第二話 化け物
この物語はフィクションです。実際に起こった出来事ではありません。
団体や人物名など、全て作者の妄想です。一部ホラー的な要素も含みます。
では、楽しんで。
エレベータが開いた。そこから降り、周りを見渡す。そこは、トンネルのような所で、一本道だった。奥を見ると、少し遠いが出口があるのが分かった。
歩いて進んでいると、トンネルの出口まで着いた。外を見ると、とても大きな巨木があり、トンネル内はコンクリートの床だったが、外は草が生えていた。そして、あらゆるところに蛍が光りながら飛んでいる。その景色が見惚れそうになる程とても幻想的で、綺麗に見えた。
トンネルを出る。上の方を見ると、満天の星で空が埋め尽くされていて、可惜夜のようだった。うっかりと我を忘れてしまいそうになる。あたりを見渡すと、出口のすぐ横に少年が壁に寄りかかって寝ていた。その少年に「大丈夫?」と声をかける。「ん……?」と眠たそうな声がして、目がうっすらと開いていく。その瞬間。その少年は「ひゃっ!」と甲高い声をあげて、驚いた様子で離れた。沈黙が流れる。数秒後に、彼(?)は落ち着きを取り戻した様子で話しかけてきた。
「あの……名前はなんですか?」
その時、ものすごく驚いた。声質が少女だった。短髪でYシャツにズボンという格好。幼い少年のような顔をしていたからという理由で性別を決めつけていたことを少し後悔した。そのせいか、数秒間固まってしまっていた。
「大丈夫ですか?」
逆に心配された。
「ごめん、大丈夫。名前は「そう」そっちは?」
「そう……?」
彼女は驚いている様子だった。けれど、顔と声には嬉しさも混じっているように感じた。
「合っているよ」
「あっ、はい! 私は……えっとなんだっけ」
詰まっている様子だ。こんな所だから、記憶があやふやになるのも仕方がないと思った。
「すみません、思い出せないです。あっ! でも、「レイ」って呼んでください!」
「了解。とりあえず進もう」
「はい」
という流れで「レイ」と一緒に進むことになった。
まず、気になった巨木から調べようと思い、それに近づいていく。近づくたびにそれは明らかに大きくなっているように感じ、もしその中が空洞なら、豪邸一つはすっぽりと入ってしまうように思えた。
「これ……本当に建物の中です?」
レイも同じことを感じたらしい。
「多分……横の方は壁が見えるし、木の上の方は葉が見えない。そして幹が明らかに空で途切れている。あと、こんなにでかい木、聞いたことがない。」
「……とりあえず進む道をどうやって探します?」
確かに、このデカい木から手がかりを探すのは、相当困難だと思った。元々の話、僕たちをここに連れてきたやつは、なぜこれを作ったのか。そしてもう一つ気になることがあった。近づいたら分かったけど、“木の下部分だけ”に赤いシミのようなものが所々についている。ということだった。
「とりあえず、外周一周してみます?」
「やめとこう」
「え?」
「そもそも、こんなデカい木は聞いたことがない。多分、作られたものだと思う。」
「だから怪しくないですか?」
「逆かもしれない。「怪しい」と感じさせて、この木から手がかりを探そうとさせる。そして、体力がなくなったあたりで僕たちをここに連れてきた犯人は僕たちを殺すとも考えることができる。」
「なんでそんなことをする必要があるんですか? 意味ないと思いますし、何がしたいのか分からないです。」
確かに意味がわからない。そのまま黙り込んでしまった。
「とりあえず、私が眠っていた壁側から探しましょうか」
「そうだね」
よく観察しながら、他の空間につながりそうなところを探す。数分歩いていると、壁にドアノブがついていた。
「本当に見つかりましたね」
「そうだね……ん?」
異変に気づく。今後ろで「グチャ」という音が聞こえたと思った。気になり、後ろを見る。そこには、巨大なワームのようなやつがいた。
「きゃああぁぁ!」
