一話 D.C.
初投稿です。
右も左もわからないので、意見・感想を見ながらやっていくと思います。
遅筆なので更新も遅いと思います。
目標は完走です。
よろしくお願いします。
春。工藤真理はうららかな空気を噛み締めていた。
寝癖を放置したボサボサな頭に真っ直ぐな眼、百六十五センチ・五十六キロの身には黒を基調としてふちに黄色のラインが入った制服を着用している。
ふと真理が目を向けると、幅の広い門をくぐっている少年・少女たちの長蛇の列が流れている。
皆真理と同じ制服を着て、新たな人生の一歩を踏み出し始めていた。
その光景を眺めて、あらためて高揚感を覚える。新しい時期の期待と不安が混ざったものだ。真理はこの瞬間を少しでも味わうべく、人の波の外れで入れ替わる新鮮な表情を眺めていたのだ。
よく見ると制服の形こそ一緒だが、胸元のネクタイ(女性ならリボン)の色が様々だ。一目見ただけでは把握しきれないほどあった。
学年別であろうか。いやそれならば十色以上もあるのはおかしい。
ここは私立葵学園。軽く十を超える学科が設けられた巨大マンモス校だ。
十以上といったのは、あまりにも学科がありすぎて一般の人間では興味がある範囲しかわからないという理由がある。
葵学園には普通科があるが、この学園の大きな特徴として挙げられるのは専門性を追求した特殊な学科あることであろう。無難なものでは調理学科、美容学科など、変わりものでは登山学科、執事学科、果ては傭兵学科まで存在する。
ここまで多岐にわたる学科を創設されたのには理由がある。
もともと葵学園はほそぼそと存続していた、歴史が古いだけが取り柄の小さな学園であった。
しかしこの国が不況の波に取り込まれてから状況が一変した。
普遍的な能力ではこの波を乗り越えられないと判断した社会は手に職を持った専門性の高い人材を求めたのだ。
急激な社会の需要変化に各学校が困惑する中、そのニーズに応じた人物がいた。
葵学園九十九代目の学園長である。
学園長は見事な手腕で資金を集め、時には私財をなげうちながら規模を大きくしていった。
結果、現在の形である学園になったのである。
要するに、総合的能力の高さより、専門的能力の高い集団を作り世に出すことに成功した形が葵学園なのだ。こうして大きく舵をきったことで、この国は高い技術能力をみせ、乗り越えることが絶望的だと言われた不況の波を見事乗り切ったのだった。
そして葵学園は世界で知らぬものがいない随一の学校となり、入学希望者は国内だけでなく海外からも申し込まれるほどになった。
「おっと、そろそろ行かないと」
腕時計を確認し真理は地面においたカバンを取り、名残惜しみながらも人ごみの中に入っていった。
勢いに任せて始めてしまいました。
読まれても読まれなくても、真理の物語は紡ぎ終えたいものです。