凪音編:10話 三森さん!?
さて、病室でゴロゴロし、スイカを食べ、寝ていたら、いつのまにか月曜日になっていた。
今、僕は診察室で最後の診察を受けている。
「うん。異常ないね。これなら今日、無事退院できますね。」
「良かった。ありがとうございます。」
「では、今日の14時に親御さんが迎えに来られるようなので、それまでに準備をしておいてください。これ、運ばれた時に来ていた制服です。お返しします。」
「先生!何から何までありがとうございます。」
「どういたしまして。次は熱中症にならないように気をつけてください。あと、クラスメイトの子にお礼を言っておくように。」
「はい!ありがとうございます。」
僕は病室に戻り、昼飯とスイカを食べた。
今日で、この味の薄い病院食と、大山が持ってきたスイカを食べるのが最後かぁ…
なんだか名残惜しい気がする。
さて、飯も食べ終わって13時だったので僕は着替えた。
うーん。やり残したことはないな。
まあ病院でやり残すことなんて、そうそうないだろう…
あれから40分が経った。
「凪音さん!お母さまのお迎えが見えました!」
「そうですか。今、行きます。」
僕は看護師さんに連れられ玄関まで向かった。
玄関についた時、急に後ろから声をかけられた。
「凪音くん♪」
「うわ!って、三森さん!?なんで…」
「えへへ、凪音くんの、パパとママと一緒に来ちゃった!」
は?なんで…?
「凪音!沙月ちゃんよ!」
お母さんが言った。
「いや、それはわかるけど…なんで?てか三森さん、学校は?」
「あんた、何言ってんの?今日、祝日よ?」
「ああ…いや!そんなことより、なんで三森さんがいるの?」
「ああ、それはね…あんた覚えてない?むかーしのこと。」
「え…?」
「沙月ちゃんはね、あんたの幼馴染なの。」
は?母さんは何を言ってるんだ?え、これは夢か?
「は?幼馴染?」
「そう。まあ、あんたが幼稚園の時、引っ越しちゃったんだけどね。それで、この間、沙月ちゃんのお母さんから電話があってね。凪音くん、大丈夫?って。」
「は、はあ。」
「で、お母さんもびっくりして、沙月ちゃんのお母さんいわく、沙月ちゃんが、中学に上がると同時にこっちに戻ってきたみたい。」
「それでね、私、凪音くんが心配で、ついてきちゃった!」
いや、え?マジで?は?
「三森さんは、僕が幼馴染って覚えてたの?」
「ううん、この間、ママから言われるまでは、気づかなかった。」
「え…」
「てか、凪音くん。昔みたいに、さっちゃんって呼んでよ〜」
三森さんがからかってきた。
「さっ…!?」
いや、待て。さっちゃんっていう奴がいたのは覚えてるぞ!でも、今と、まるで、いや見た目とか色々と違う。
「てか、あんた。沙月ちゃんにお礼言いなさいよ。」
「あ、三森さん。その、色々と助けてくれてありがとう。」
「ふふ、どういたしまして!それと、三森さんって呼ばなくていいよ。」
「え?」
「学校の時は沙月さん、2人でいる時は、さっちゃんって呼んでくれると嬉しいかな!」
三森さん、いや、沙月さんは照れくさそうに言った。
「わ、わかった。さ、さっちゃん…」
「ふふっ」
「母さん、何笑ってるんだよ!」
「いやあ、昔を思い出してね。」
「っ……!」
僕は、今、どんな顔をしているのだろう?
わからない。
想像したくもないな…
でも、今、確かに言えることがある。
幸せだ。
それに尽きる。
「さ!凪音くん!帰ろっか!クラスに!」
「あ、あぁ!」
そうして、もう一度始まった。
僕と沙月さんの中学最後の学校生活が!