エスコートのない夜会
本作は、シリアス要素一切なし・ストレスゼロで駆け抜ける「完全コメディ特化のざまぁ」です。
おしゃべりな証拠品たちと完璧令嬢のキレキレなツッコミを、サクッと笑ってお楽しみください!
「……出たよ。またあの二人か」
王立学園の卒業を祝う、王宮での大夜会。
眩い魔法石のシャンデリアの下、華やかなワルツが流れる大広間で、私は冷えた果実水のグラスを持ちながら盛大なため息を吐いた。
広間の中央で、周囲の視線を一身に浴びながらドヤ顔をキメているのは、我が国の第一王子ユリウス殿下。
そしてその腕の中で「ユリウス様ぁ、みんなに見られちゃってますぅ」と、これみよがしに身を縮ませているのは、フリルまみれの男爵令嬢クレアさんである。
……うん。控えめに言って、頭が痛い。
本来であれば、あそこに立つのは完璧な公爵令嬢である、婚約者の私のはずだ。
周囲の貴族たちは「信じられん……」「王太子の自覚がおありか?」とドン引きしてヒソヒソ囁いているが、私としては「あーあ、またいつもの三文芝居が始まったよ」という呆れしかなかった。
悲壮感? そんなものは殿下の執務を徹夜で代行した夜に、王宮のゴミ箱に捨ててきた。
学園にいる間も、ずっとこれだったのだ。
『お前が嫉妬から、クレアの教科書を隠したのだろう!』
『クレアを階段から突き落とそうとしたのを見た者がいるんだぞ!』
週替わりで披露される、あまりにもお粗末な喜劇の数々。
こっちは徹夜で王太子の仕事を代行していて、分刻みのアリバイが完璧に証明されているというのに!
そのたびに呼び出され、ピーピー泣き喚く男爵令嬢の相手をさせられる身にもなってほしい。ただでさえ激務なのに、これ以上ポンコツの尻拭いをして過労で倒れてはたまらない。
現在、国王夫妻は外国での用事で不在。ストッパーがいないこの大夜会で、ついに公の場にまで愛人を同伴したか。
(これから先も、あのお花畑な二人の茶番に付き合わされるのかと思うと……うん。無理。絶対に無理。私の胃に穴が空く)
私は、手の中のグラスを軽く揺らした。カラン、と氷が冷たい音を立てる。
こんな不毛な茶番、もうサクッと終わらせてスッキリしたい。
と思っていたら、広間の中央でユリウス殿下が何やら側近に耳打ちをした。側近が真っ直ぐに、壁際に立つ私のもとへと歩み寄ってくる。
「セリア様。ユリウス殿下が、広間の中央へお呼びです」
はいはい、来ましたよ恒例行事。
私は「完璧な公爵令嬢スマイル」を顔に貼り付け、いっそ清々しい足取りで広間の中央へと歩み出た。
さあ、今日はどんな馬鹿げた言い掛かりをつけてくれるのかしら?
第1話をお読みいただき、ありがとうございます!
次回、いよいよ前代未聞のフライング断罪劇が幕を開けます。
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