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第二回 エレベーター・トライアングル

第二回創作五枚会概要

・テーマ…「手癖」

・禁則事項…「登場人物の名前の記載禁止」


オリジナルの縛り

・原稿用紙の五枚目の最後の行で作品を終わらせる。

 高良依たからいコミュニティセンター。私は一年ぶりにそこへ来ていた。今日、ここでは高良依高校の同窓会がある。

 本当のことを言うと、別に参加しなくてもよかった。仲の良い子とはメールで連絡を取り合っていたし。

 では、何故戻ってきたか。

 すごくベタな話だが、私には片思いの男子がいる。いつも手を動かしているから、意味は違うが手癖の悪い、ということで友達の間でその男の子を『てーくん』と呼んでいた。

 私は在学中にその子に告白が出来なかった。卒業式に想いを伝えようとしたのだが、彼が空手の全国大会で卒業式に来なかったのだ。

 私はその翌日に、調理師になるために専門学校のある堵燐とりんへ引っ越した。恋心を、捨てられないまま。

 卒業してから一年、私の所に高良依コミュニティーセンターで高校の同窓会があるというメールが来た。それだけなら行かないつもりだったのだが、そのメールの最後に「てーくん、あんたのことが好きらしいよ」とあったのだ。

 これは行くしかない。私は参加する、とメールを打った。

 遠距離になるかもしれない。けど、私は堵燐に行っても彼のことを忘れられなかった。

 私は同窓会に行って、告白することを決意した。

 一年ぶりに帰ってきた土地で出迎えてくれたのは、私に同窓会のメールをくれた親友だった。

「早く行こ。みんな待ってるからさ」

 私は頷いて、彼女の後についていく。『大会議室』と書かれたドアを彼女が開けた。

 中には懐かしい顔ぶれが揃っていた。

 だがその中に、てーくんの姿はなかった。


 てーくんが来ないまま同窓会が終わり、私は哀しい気分のまま高良依駅へと歩いていた。

「なあ」

 後ろから、いきなり声が聞こえた。私が振り向くと、そこにはBTがいた。

 顔立ちが良いのに、手癖が悪いと友人の中で噂していた男だ。手癖は手癖でも悪い方だから、ということで最初は『バッドてーくん』と呼んでいた。だが、名前が長いということに気づき、『バッド』と『てーくん』の最初のアルファベットを取って『BT』となった。

「何?」そう言えばこいつ、私のこと好きだったんだよな、と昔のことを思い出す。

「いやお前さ、卒業式の日に俺にペンを貸してくれただろ? あの後、それを返しそびれちゃってさ」BTはにこっと笑った。

「それで?」素っ気無く私は言う。私は今、てーくんに逢えなくてとても苛々していた。

「今日、家にそれを忘れちゃったからさ、家まで来てくれない? 是非、返したいんだ」

 駄目だ。私の防衛本能がそう告げる。こいつについていったら抱かれるぞ、と。

「私、新幹線の時間が近づいているから」新幹線なんかには乗らない。だが、ここから逃げる為には、それが一番の口実だった。

「待ってよ待ってよ」BTは私の腕を掴んだ。「すぐだからさ」

 そう言って、強引にBTは私を家へと連れて行く。

 大声を出しても、ペンを返すから、で一蹴されてしまう。私は心の中で舌打ちをする。

 とにかく、隙を見つけて逃げなければ。


 結局隙を見つけられず、BTにマンションのエレベーターに乗せられてしまった。

 BTが『閉』のボタンを押して、扉が閉まる。

 と思ったが、黒いキャップを被った少年が閉まる直前で入ってきた。

「すいません」手が寒いのか、手を擦り合わせながら少年は言った。

 少年はボタンを押さずに、両手を忙しなく動かしながら隅の方に立っていた。

 六階、七階、八階。ちん、と安っぽい音を立てて、エレベーターのドアが開く。

 BTが手を掴んでくる。はずだった。

 地を蹴る音。私の目の前に少年が出てくる。

 体を捻って、右足をBTの腹部に打ち込む少年。エレベーターから外に吹っ飛ぶBT。

 少年が『1』のボタンを押して扉が閉まる。

「ごめん」少年は、突然謝った。「緊張していたんだ」

 緊張? 何に? 物事が、全然掴めない。

「意を決して同窓会に行こうと思ったら、あいつに連れられている君を見たんだ。で、迷惑そうな顔をしていたから、助けに来たんだ」少年は相変わらず手を忙しなく動かしている。

 手、空手、同窓会。――そういうことか。

「ずっと、好きでした。付き合ってください」

 私は、目の前にいる手癖の悪い彼にずっと言えなかったその言葉を言う。

「私も好きです。こちらこそ、お願いします」


-「Elevator triangle.」end-

縛りの関係で入れられなかったシーン


 一年ぶりに帰ってきた土地で出迎えてくれたのは、私に同窓会のメールをくれた親友のアルミだった。

「久し振りー! 元気にしてた? れーちゃん」

 出迎えてくれたのは、私に同窓会のメールをくれた親友のアルミだった。

「大きくなったね、アルミ」

「そりゃ、いつまでも貧乳じゃないわよ」にこっと彼女は笑った。

「まあ、まだ私のほうが大きいけどね」

「うるさいなー。女子ってのは、Cあれば十分って言うじゃない。あんたのはありすぎなのよ」

「Dでごめんねっ」てへっ、とわざとらしく可愛く言う。アルミが「うぜー」と笑いながら言った。

「じゃあ、そろそろ入らない? みんな待ってるからさ」


入れたかったな、この会話……。(泣

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