七夕
七月六日の朝、魔界の支配者ルキは自宅のポストに天の川観光協会のチラシが入っているのを見つけた。
その夜、浴衣を着た魔界の支配者ルキは、浴衣を着た美の女神リノと一緒にルキのマイUFOに乗り込んだ。
いつものように燃料タンクに繋がるホースに熱湯を入れ三分待ったあと古代ギリシアのソースを入れるとUFOのエンジンがかかった。
魔界の支配者ルキは、サイドブレーキを外し一気にアクセルを踏む。
するとUFOは勢いよく上昇し、みるみる地上の建物が小さくなっていった。
ある程度の高さまで上昇すると魔界の支配者ルキは、おもむろに、そばにある電子レンジを開け、中に浮かぶ3Dマップの月の位置にラップをかけ電子レンジを閉めると油性マジックでワープと書かれた電子レンジのボタンを押した。
その瞬間、正面の巨大モニターにより、魔界の支配者ルキのマイUFOが、たくさんの光の筋に包まれているのが分かった。
チーン!
電子レンジが鳴り、UFOを包んでいた光がなくなった次の瞬間、巨大モニターの左側に月が大きく見えると魔界の支配者ルキは、方向指示器を左に出した⋯⋯。
月ノ裏サービスエリアの駐UFO場にUFOをとめ魔界の支配者ルキと美の女神リノは、サービスエリア内にある店でムーンバーガー、ムーンドリンク、ムーンポテトを買った。
ムーンポテトは全て三日月のように曲がっている。
ムーンポテトを見ながら楽しそうに笑いあっていた魔界の支配者ルキと美の女神リノが突然その場から消えた。
その場から少し離れた月の公園に突如として現れた魔界の支配者ルキと美の女神リノは、月の公園のベンチまで歩いてゆき座ると、地球を見ながら『昨日何も起こらなくて良かったね』などと語らいながら食べたあと再び駐UFO場に戻ってきた。
二人が魔界の支配者ルキのマイUFOに乗り込むとルキは、電子レンジを開け3Dマップの天の川の位置にラップをかけ電子レンジを閉め油性マジックでワープと書かれた電子レンジのボタンを押した。
光に包まれチーン⋯⋯そこは天の川だった⋯⋯。
天の川駐UFO場にUFOを停め魔界の支配者ルキと美の女神リノは、手を繋ぎ歩き出した。
天の川のそばには多くの宇宙人の屋台があり魔界の支配者ルキと美の女神リノは、火星人の屋台でたこ焼きを買い、冥王星人の屋台でハートのかき氷を買ったあと歩きながら食べた。
人が大勢いる場所をかき分けて行くと日傘をさした織姫と、椅子に座りマッサージを受けながら台本チェックをしている彦星がいた。
その時スタッフらしき人の大声が聞こえてきた。
「間もなく七月七日です! スタンバイお願いします!」
その声に織姫が船に乗り向こう岸へと向かってゆく。
ザワザワし始めたので、そちらを見てみるとカメラ席で、ものすごい人数の銀河系中のカメラマンが一斉にカメラを構えているのが分かった。
「間もなく七夕になります! 皆さんお静かに!」
「よーい、スタート!」
突如、彦星にスポットライトがあたり、彦星が第一声を放った。
「お、おりひみさま!!」
「カーーーーット!!」
どうやらNGのようであった。
休憩に入り彦星はコーヒーを飲んでいる。
場が緩む⋯⋯。
魔界の支配者ルキは、手を繋いだ浴衣姿の美の女神リノの横顔を何気なく見た。
織姫なんか足元にも及ばないこの美貌、なんて美しいんだろう⋯⋯。
魔界の支配者ルキは、美の女神リノのその完璧な美しさに見惚れている。
「また、来年も一緒に来れたらいいな⋯⋯」
魔界の支配者ルキが思わず呟くと美の女神リノがルキの方を向いた。
「ルキ、今何か言った?」
「えっ? うん、リノとまた⋯⋯」
その時、魔界の支配者ルキはある強大な気配に気づき視線をそちらに向けた。
「あっ、ミカエルだ⋯⋯」
美の女神リノも、ルキの視線の先を追って振り返った。
美しい白い翼をしなやかに揺らしながら歩いているその長身でイケメンの男性にリノも見覚えがあった。
「あれは大天使ミカエルね⋯⋯大天使ミカエルって言えば、ルキが大天使だった頃の友達よね?」
「ああ、俺を魔界に叩き落としてくれた張本人さ」
「じゃあ、見られたらルキだってバレるわね⋯⋯私のことも知ってるのかな⋯⋯」
「ああ、もちろん知ってるさ⋯⋯だから、もし見つかって俺たちが付き合ってることがバレたら神界の監察官に報告されて大変なことになるぞ⋯⋯さぁ、リノ行くぞ!」
魔界の支配者ルキは、美の女神リノの手を取ると、大天使ミカエルの目を避けるため、すぐさま今日泊まることになっていた火星にある標高21230mのオリンポス山の頂上付近に浮かぶホテル【天空のマーズホテル】へと向かったのであった⋯⋯。




