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第十一話 憧れ

ネコがパソコンにて作業中、別の任務が舞い降りた。シロは即座に問い詰めにいく。

 金髪の男性は振り返った。いきなり現れたシロに驚きを隠せないようだ。


「な、なんだよ。あんた。いきなり耳元で喋るな気色悪い!?」

「気色悪いのはどちらかな?お金もってにやにやしてるの、マジでおっさん臭くてやんなっちゃう。」


 口元に手を当ててシロはニマニマとした。完全にからかっている、というよりも馬鹿にしているようだ。それに気が付いた金髪の男性はみるみる顔を赤くする。怒りで屈辱で。


「なんだと、ごら!!」

「おうおう、やるのかい?」


 シロはへらへらと笑みを続ける。やめる気はなさそうだった。金髪の男性は思いっきりこぶしを振り上げる。完全なる暴力だ。


「おら!!」


 しかし、シロもそこそこ戦える。その拳を片手で包み込んだ。

「勢い任せの攻撃はわかりやすいよ?ほら、こうすればわからなくなる。」

 すると、包み込んだ右手をそのままに、足で薙ぎ払いをした。


 つかまれていた男性は抵抗することもできず、しりもちをつく。その勢いのまま、シロは振り回した。


「とりゃ。」


 どこかかわいらしい声を漏らしながら、男性をぶん投げた。数メートル先まで転がっていく。せっかくの金髪が土まみれになった。


 ついでに飛ばす反動で男性の手から外れたカバンを回収した。中身を確認して、何も取られていないことを確認。シロは安堵の息を漏らした。


「じゃ、お大事に~。」


 転がる金髪の男性をそのままに、シロは軽やかに立ち去ろうとする。それを見逃す男性ではなかった。


「ふざけんな!!それは俺の獲物だ!」


 立ち上がった男性が、これまた単純に手を伸ばした。ボロボロになりながらも、金に目がないらしい。まじめに働けば痛い思いをしないものを。


 シロはため息をつきながら、スッと数歩移動して回避する。つかもうとしたものが消えた金髪の男性はそのままうつぶせに転がる。「ぐへえ」という情けない声を漏らしながら。シロはひらひらと手を振りながら帰っていく。ネコと老人がいるあの事務所へ。





 軽い雑談をしていたのか、シロが返ってきて来たが、明るい声が聞こえた。足音でようやくネコが振り返り、手を振る。


「お疲れさん。ちゃんと取り返したか?」

「もちろんだよ、ネコちゃん。」


 赤いカバンを老人に返す。


「おお、これだ。ありがとうな。」

「いえいえ。僕たちは何でも屋なんで。」


 二ッと歯茎を見せながら微笑みながらネコの隣にドカンと座る。大して動いてはいないものの、爆速で走りさらに格闘技を軽くしてから帰宅しているのでやや疲れたのだろうか。ネコはコーラを注いでそっとシロの前に出す。


「依頼の処理はしておいた。今日はゆっくり休め。」

「はーい。」


 老人のカバンは無事回収でき、平和が訪れた。老人は何度も頭を下げて、ふと声をかける。


「よければ、お礼にお食事でもいかがでしょうか?いまから、家ですき焼きをするんです。」


 すると、さっきまでぐったりしていたシロが、がばっと起き上がった。


「な、何だって?すき焼き!?」

「うっさい……でもいきなり迷惑ではないですか?」


 そういうネコもどこか目をキラキラとさせていた。すき焼きを二人でやるほど、物価は安くはない。というか、おなかが空いているらしい。シンプルに。


 その質問に老人は笑みを浮かべて返事をした。


「いいぞ。今から連絡すれば用意してくれるだろう。」

「やった!依頼料としていただきます!!」


 急に現実的になったものの、二人にとってそれはご褒美に近かった。人のぬくもりを互いに知らない。それを理解しているからだ。


 老人はしわくちゃに目を細めながら、「じゃあ、案内しないとね」と言葉をかける。ネコとシロ。二人は子供のようにそのご馳走を楽しみにした。




 数時間後。老人の家にやってくると、元気よく子供が飛び出してきた。


「じいじおかえり!……あれ?お兄さんたちだーれ?」

「ただいま、壮太。この人たちは助けてくれた人だよ。」


 それを聞いた壮太という少年は、ぱあっと笑みを浮かべた。


「すごーい!ヒーローなの?かっこいい!」


 目をキラキラさせて純粋な瞳でこちらを見ている。ネコはすこしぎこちなく笑みをこぼす。若干、子供が苦手らしい。それを見越してシロが前に出た。


「そうだよ、正義のヒーローだ!」

「おお!かっこいい!!握手握手!」


 小さな手を差し出してくる。シロは迷うことなくその手を取った。


「はい、握手。」

「すみませんね。この子、ヒーローが好きでして。」

「いえいえ、俺も好きなんでよくわかります。」


 そういうと、壮太はシロの手を引き、そのままリビングに連れていく。今からすき焼きができるまでヒーローアニメの鑑賞会でもするのだろう。和やかな空気が流れていた。二人の知らない愛情というものだろうか。


 ネコはつれていかれるシロの背中を見ながらふっと笑みをこぼす。


「……いいな。」


 その声は誰にも聴かれることはなかった。

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