三日目
三題噺もどき―はっぴゃくに。
外はびゅうびゅうと風が吹いている。
すぐ横に窓あるせいで、ガタガタとうるさくて仕方ない。
いい目覚ましにはなるけれど。
「……」
正門近くに立っている桜の木は、その風にされるがまま。
あのサイズの木であんなにも靡くのだから、花壇に植えられた小さな花は根こそぎ飛んでいくのではないかと思ってしまう。
まぁ、飛んでいったところで、だからなんだとしか言いようがないが。
「……」
室内は、硝子越しの外の様子が嘘のように、生ぬるい空気が覆っている。
暖房をつけているせいだろうが、これは眠くなるのも仕方ない。
実際、隣は気づけば眠っていた。堂々と。机に伏せて。
「……」
まぁ、昼休み後というのもあるのだろう。
それなりに空腹が満たされて、眠気が誘われるのも仕方ない。
私はどうにも、今日は腹の調子がよろしくなかったのか、軽い嘔吐感に襲われて眠気どころじゃなかったけど。食後はたまに、こうなる。
「……」
それに、耳だけを傾けている教師の話は、何ともありがたいお話だ。
聞く必要もないような、どうでもいい、ありがたくてつまらない話だ。
そりゃ、眠くもなるだろう。
―さっさと終わらないだろうか。
「……」
3学期が始まって、そそくさと三日も経っていた。
一日目は始業式のみだったし、昨日もいつもよりは早い帰宅だった。
部活がなかっただけなんだけど。
「……」
授業も、大抵は冬休みの宿題の答え合わせと提出、小テストくらいなもので。
その後は、これから先に控えている三年生になってからのお話ばかりだ。
耳に胼胝ができる。
「……」
こんなところでやる必要性があるのだろうかという、学年集会でも同じことを延々と言われた。学年主任から。昨日。朝。
わざわざ冷え切った廊下―ちょっと広いホールのような場所が廊下の真ん中あたりにある―に集めてする必要があると思うか。体育館は三年が使っていて、外は一年が使ってるからって。……まぁ、一年よりはマシか。
「……」
それに、あの学年主任、いい歳のおじさんだから、親父ギャグが止まらない。
―進学にうまく繋がるように、旨味のある三学期にしましょう、馬だけに。
……空気が凍り付くのが面白かったくらいか。
「……」
思わずため息が漏れそうなのを耐えながら、黒板上に掲げられている時計を見る。
もうそろそろチャイムが鳴る頃だろうか。その音が鳴れば担任がやってきて、ホームルームをして……今日は帰れる。
教師の口は止まりそうにもないが……この教師はいつもおしゃべりが過ぎる。たまにいい話もするのだけど、今日はハズレだ。
「……」
だからぼうっと、考え事をする。
つい先ほどまで、昼休みに話した、あの子とのこと。
残念ながらクラスが別々なもので、私は昼休みになるたびにあの子の教室に行く。
今自分が居るクラスより、あちらの方が顔見知りが多い気がするくらい、あの子のところに入り浸っている。
「……」
話したことなんて、たわいもないものばかりだ。
共通のゲームの話とか、趣味の話とか、それこそ冬休み中の話とか。
弁当を食べ終えて、持ってきたお菓子をつまみながら。
たまに、肩を寄せて。
降ろされた髪の先に、触れてみたりして。
「……」
あの時間がなければ、私は学校に来る意味を失くしていたと思う。
いやそれは勉強だろうと突っ込まれるかもしれないが、まぁ、そんなものはどうにでもなる。
明日休みかぁ、なんて考えると少し惜しくなる。
「……」
今日はいっしょに帰れるだろうか。
あの子は部活をしていないし、そもそも帰る約束をしているわけでもない。
でも昨日は途中まで一緒に帰れた。そもそも道が違うからな。仕方がない。
中学の頃は私の帰路の途中にあの子の家があったから、そこまで一緒に行っていたのだけど。
「……」
チャイムが鳴って、ホームルームが終わったら。
とりあえず、あの子の教室に行ってみよう。……まず先にとまりそうにもない教師の口が止まることを祈るか。
お題:嘔吐・硝子・馬




