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賞味期限1年の恋  作者: AM
第2章 揺れる前期神戸修学旅行
18/22

凪音編:9話 目覚め

目が覚めた。

僕は辺りを見渡した。

そして20秒で理解した。

あ、病院か…

どこの病院かは知らない。いや、おそらく神戸市内の病院だろう。

修学旅行中に倒れたのは覚えている。

さて、目が覚めたのはいいが、どうするべきなのだろうか。

とりあえず、横にあるナースコールでも押すか。

ピッ…ピッ…ピッ…

30秒もかかってないだろう。看護師さんと病院の先生が慌てて来た。

「凪音さん!気がつきましたか?」

「え…えぇ。」

「良かった!あなた、丸2日意識がなかったんですよ!」

「あ…そうですか…」

「とりあえず、後遺症が残ってないか検査をしましょう。」

「ちょっと待ってください。あの…倒れたのは覚えているんですけど、まず何が原因で倒れたんですか?」

「熱中症です。」

「え…」

「詳しいことは後で説明します。検査をしましょう。立てますか?」

「はい。」


そうして僕は検査を受けた。


「凪音さん。検査の結果が出ました。」

「どうでした?」

「それがですね。後遺症がなかったんですよ。2日間も昏睡状態だったわけですから、後遺症はあると思っていたんですが。」

「良かったです。」

「これも、あなたのクラスメイトさんが、適切な冷却処置をしてくれたおかげですね。」

「え?」

「背の低い、可愛らしい女の子が必死に冷却処置をしていたと、救急隊員から聞いています。」


三森さんだ…


「とりあえず、今日と明日はこの病院で様子を見ます。そうそう、今日、あなたの親御さんと担任の先生が面会に来るとの連絡が入りました。」

「そうですか…」

「それと、なにか熱中症になりそうな、心当たりはありましたか?」

「えっと…」

あ、思い出した。あの日、僕は、朝ごはんを食べていない。しかも、修学旅行の移動中ほぼ寝ていたし、南京町では食べるのに夢中だったから、朝から何も飲んでいなかった。

あと…これは恥ずかしい。

僕は制服の中にシャツを着ていた。そのシャツはおしゃれで、かっこいいのだが、生地が厚い。修学旅行は少しでもおしゃれしたかった。だけど、こうなるとはな…

心当たりを全て先生に言った。

「それは…熱中症になってもおかしくありませんね。」

「今後は気をつけます。」

「まあ、とにかく、このままいけば、明後日の月曜日には退院できると思います。他に聞いておきたいことはありますか?」

「えと…ここって、神戸市内の病院であってますよね?」

「はい。」

なのに、大山は来てくれるのか…

大山のことを見直したかもしれない。


僕は診察室を出て病室に向かった。


三森さんには感謝しても、しきれないな…

でも、なんで三森さんは、そんな適切な冷却処置の仕方を知っていたのだろうか?

そう思い、病室に入ろうとすると、ちょうど大山と鉢合わせた。

「あ、大山先生…」

「凪音!良かった…良かった…」

大山先生は半泣きだった。

僕と大山は病室に入った。そこで大山に一連の出来事を聞いた。

「伊崎から電話がかかってきてな。凪音が倒れたって。その時、俺は車で15分くらい離れた動物園にいた。道も混んでいて、すぐにはそっちに行けない状況だった。」

「はぁ…」

「それでな。伊崎に近くの大人に助けてもらうように頼んだ。このままじゃやばいと正直、俺は思った。だけど三森のおかげで、お前は今こうしている。」

「ちょっと待ってください。なんで、三森さんは適切な冷却処置の仕方を知っていたんですか?」

「ああ…それはな、三森のお母さん、看護師なんだ。それで、人が倒れた時の対処法とか、熱中症の対処法とか教わっていたらしい。」

「看護師…」

「まあ、とにかく三森にあったら、ちゃんと礼を言っとけよ。」

「あの、先生。」

「なんだ?」

「僕の見舞いのために、わざわざ来てくださったんですよね?ありがとうございます。」

「気にするな。これも担任として当然のことだ。いつ退院できるか、わかったか?」

「明後日の月曜日らしいです。」

「そうか、よかった。あと、これ。」

「?」

「俺からの個人的なプレゼントだ。」

大山がそういい、渡して来たものは、小玉スイカだった。

「えと…なぜ、スイカ?」

「? お前、自己紹介でスイカが好きって、言ってたじゃないか。」

「あ、ありがとうございます。」

そういえば、そんなことも言ったな。

「じゃあ、俺はこれで帰るわ。」

「先生!」

「なんだ?」

「ありがとうございます。」

「気にすんな。」

大山はそういい、病室を後にした。


その後、母さんが面会に来た。

「凪音!良かった!」

母さんも半泣きだった。

「え、父さんは?」

「お父さん、昨日から出張よ。海外に。」

「あ、そうだっけ?」

「でも、明日には帰ってくるらしいわ。」

「そうか。」

「あと、これ。」

僕は母さんから、スマホと漫画を受け取った。

「ありがとう。」

「それで、体調とかはどうなの?」

「え、悪くはないけど。」

「なら良かったわ。あんた、だから朝ごはん食べなさいって言ったじゃない。」

「ごめん。」

「まあ、いいわ。無事だったし。明後日、また迎えにいくわね。」

「ああ、ありがとう。」

お母さんは病室を後にした。

うーん、初めて入院したから慣れないな…

そう思っていたら、看護師さんが切ってくれたスイカを持ってきた。

「どうぞ。残りの3分の2は明日と明後日のお昼、お出ししますね。」

「ありがとうございます。」

僕は今年初めてのスイカを食べながら思ったことがある。

スイカ、うまいな。

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