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第十七話 犯人の意図

梓の紹介の元、静から詳しい情報を聞くことになった。どんな情報が眠っているのだろうか。

 四人が、ボロボロのアパートの一室に集う。生活感のなさがうかがえるこの部屋で、過去に空き巣が入ったらしい。それも、ちょっとだけコンビニに食べ物を買いに行った数分間で。

 ネコはそれを聞いて一つ疑問に思っていた。


「ここ、二階なんだよな。イレギュラーな方だ。とはいっても、空き巣になったこともないから、どれが普通で、どれが普通じゃないかはわからない。」


 肩をすくめながらそういうと、遠慮なく座る。カップラーメンの残骸が残る殺風景な一室。本当にここに空き巣が来たのだろうか。


「お、お茶、出します。はい……。」


 トボトボとお茶を取りに行くその背中は、なんだかみすぼらしいというか、何というか。それに二人は口は出さなかった。


 シロはキョロキョロと視線を動かしながら首をかしげる。匂いをかぎ分ける犬のように。ネコはその動きにすぐに気づくと同じように見渡し始めた。


 梓はそんな二人の様子を見ながら、ため息をつく。


「それより、聞きたいことがあるんじゃないのか?」


「あ!そうでした!ちなみに、なに盗まれたんすか?」


 何のためらいも容赦もない一言に、静は注いでいたコップを落としかけた。カランという音が聞こえる。


「え、えと、そうっすね。ええと……。」


 かなり言葉に詰まっているようだ。目線が右往左往している。シロはにこにこと待っている。一言でも話してくれることを。


 その期待に応えようとしたのか、ただたんの気まぐれなのか。静は答えた。


「そうっすね。あの……クレジットカードを。」

「うわぁ……そりゃ災難っすね。他には?」


 静は指を折りながら数えた、意外にも多いらしい。


 クレジットカードの次に、腕時計。ネックレス。USB。それから、普通に金と貯金箱ごと。短時間にしてはあっさりしているというか、拍子抜けするものだった。


 しかし、元情報屋のネコは気づいた。その中で一つ明らかにおかしいもの。


「USBね。ちなみにデータは入っているの?」

「あ、そ、そうです。」


 ネコは何かを考えるように、静を見つめた。そして首をかしげる。

「あんた、プログラマーあるいは、企業務めなんだよな。てことは、ノートパソコンを移動させるってよりはUSBでデータ管理している?」


「よ、よくわかりますね。は、はい。そのとおり、プロ、グラマーです。」


 ネコはこくりこくりと、予想が当たったことに満足しているようだった。何のことかさっぱりわからないシロと、ついで感が否めない梓はその場に取り残されたらしい。


 数分後、ネコと静の完全二人きりの圧迫面接が始まるとは、まだここにいるみんなは知る由もなかった。




「ちなみに、バージョンはいくつだ?」

「え、えと、最新版ですけど。」


 ネコはメモを取りながら、気になるところを追求した。しっかりプライバシーを守っているところ、完全なプロである。


「で、鍵は閉めたのか?」

「はい、企業内のデータもあるんで、あの決算とか、企業秘密……はさすがに持ち出してません。」

「それで業務に支障は出てる?」

「い、いえ。とくには。バックアップをいくつか取っているので問題なかったです。ただ、顧客データが混ざっている可能性も捨てきれないので、安心できていないです。……はい。」


 そこに残るのは、ネコがペンを走らせる音と、緊張しながらぼそぼそ話す。静の声。何度も言うが、残りの二人は完全に置いてきぼりになっている。


 しびれを切らしたようにシロも質問を始めた。


「ちなみに、コンビニで何買ったんすか?」

「え、あー……。」


 なぜか、先ほどの一問一答ペースではなく、急ブレーキをしたように勢いをなくした。シロはよくわからず首をかしげる。


「……何かするついでに買いに行ったんっすか?」


「実は、金を下ろしにいってました。えと、その結果、ほとんど盗まれたんすけど。」


「金?」


 静は静かに話した。その日は、宅配便が来る日で、その支払いが現金だけだといわれたらしい。それに気が付いたのは当日の深夜。銀行はやっていないから、コンビニのATMで引き出したらしい。


「それって偶然?それとも必然?」

「あー、それは、必然かも、です。僕、基本電子マネーか、クレジットカードでしか払わないので……。」

「ふーむ。」


 ここまでの話を踏まえると、なぜかUSBも盗まれたということ。コンビニに言った理由は宅配便の支払いのためだったこと。着払いに間に合うようにと、コンビニに行っている間にいろいろ盗まれたと。


「ちなみになに頼んだんだ?」

「そ、それは、”エナジードリンク”です。」

「エナドリ?」


 ネコはその話に詳しく話を傾けた。よくあるバナー広告で、今だけ五十パーセントオフという話で迷わず打ち込んだらしい。ちゃんとした会社名で、しかも、最近話題になっている新作の味だったためうきうきしていたらしい。ただ、着払いのみだったという事だけが気がかりだったようだ。


「パソコンをよく使う人だから狙われた?USBの中身はよくわからんが、良い情報だ。ありがとう、感謝する。」


 ネコはぶっきらぼうに感謝を述べながら、のんびりお茶を飲んだ。なんとなく見えてきた気がしたらしい。


 犯人は本当にただの空き巣なのだろうか――。

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