レイもそれを見たようで、悲鳴を上げた。同時に、そいつもこっちの存在に気づいたようで、襲いかかってくる。さっき見つけたドアノブを押して、前の方に体重をかける。開かない。今度は後ろに体重をかける。開いた。レイの手を掴み、ドアの先に転がり入る。そしてすぐそれを閉めた。相手に手はないように見えたから、少しの間は時間稼ぎができるだろう。だが、扉が破壊されて侵入される恐れがあると感じた。周りを素早く見渡す。すぐ近くに通路が見えた。そっちの方向へ走っていく。後ろから「ドン、ドン」と鈍い音が数回聞こえた。
数分経っただろうと思う。無我夢中に走っていたようで、行き止まりについてしまった。だが、後ろから追ってくるような音は聞こえない。無事に撒けたと思った。深呼吸をして落ち着く。そして、レイの方を見る。手はしっかりと繋がれていて、逸れてはいなかった。だから安心した。
「大丈夫?」
「はいぃ」
「まだ出口じゃないと思うから、頑張ろう」
「はい」
彼女もものすごく疲れているようだった。少し休憩をとり、周りを見渡してみる。扉が二つ、目に入った。
このままここにいても、助けが来るかわからないし、とりあえず自分たちに近い方から調べることにした。扉を開ける。そして中を見る、そこは薄暗い。天井を見ると大穴が空いていた。そして、中央に猫らしき物体があった。ものすごくやな予感がする。そう思っているとレイが「あれどんな猫かなぁ」と近づいて行こうとした。その時、空気を切る音がかすかに聞こえたような気がした。気づいたら、声を出すより前に体が動いていた。彼女を引っ張り、部屋から出る。両方ともバランスを崩して転んでしまった。その時、「グシャ」とさっきよりも鈍く、何かが潰れたような音が聞こえた。立ち上がり、部屋の方をみる。猫は消えていて、おそらくさっきの猫の血だろうか、血溜まりのようなものができていた、そして上から、血が垂れていた。
「大丈夫?」
そう僕は声をかける。
「あ……あ、さっ……きの」
かなり怯えている。さっきの巨大ワームが見えてしまったようだった。
「立てる?」
さっきの奴がいるのなら、一刻も早くこのエリアから脱出しなければ状況が悪化すると感じ、声をかける。
「・・・」
レイは無言で立ち上がり、僕の服の裾を弱々しく掴む。相当なトラウマになってしまっただろうか。顔を見ると、青ざめて少しだけだが震えている。そしてそのまま、暗い部屋は避けて移動していった。途中から、彼女は僕が入ろうとした部屋を露骨に避けるような行動をとることが多々あった。実際に、さっきの巨大ワームに遭遇することはなく、スムーズにエレベーターの前まで到着することができた。エレベーターはまだ開いていなかった。
「大丈夫?」
「はい……ありがとうございました」
レイは弱々しくそう返す。さっきよりも顔が青ざめているように感じられ、体は小刻みに震えていた。そして、彼女は裾から手を離す。
「本当に?」
「なんでわかるんですか……」
「さっきよりも顔が青ざめているし、小刻みに体が震えている。無理はしないで」
「わかりました……」
そう言ったのと同時にレイの意識が途切れた。僕は慌てて体を支える。そのときに、エレベーターが開いた。とりあえずエレベーターに乗ろう。そう思い、彼女をエレベーターへと運んでいく。エレベーターに乗り、彼女をゆっくりと座らせ、僕も座った。エレベーターが閉じていく。自分の意識も次第に途切れていった。
目がさめる。そして異変に気づく。さっきまでいた場所じゃない。路地裏の入り口? ような所だ。
「どこだここは?」
どこか既視感のあるような、そうじゃないような。いや、見たことないな。この景色は。右手には、血がべっとりついた包丁? 左手には、銃? 金縛りにあったように体を動かせない。あれ、僕って誰だっけ。
「……う……う! そう!」
「ん?」
レイの声がする。
「あ! やっと起きた! 心配しましたよ。私が起きたらエレベーターの中で、横をフッと見たらぶっ倒れていたんですもの」
心配させてしまったみたいだ。夢で見た内容を何も覚えていない。なぜだか知らないけど、それはすごく大切なものだと思った。
