第三話 「罪」
この物語はフィクションです。実際に起こった出来事ではありません。団体や人物名など、すべて作者の妄想です。一部自殺的、ホラー的な要素も含みます。
では、楽しんで。
エレベーターが開いた。外の方に視線を向ける。奥がものすごく暗い。そして、手前にはそこを見てほしいと言わんばかりに光に照らされている机があった。外に出て、机に近づくと、その上に紙が突然現れた。そこにはこう書かれていた。
ー死んで償えー
「うげ」
レイが露骨に嫌な反応をする。昔のことを思い出したのかなとか思った。
「過去に何かあったの?死んで償えって言われるくらいのこと」
「ありました、一応。ただ、この文は私に対してじゃないと思います。私は、”見た”だけに過ぎないので・・・あれが見間違えであればどれほど良かったことか、とは思いましたけど。」
「そっか」
そう僕は返事をする。”過去”に何かあろうと”今”は変わっているかもしれない。そういう意味で、昔と今では違うことも多いと思う。だから、”今”を大切にすることがとても大切だと僕は思った。けど、文の内容は誰に対してのものなんだろうか。
その時、さっきまでの嫌な予感がまた戻ってきた。全身がなんとも言えない気持ち悪さに襲われる感じがする。そして、文の内容が変化する。
ー今、思い出し、死なないとこの先で必ず地獄を見ることになるぞー
「ぅ」
「そう?」
文の内容で「何か」を思い出しそうになる。忘れたいほど、忌々しい嫌な記憶が蘇りそうになり、頭痛が強くした。そうだ、今持っているこの包丁で腹を刺せば楽になれる。
そう思い、包丁で自分を刺そうとする。
「ダメです!」
包丁先端が腹を刺す直前で、レイが止めた。
「どんなに嫌なことでも、忌々しいものでも、今はダメです。ここから出ることができたら話は聞きますから。今はこんな文無視して先に進みましょ。」
「そう・・・だね、ごめん、取り乱した」
立ち上がると、奥の部屋の電気がついた。部屋は、どこかの家庭の一室という印象を第一に与えてきた。それと同時に、どこか懐かしいものも感じた。
部屋に入り、そこを見渡す。そこはリビングとキッチンのようで、奥の方に扉が見えた。なので、そこから調べることにした。
部屋に入ると、シャッターが目の前に現れた。それは、”進む先はこちら”と暗示しているようだった。それは開く気配もなく、そこに鎮座していた。だから、開けるための電源やスイッチを探さなければいけないと思った。
部屋に戻り、もう一度見てみる。すると、他にも扉があることがわかった。右側、左側に一つづつ扉があるようだ。まずは右側から見てみることにした。
中へ入る。そしたら、タンスが一つ、なぜか中央にあり、目の前に出てきた。部屋内を見てみるが、それ以外に何もない。タンスも調べてみたが、それも何もない。結果として、収穫は無しだった。
もう一つの部屋へ入る。そこは、みる感じ倉庫だった。そして、奥にでかいレバーが二つあった。その一つは上がっていて、もう一つは下がっていた。
「あ!レバーありましたよ」
「下がっている方あげるか」
「そうですね」
下がっている方を上げてみる。シャッターがあった部屋の方面から、「ゴゴゴ」と地に響く音が鳴っていた。おそらくシャッターが開いたのだろう。
「たぶん空きましたね」
「そうだね、戻って先に進もう」
「そうですね」
と戻ろうと扉に手をかけた瞬間。「ガコン」と音がなり、視界が突然黒く染まった。
「え!?」
「何これ」
「そう!いますか?」
「いるよ」
突然何かが抱きついてきた。多分レイだろう。泣いている。さっきとは全然矛盾した行動だが、それは自分もだろう。”今”が大切だとか思っておきながら、多分”過去”の嫌な記憶を思い出しそうになったら頭痛がした。
この状況をどうしようかと思い、今まで探ってこなかったズボンのポケットを探る。そしたら、円柱のようなものが手に当たった。それを握ると、スイッチらしきボタンの感触もした、すぐさまそれを押す。そしたらポケットから光が漏れ出ているのをかすかに感じた。それを取り出すと、ちゃんと光っているようだった。
「レイ、ポケット探ったらライトあったよ」
「ごめんなさい。怖いのでこのままでもいいですか?」
「いいよ」
そのまま、レバーのところに戻り、再度レバーをあげる。すると、光が戻った。
「光ついたよ」
「あ!?すみません」
そういうと、レイはすぐに離れた。一つおかしいところがあった。部屋全体に異常な量の紙が貼られていて、しかも、悪口ばかり書かれていた。・・・多分僕に。
「気にしないで行きましょう」
「そうだね」
彼女はここにきてからすこぶる機嫌が悪くなっていた。というか、机の紙が原因で僕が自殺しかけたことから。彼女はなんでそこまでして僕を信頼してくれているのかが気になった。出会ったのはほんと数時間前くらいなのに。
そう考えながら、シャッターのところまで戻ってきた。それは上がりきっていたのか、階段が出現していた。上を見ると、長く続いていた。
