迷子のどら焼き ~ボクはチビ?猫のミーコと、お母さんのひみつのおやつ~
今日のおやつは、どら焼きです。
お母さんがお店で3つ買ってきてくれました。
でも、あらあらあら?
1つだけ、どう見ても少し小さいのです。
お兄ちゃんが言いました。
「オレはお兄ちゃんだから大きいのを食べる。おまえはチビだから小さいのを食べろ」
弟が文句を言います。
「ずるい!お兄ちゃんが大きいのを食べるなら、ボクだって大きいのを食べる!」
兄弟ゲンカがはじまりました。
お母さんは、台所でお茶の支度をしているので、気づいていません。
兄弟のケンカを聞いていたのは、3つのどら焼きたち。
「おまえが小さいからケンカになったぞ」
「やぁい、チビ、チビ」
小さいどら焼きは、なんだか悲しくなって、コロコロコロとお皿の上から飛び出しました。
コロコロ、コロコロ。
小さいどら焼きは、転がり続けました。
テレビのリモコンの横を通り、雑誌の上を乗り越え、お母さんの編みかけの編み物の脇を抜けて。
転がって、転がって、この家の飼い猫のミーコの鼻先へコロンと転がりました。
「なによ、あんた」
「ボク・・ボク・・どら焼き」
「こんなところで何してるの?」
「小さいから食べたくないって言われた・・」
小さいどら焼きは、シクシクと泣きはじめました。
「ちょっと泣かないでよ。ふうん。小さいから食べたくない、ねぇ?」
ミーコは、ピンと伸びたヒゲをひっぱって、首をかしげました。
「私から見れば、十分大きいと思うけど?」
小さいどら焼きは、ちょっぴり涙をひっこめました。
「ボク、小さくない?」
ミーコは、「ニャァ」とあくびをして言いました。
「小さくはないわね。人間はぜいたくだわ」
小さいどら焼きはすっかり泣き止んで、うれしくなって聞きました。
「じゃあ、猫さん、ボクを食べる?」
ミーコは、「ニャァァ」と伸びをしました。
長い尻尾がふるふるふると揺れました。
そして、ツンとした鼻で、小さいどら焼きの匂いをクンクンとかぎました。
「あら、いいにおい」
ミーコが、「ニャァ」と大きな口を開けかけた、その時です。
「あらあら、ダメよ、ミーコ。テーブルから降りなさい!めっ!」
お茶を乗せたお盆を手にお母さんが台所から戻ってきて、ミーコを叱りました。
ミーコは、何も言わずにぷいっとテーブルから飛び降りて、どこかへ行ってしまいました。
「さぁ、おやつにしましょう。あら、どら焼きが1つお皿から転げ落ちちゃってるわ」
お母さんは小さいどら焼きをテーブルの上から拾いあげました。
そして、そのままパクリ。
少し塩気があって、とてもおいしいです。
お母さんはほっぺに手をあてて、ニコニコしました。
お母さんはダイエット中なので、ちょっと小さいぐらいのどら焼きが、ちょうど良いのです。
「明日から、また甘いものはおあずけね」
お母さんは、ペロリと舌を出しました。