「ごめん。なんかものすごく嫌な夢を見ていたような感じで」
わからないが、誰かの記憶でも見ていたような感じがした。そして背筋が凍るような感覚に襲われる。
「無理はしないでくださいね」
「そのまま返す」
「うふふ。エレベーター開いていますよ。行きましょう」
「そうだね」
立ち上がる。そしてエレベーターから外を見る。さっきのエリアとは違い、床も壁もボロボロで、管理が行き届いていないようだった。エレベーターから出る。通路があり、少し進んでいると、行き止まりのようなところに扉が見えた。その目の前につく。そこには、「すべてのボタンを押し、脱出せよ」と直接刻まれている。横を見ると、両側に通路があった。
「レイ。周りの通路から調べない?」
「はい、そうですね。なんかすごくやな感じがします」
通路を一周する。何かあるかな、と期待したが反対側にエレベーターがあるだけで、特に何もなかった。エレベーターは作動する気配すらなくそこに鎮座していた。
仕方がなく、扉の先へ進むことにした。扉が閉まった時に「カチッ」という音がした。レイが扉を確認する。
「開きません。閉じ込められたみたいです」
いや、元々閉じ込められてるんだが、とツッコミたかったが、そういう場合ではない。早めにボタンを押して脱出しないと、とんでもないことが起こりそうなことを、この空間内の空気から感じた。
「予想通りだな」
「ですね」
空間内の探索を始める。管理がされていない床と壁はそのまま、そして一直線の道が続いていた。ボタンがところどころに配置してある。試しに一個押してみるが、反応がない。まだ押す時ではないのだろう。
気づいたら、最奥まで着いていた。そこには、通路と同じ幅の階段があった。階段を登っていく。すぐに上についた。そこは行き止まりで、さっきのは赤いボタンだったが、青いボタンがそこにはあった。それを押さなければいけないと感じた。
「レイ、準備はいい?」
「はい」
ボタンを押す。するとレイが僕を引っ張る。心なしか、彼女の顔は青ざめていて、目元にクマができていたように見えた気がする。そして、警報が鳴り出す。
「行きますよ!」
これはまずいと僕も感じた。彼女に続いて僕も走り出す。階段を下り切ったところで、「ドカン」と何かが破壊されたような大きな音がした。まぁ、実際に壁が破壊されたんだろうけど。もう一つ異変に気づく。さっき来た時は明らかに一直線の道だった、なのに今見ると入り組んでいる。そのまま僕たちは走っていった。
入り口に戻り、外に出る。道中はとんでもなかった。初見じゃ攻略不可能な迷路のような入り組み方をしたところがあり、わかりにくすぎるところにボタンがあったりした。だけど、レイが先導してくれたおかげで死なずに済んだ。焦ってしまって、追ってくるものは見ることができなかったけれど、音からあれは巨大ワームだろうなと思った。そう思うと、逃げ切れたことに安心した。
レイの方を見る。その時にさっきの様子を思い出した。さっき見たのは勘違いじゃなかったようで、顔がひどく青ざめている。そして、目元に深いクマができていた。僕が声をかける前に目を閉じて倒れてしまった。
「レイ!」
慌てて彼女の体を支える。顔を見る。どうやら、疲れ果てて寝てしまったようだ。
「よいしょ」
彼女を背負い、エレベーターに向かう。その道中でさっきのことを思い出す。レイは明らかに未来が見えた動きをしていた。元々持っていた能力なのだろうか。でも、一回使用するだけで疲労困憊になるような力なのか?
「・・・」
少し考えたが、あまり深く考えない方が今はいいと思った。どのみち、脱出して、覚えてたら聞こう。そう思ったところで、エレベーターについた。ちょうど開き始めのところだった。エレベーターに乗り、さっきと同じようにレイを座らせる。自分は寝ないように、レイを守れるように立っておく。そして、エレベーターが閉まり、上がっていく。そのとき、少し頭痛がした。何か思い出してはいけないような記憶があると感じた。それと同時に、ものすごく嫌な予感がしたのは気のせいだろうか。