約十分間上り続けて、ようやく次のフロアへ辿り着いた。おそらく、エレベーターの代わりだろう。そのフロアは、左右に扉が一つづつあった。右側の扉を開けようとしたが、鍵がかかっているようで、開かなかった。逆の左側にある扉は開いた。その中には、机とその上に鍵が置いてあった。
「あっ!これ、さっきの扉に続く鍵ですかね?」
レイがそう言いながら、それを取りに行ってしまう。危機感がなさすぎるな、と思っていたら、「カチッ」と不穏な音がした。そして、レイの足元に大穴が空く。
「え?」
「レイ!」
僕は彼女の手を掴む。このまま引っ張れるか、と思った時、手に痛みが走った。手が無意識に離れる。そして、レイが下へと落ちていく。
自分の手を見る。血が流れているが、幸い指は無事そうだった。レイの方は大丈夫か、と思った時、部屋全体に嘲笑うような声が響いた。
ーははは!いい気味だな!お前も、あの女も!ー
「誰だ」
ーあの手紙を書いた本人だとでも言っておこうかー
「レイをどうするつもりだ」
十中八九罠を仕掛けたのはこいつだろうな、と思い、質問を投げる。
ー教えねーよ。お前はこいつにでも殺されておけ。ー
なんなんだこいつは、と思ったのも束の間。部屋の奥から「ドン」と何かが落ちてきた音がした。そちらを振り向くと、フードを被った白い骨?みたいな姿をしていて、大鎌を持っていた。まるで死神だ。そいつは、急に走り出し襲ってきた。
「逃げるしかないか」
独り言を呟き、走り出す。このフロアには、隠れ場所はないだろう。なら、前のエリアに戻れば良いのか。戻れたとしても、隠れ場所になるような場所は一つしかない。だから確定でバレるだろう。そうなった時、自分はどうする?
余裕のない頭をフル回転させて、どう逃げるかを考える。
「これはまずい」
もう前のエリアが見えてきた。どうする?そう思っていたら、横の壁にレバーがついてるのが見えた。来るときは、確かになかった。ということは、「何者かが付け足した」ということ。何分前かは知らないが、一か八か、あれに賭ける以外の選択肢はない。
必死の思いでそれを引く。すると、「ガコン」と音がして、勢いよくシャッターが降りた。
「逃げ切れた・・・のか?」
だが、「ゴン、ゴン」とシャッターを破壊しようとする音が聞こえている。階段を登っているときに、一つ気になっていたところがあった。なぜあのように設置されていたのか。時間もない。そこに向かおうとする。
ーあぁ!?ちくしょう!誰だよレバー設置したやつは?まぁいい。そこには脱出する手段はない。結局ゲームオーバー。この後、またあいつを向かわせて殺してやる。ー
「絶対逃げ切ってやるからな。」
・・・あいつはどこかへ行ったみたいだ。ちょうど良い。「手段がない」とかほざいてたが、絶対に通路がある。あいつはあのレバーを設置しなかったみたいだし、協力できる者もいるかもしれない。
「やっぱりここか」
想像した通り、タンスを動かした下に、通路につながる階段があった。そこから進んでいく。ある程度進んで行ったら「ゴゴゴ」と多分タンスが動いた音がした。もう二度と戻れないだろうけど、もう用はないだろう。
しばらく歩いていたら、行き止まりに行き着いた。そこは扉で、それを開けれるか試す。開いた。その中へ入る。
中は書斎のようで、奥に一人、体が黒いもやで覆われて、フードを被っている奴が座っていた。
「お前は誰だ?」
逃げれられる状況でもない。そして、さっきのやつは子供っぽい声でこいつのまとっている雰囲気と全然違う感じがするし、ここのことを多分知らなかった。だから会話を試みる。
「我は、”裁く者”だ。」
「信じられない名前だな。率直に聞くが、お前は僕の味方なのか?」
「味方だ。お前こそ高圧的な態度だな”そう”」
「なんで名前を知っている?」
「奴と違い、我はここに入ってきた時からずっと見続けてきたからな。あいつは最近ここに来たが、迷惑行為ばかりしてきたから殺してやろうと思っていた。だが、ここ数時間で一気にここを乗っ取ってきた。」
「そうなのか、レイは無事かわかるのか?」
「無事だ。」
「なら助けに行きたい。」
「そう言うと思った。ただ一つやってほしいことがある。」
「なんだ?」
「奴の気を引いてほしい。」
「そんなことか?」
「大変だと思うぞ。奴の”死神兵器”はとてもじゃないが世界一つ滅ぼしかねん。」
「死神兵器?」
「奴が話してきた時に襲われた骸骨のやつだ。」
「あいつか」
あいつを複数体持っているのか?
「奴はそれを1時間に一体生成できる。しかも現在、数百体持っているみたいだ。」
「だから弱い僕を囮にすると。」
「計画はある。お前も一緒にいた者も絶対に生きて帰還できるだろう。」
「了解」
「そうとなれば、左側の扉から先に進むと良い。矢印があるから、そこを進んでいけば良い。そうすれば一緒にいたものと合流できるだろう。」
「お前はどうするんだ?」
「準備がまだ完了していない。だからそれを進める。脱出の準備が整ったら声をかける。」
「わかった。じゃあまた」
そう言った瞬間”裁く者”は瞬時にどこかに消えた。僕も左側の扉から進んでいくことにした。レイが無事であれば良いが。




