第2章 光の記憶
「光が丘って、名前からしてもう科学っぽいよな」
陽翔が言った。
「光の丘。なんか、太陽の研究所みたいじゃね?」
「それ、ただの語感でしょ」
結菜が笑う。
「でも、光って、科学の基本だよね。植物も、映像も、エネルギーも」
「俺の自撮りも」
「それは…まあ、光の使い方次第」
光が丘公園は、広かった。
芝生が広がり、木々が風に揺れている。
湊斗は、黙ってカメラを構えていた。
「影、動いてる」
「そりゃ太陽が動いてるからな」
「いや、影の“形”が変わってる。木の枝の角度で、影の輪郭が違う」
「それ、動画にしようぜ。タイムラプスで」
陽翔がスマホを三脚に固定する。
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SNS投稿:@nerima_science_club
動画:木の影が時間とともに変化するタイムラプス
「影は、光の記録。太陽が描く、時間のスケッチ」
コメント:
・「え、なんかエモい」
・「理系男子の詩、また来た」
・「#光が丘 #科学部の休日」
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「植物って、光の方向に伸びるんだよね」
結菜が言った。
「屈光性っていうやつ。太陽に向かって、葉っぱが角度を変える」
「それ、俺もやってみようかな」
陽翔が芝生に寝転がる。
「太陽に向かって、俺も成長する」
「それ、ただの日焼け」
大翔が冷静にツッコむ。
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「光って、粒でもあり波でもあるんだよ」
湊斗がぽつりと言う。
「二重性ってやつ。観察する方法で、性質が変わる」
「それ、俺の性格みたい」
陽翔が笑う。
「テンション高いけど、実は繊細」
「それは…否定できない」
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SNS投稿:@nerima_science_club
写真:湊斗が逆光で木漏れ日を撮影した一枚
「光は、粒であり波である。観察者によって、姿を変える」
コメント:
・「物理の話なのに、なんか哲学」
・「#量子っぽい #湊斗の世界」
・「この写真、好きかも」
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「光って、時間を測る道具にもなるんだよ」
大翔が言う。
「影の長さで、太陽の位置がわかる。つまり、時計になる」
「それ、日時計ってやつ?」
「そう。でも、木の影でもできる。今、何時だと思う?」
「えーと…午後2時くらい?」
「正解。影の角度、約45度。太陽は南西方向」
「さすが、生きる理科辞典」
結菜が拍手する。
「この公園、光の実験にぴったりだな」
湊斗が言う。
「次は、プリズム持ってこよう。虹、作れる」
「それ、文化祭でやろうぜ。科学部の出し物」
「“光の迷宮”とかどう?」
「いいね!俺、レーザー担当する!」
「それ、危険じゃない?」
「安全第一で!」
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SNS投稿:@nerima_science_club
動画:陽翔が木漏れ日の中で「光の迷宮」構想を語る
「文化祭で“光の迷宮”やります。科学部、光に挑む!」
コメント:
・「なんか楽しそう!」
・「行ってみたい!」
・「#文化祭予告 #科学部の逆襲」
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「バズってる!」
陽翔がスマホを掲げる。
「“光の迷宮”ってワードが刺さったっぽい!」
「やったね」
結菜が微笑む。
「でも、準備は大変だよ?」
「それでも、科学でワクワクさせたい!」
「その気持ち、光ってるね」
湊斗がつぶやいた。
こうして、科学部の“光の記録”は、SNSにも記録された。
次の目的地は、清掃工場と温水プール。
都市の熱が、彼らを待っている。




