沙月編:7話 接吻
2年前…
「好きです!付き合ってください!」
私は、同じ部活の3年生の先輩に告白された。
「はい!」
私は、了承をし、付き合った。
この時は、嬉しかった。
私は、いつも優しくしてくれる先輩と付き合えたからだ。
それからの日常は夢のようだった。
平日は先輩と毎日メールと電話をして、休日になったらデートに行く。
この生活が私の中の1番の幸せだった。
なのに……
「お前、うちの彼氏と付き合ってるだろ?」
私は、同じ部活の女の3年生の先輩に、そう言われた。
そこで私は確信した。
あ…騙されたんだ…
それから、私は部活内で嫌がらせをされるようになった。
靴を隠されたり、部活の後片付けを全部私に押し付けたりと…
まあ数え出したらキリがない。
そうして、私はこの嫌がらせに耐えられなくなり、部活を辞めた。
部活を辞めた後も、日常生活で嫌がらせを受けたりはしたが、もう、途中から受けても何も感じなくなった。
そういう状況が、先輩が卒業するまで続いた。
それ以降、私は恋愛をするのがすごく怖かった。
また騙されるのではないか?
嫌がらせを受けるのではないか?
と、頭の中で常に思ってしまう。
私は、もっと男の子と仲良くしたかったけど、どうしても、どうしても過去のことが忘れられなかった。
だから…私は凪音くんと、もっと仲良くしたくてもできなかった。
凪音くんは、こんなことをしないと思う。
だけど…
「ねえ、みもりん?過去を振り返るのは悪くないことだと思うよ。過去に縛られて行動ができないこともわかる。だけど、どこかで過去を乗り越えないと、一生このままだよ?」
………
私は、どうしたら過去を乗り越えられるのだろうか?
「いま、みもりん、どうしたら過去を乗り越えられるのだろうって思ったよね?」
「え……」
「うちは、もう答えが出てると思うよ。」
答えが出てる?
「それは、凪音くんのことを信じることだと思うよ。」
凪音くんを信じる?
………
「ねえ、一回、凪音くんのことを信じてみない?」
……
凪音くんと仲良くしたい。
信じたい。
信じてみたい。
「もう一回言うけど、うちは、凪音くんが裏切るような人じゃないと思うよ。」
確かに。
凪音くんは裏切るような人じゃない。
いつも真っ直ぐで、でも臆病で
それでもそこに、優しさがあって。
そんな人が裏切るとは思わない。
「一緒に、凪音くんを信じてみよ?」
「うん…」
私は凪音くんを信じることにした。
「みもりん、うちはね、みんなと、仲良くしてるみもりんが好きだよ。だって、そのおかげで、うちは救われたんだもん!」
「由花が私に救われた?」
「うん!みもりんは気づいていないかもしれないけど、私はみもりんに何回も救われてるよ!」
「……ありがとう…」
「お礼を言わなきゃいけないのは、こっちの方だよ!みもりん、ありがとう!」
私は、
人と仲良くするのが怖かった
だけど…
人を信じて、仲良くしてみようと思った。
「あ、由花、お家にお邪魔しちゃったけどよかったの?」
「うん!今日、お母さんもお父さんも仕事でいないから。」
「そっか。あ!もうこんな時間!」
「そうだね。」
「私、家に帰ってみようと思う。」
「うん!それがいいよ。」
「由花、ありがとう。」
「みもりんが元気になれたら、それで嬉しいよ!あ、途中まで送ってくね。」
「ありがとう。」
私は、由花と一緒にさっきの公園まで歩いた。
さっきまで降っていた雨は、もうあがっていた。
歩いている間に、私は由花と色々な話をした。
凪音くんと幼馴染だったこと、凪音くんと新幹線でおしゃべりをしたこと
いっぱい話した。
そして、公園に着いた。
「由花、ありがとう。大切なことを教えてくれて。」
「みもりんが悩んでたんだから、助けるのは当然だよ!」
「ありがとう。じゃあ、また明日、学校でね!」
「うん!」
私は帰路につこうとした。
「みもりん!」
後ろで声がかかった。
「どうしたの、由k…!」
っ…!
その時、確かに触れた。
お互いの…
「恭平には内緒だぞ♪」
彼女はいたずらにそう言い、家へと帰っていった。
由花….
ありがとう。
私は心の中でもう一度、お礼を言った。