話を聞く内に春都の表情は青くなって……その後、真っ赤になる程
怒って。
豹牙の右頬を平手打ちにして、冒頭に至る。
「…………追いかけたほうが、いいんだよ……な」
追いかけた方が良いに決まっている。
追いかけて、ひたすらに謝って、許してもらって……。
頭では分っているのに、いまだに立ち尽くしたまま動かないで居るのは。
初めてだったからだ。
今まで幾度と春都に怒られたことはあっても、
自分を突き放し、見捨てるような事を言われたことがなかったから。
『豹牙なんかもう知らない!!!』
“もう知らない”
思った以上にその言葉が胸に突き刺さった。
ずきりと胸が痛んで、思わず手で押さえる。
「……傷ついてる?俺、が?」
戦場の暗殺兵として生きてきて、大切なものを目の前で
全て失ってきて、何度も裏切られて。
もう心が痛んだり、傷ついたりなんてしないと……思っていたのに。
「っ、春都!!!」
急に不安と恐怖駆られて、急いで家を飛び出た。
当然の如く、春都の姿はどこにもない。
完全に気配を絶っているのか、全くどこに行ったのかが分らない。
「春都……っ、俺のばかやろうっ!」
つくづく自分の馬鹿さ加減が嫌になり、悪態をついてから、
豹牙は思いつく限りの場所を探しに走り出した。
(勘違いでバレた秘密。君が怒るのも無理はない)
(もうっ、本当に知らないんだからっ。)
(どこだ…どこにいるんだ……春都っ)
あー。バレちゃいましたね~。墓穴って掘ると本当にきっついですよね。